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不動産業

2014.06.01 (Sun)
*長くなりましたがナンセンス話なんで読みやすいと思います。

中規模の不動産屋に就職しまして、今2年目です。仕事はまあ楽しいですよ。
ずっと会社の中で事務をしてるわけじゃなく、適度に動き回りますし。
外出ついでに、ちょっと神社の境内で休んだりなんてこともできるんです。
で、初年度にあった研修のことを話します。
研修といっても、同じ業種の新人が大量にどっかに集められて、
合宿形式でやるようなのじゃなく、ほとんどが社内でのものでした。
電話の応対から始まって、法律の本を与えられレポートを書かされたり、
1日中先輩について歩いたり、そんなもんでしたね。

でね、事故物件の研修ってのもあったんですよ。
ほら、わけあり物件とかいわくつき物件とかも言ったりするでしょ。
住人の方が事故や事件で亡くなった家や部屋、
自然死の場合でも長期間発見されなかった部屋とか。
そういうやつです。うちの会社が管理してるものの中にも何件かあって、
先輩の山崎さんについてノウハウを教わりながら、回って歩いたんですよ。
え、どんなノウハウかって?それはもちろん、霊への対処のしかたですよ。

お前それ信じたのかって?
うーん正直言えば最初は半信半疑・・・いや疑のほうが7割くらいかな。
だって、霊体験なんて生まれてこのかた一度もしたことがありませんでしたからね。
社用車のティアナで最初に行ったのが、会社から15分ばかりのアパートでした。
築12年ということでしたが、きれいなもんでしたよ。
山崎さんが、キーを持って先に立ち、俺がトランクを持って後をついてったんです。
鉄製の階段を上った2階の215号室。

「ここは6畳一間、キッチン・バス・トイレつき。前の住人は70代男性。
 キッチンの天袋の戸に器用に縄をかけて首吊り。発見は4日後で特別清掃は必要なかった」
 8か月前の話だ」山崎さんは事務的な口調でこう言うと、
ドアの前に立って開錠し、おもむろに声を出した。
「ごめんくださーい」それから俺のほうをふり向いて、
「中に誰もいないのをわかってて、声かけるって変だと思うだろ。だが、かならずやれよ。
 俺も前にこれ忘れて、えらい目にあったことがある」
「えらい目ってどんなことですか?」と聞いたけど教えてくれませんでした。

「ノックするのはあんまり意味がないらしい。『ごめんください』『入ります』とかな、
 中の霊に人が来たことを知らせて、隠れる準備期間を与えるのが重要なんだ」
「霊って隠れるもんなんですか?」
「まあな、あんまり関係のない人に姿を見られたくはないらしい。
 誰彼でもかまわずおどかすってわけじゃあない」
中に入ってみましたが、
家具類は一切なくこざっぱりとかたづいて嫌な臭いもありませんでした。
「ドアはな、完全に閉めずに少し開けておけよ。それから・・・」
山崎さんは押し入れに歩み寄って「開けますよ」と声をかけて戸を一気に引きました。
中は空っぽでした。

「な、こういうとこを開けるときも必ず声かけろよ。
 霊は出ていったわけじゃなく隠れただけだから・・・ここは、まあこんなとこだな」
自分は、首を吊ったというキッチンの天袋のあたりを見ながら疑問を口にしました。
「ここって、2階の左から4番目で、ほんとは214号なのを、
 4の数字を嫌って215にしてあるんですよね。
 そういうとこって不幸が起きやすいとかあるんですか?」
山崎さんは軽く笑って「んなことはないよ。別に統計があるわけじゃないが、
 数字は数字、それに思いがこもるなんてことはない。迷信だな」と答えてくれました。

次に回ったのは分譲マンションの8階。
1階に警備員が常駐していて、かなり高級そうなところでした。
「ここはな、前よりは少しやっかいだ。亡くなった住人は20代の銀座ホステス。
 風呂で手首を切ったものの死にきれず、ナイフを胸にあてたままフロアに倒れ込んだんだ。
 風呂場から出ちまったから特別清掃ありになった。改築はしていない。
 うちで遺族から買い戻して、寝かせて2年目」
山崎さんはドアの前に立つと「入りますよ」と声をかけてから、
俺の持っていたトランクを開け、中から細長い立派な皮のケースを出した。
「これなんですか?」

「オーケストラとかの指揮棒のケースを流用してある。まあ見とけ」
それを開けて取り出したのは、40cmほどの棒。
見るとぐるぐる白い紙が巻きつけてありました。
「これはな、榊の枝・・・よく御払いとかに使うやつだ。
 それに八幡神の御札がたくさん貼りつけてある」
そういえば白い棒の表面に毛筆の字が浮き出ています。
「八幡様のが効果があるんですか?」
「よくは知らんが、本来はその霊の産土神社のが一番いいんだろうな。けど、そこまで調べてない」
山崎さんは開錠し、ドアを細目に開けると棒の先をそっと突っ込んでかき回すような仕草をしました。

