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鬼講

2014.06.03 (Tue)
昨年の3月のことです。
私は会計士でして、業種は言えませんが、ある会社の嘱託をやってたんです。
その会社の隣県にある支社が急に税務監査を受けることになりまして、
対応策を指導しに行ったんですよ。
そこは車で3時間ほどの場所で、早朝に部下の運転する車で出かけました。
着いてすぐ駅前のビジネスホテルにチェックインし、
郊外にある支社に着いたときには10時をまわっていました。
資材の整理やら諸帳簿の点検などをしているうちにあっという間に時間は過ぎ、
午後の8時を過ぎてようやっと目途が見えてきました。

残りは翌日に回すことにして、市街のほうに車で戻ることにしました。
ところが、来るときにはしっかり働いていたナビの調子が悪くなり、
なんだか同じような山裾の道をうろうろするばかりになってしまったんです。
「おかしいですね。来たときはこんなとこ通んなかったですよね」
「ナビ切っちゃったらどうだ。下にバイパスが見えるだろ。
 その向こうの明るいほうが市街だろうから、そっちに進んでいけば大丈夫じゃないか」
「そうですね」
Y字路になってる広いほうの道路に入っていったんですが、
JAの大きな倉庫を過ぎると、急に街灯がまばらになり道幅がせまくなってきました。

「あれ、これ違ったかもしれませんね」
「方向は合ってると思うんだがなあ。どっかでUターンしたほうがいいかもな」
9時近くになろうとしていましたが、人通りどころか車通りもありませんでした。
「支社にはまだ人が残ってるだろうから、電話してみるか」
「あ、ほらあそこ。火が見えますよ。なんかお祭りみたいなのやってるんじゃないかな。
 寄って聞いてみましょう」
たしかに、道の先のほうに小学校か中学校に見える建物があり、
そのグラウンドらしき場所に大きな火が焚かれていました。

グラウンドに入っていく道の脇に車を停め、二人でそちらに向かっていくと、
30人ほどの人影がシルエットになって火のまわりに見えました。
大人も子どももいるようですが、
家族ごとに大きな焚火を半周してただ立っているだけでした。
「なんか静かですね。お祭りというより儀式っぽい感じがします」
「このあたりの年中行事みたいなもんかなあ」
近づいていくと、どの人も普段着で、特別な様子はありません。
ただ家族の大人の中に、手に藁包を持っている人がいるのに気がつきました。
「これ、何やってるんですか」
一番近くにいた家族の中の老人の男性に声をかけました。

「・・・おや、あんたらは何かね」
「いや、この奥の◯◯社に来たものなんですが、駅方面に出ようとして道に迷ってしまって」
「ああ、三叉路で広いほうに入ってきたんだろ。もう一本のほうが市街に通じる道なんだが、
 標識もないからな」
「ええ、そうなんです。で、これは?」
「鬼講って言うもんだ。このあたりで信心されてる神さんの縁日なんだよ」
「興味深いですね。ちょっと見させてもらってもいいですか」
「・・・ほんとは集落のもんだけでやるんだが、別に不都合はないな。
 あんたらだって骨は持ってるだろうし」
「骨って?」「ああいや、気にしなくともいいよ」

こんなやりとりをしたんです。
そうしているうちに校舎のほうから何人かがリヤカーほどの山車を曳いてきました。
それには大きめのタンスくらいの木箱がのっていて、
中に何やら像のようなものが入っていました。
それが焚火の向こうに据えられると、火の明かりで箱の中が見えました。
2mほどの座った形の鬼の像でした。
ただし木像などではありません。太い動物の骨で鬼の形に組み上げられていたんです。
顔の部分は牛の頭蓋骨でも扁平に削って使ってあるんでしょうか。
白々とした10cmばかりの2本の角あるのがわかりました。
白い着物を着た40台位の人がその前に歩み出て、祝詞のようなのを唱え始めました。

鬼の像の前に家族4・5人ずつで歩み寄り、
家長らしい人が藁包から何かを出して