「こんなもんだ。使い方はわかったろ」
 山崎さんはハリーポッターみたいに棒を体の前に構えてどんどん入ってきました。
ここも家具はなく、整然とした様子でした。
0感の自分には怪しい気配とかまったくわかりませんでしたよ。
「ここは値下げして売るんですか?」
「そうなるだろうな。てか、もう少し寝かせないと売ることはできんよ。
 今は転売を繰り返したって儲かるわけでもなし」
こうして立派な部屋の中をすべて見て回ったんですが、変なことはありませんでしたね。
ラップ音というのさえなかったんです。
霊を見れるかと期待してた自分にはちょっとがっかりの部分もありました。

「次で今日は終わりだな。一番厄介なんで最後に残してある」山崎さんが言いました。
車を路上駐車して向かったのは、築30年という一軒家。小高い住宅地の丘にありました。
古びたガラス戸の玄関の前に立って、山崎さんが、
「殺人事件なんだよな、ここ。60過ぎの婆さんが殺されて、
 犯人はすぐにつかまったけど、婆さんの甥っ子だった。
 むろん事件のことは地域中に知れ渡ってるから、どうにもならん。
 古いし、社長は解体して更地にすることを考えてるみたいだ」こう言って、
玄関前で声をかけ、お守りの棒を差し込んだところまでは前と同じでした。

それからが少し違ってました。
トランクから薄いパネルのようなのを取り出したんです。
「それは?」
「ほら」山崎さんが見せてくれたのは・・・何だと思いますか?
ここであった殺人事件の犯人逮捕の記事が載ってる新聞をパネルにしたもんなんです。
「殺されたばあさんはもちろん怨んで凝り固まってるからな。
 これ見せれば少しは怒りが和らぐ。本当は裁判の判決文のほうがいいかもしれんが、
 まだ確定してないんでね」

山崎さんが棒とパネルを両手に持って、入っていくと、
前の2箇所と違ってさすがにかび臭く、薄暗かったです。
「電気、水道とか全部止めてあるから、維持費はほとんどかかってない。
 空き家ってことで、警官の立ち寄りも頼んであるし」
家の中は襖や障子はすべて開け放してありました。
「ここだよ、この8畳間で事件があったんだ」山崎さんに続いて廊下から入っていくと、
襖が開いてても空気がどんよりと重い感じがしました。家具類はほとんど残ってましたね。
「どうだ、何か感じるか?」

「んー空気が重いです」「そうだろうな、何か見えるか?」
「いえ、特には・・・・あっ!!」
台所のほうから薄い影がまろぶように入ってきました。かっぽう着のばあさんに見えました。
「見えたか?」「あ、あ、ばあさんです」
ばあさんは居間の隅までくると、壁に向かってうずくまり、両手で頭をおさえましたが、
その後頭部からバッと霧のようなものがあがり、そのままうつ伏せに倒れて消えました。
「ばあさんがどうした?」「今、そこで倒れて消えました。その畳の新しいとこの隅で・・・」
「そうか。正解だ。そこが亡くなった現場なんだよ。・・・まだ繰り返してるんだなあ」

「・・・自分の死んだ様子をですか」
「うん。どうやらこの家から出ていけない霊らしい。
 そんなに怨みがあるなら、出ていって犯人に復讐すりゃいいのにって思うが、そうもいかんようだ」
「・・・これ、お祓いとかは効かないんですか」
「そりゃ効くし、能力者にも知り合いはいるけど、礼金は百万レベルだよ。
 どうせ更地にするんだし、必要ないって社長の判断さ」
「じゃあこのばあさん、成仏しないんですか?」
「更地にすれば、たいがいは消えちまって出ることはないよ」

「・・・はあ、そんなもんですか」「どうだ、研修は。霊が見れて満足したか」
「まあ・・・そうですね・・・」
「実を言うとな、俺は本当に0感で何にも見えないんだ」
「ええ! でも霊障でえらい目に遭ったって・・・」「ありゃ嘘だ」
「えー、じゃあさっきのばあさんも見えなかったんですか」
「そうだ。だから本来はお祓い棒とかパネルも俺には必要ない。何も感じないんだからな。
 お前は・・・0感と言ってたが、あれが見えるならたいしたものらしいぜ。
 ちょうど前の担当者が病休してるんで、変わりはお前に決まっただろうな、これで」
「何の担当ですか?」「そりゃ物件の霊障の調査に決まってるだろ」

・・・こうして、今はその手の仕事をしてるんです。
え?体調はどうかって。いや、まったく問題ないですよ。
健診でも何もひっかったとこはありませんし、健康そのものです。
え、え、私の前の担当者が3人続けて病死してるって・・・
本当ですか? どうして知ってるんです? うちの会社と20年前から取引してる!!
え、え、え、いやあ、すぐ前の担当者が入院してるのは知ってましたが、
まさかそんな。


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コメント
 これから前任者たちと以下同文になるか、怪物件ハンターとして名を上げるか、話し手氏の霊感の見せ所ですねw
 そういえば、「聞き手」は「誰」なんでしょうね。舞台装置的な話になってもあれですし、むしろ決まっていない方が面白いとは思いますが、今まで気にしたことがなかったのは自分でも不思議です。
| 2014.06.04 21:07 | 編集
コメントありがとうございます
話の聞き手はネットの掲示板に書いたやつは掲示板の住人を意識して書いてましたが
このブログで書いた話は
どこかに霊に関する知識に詳しい人が集まった場所があって
そこにいろんな人が来て話をしていくみたいなイメージです
bigbossman | 2014.06.05 20:54 | 編集
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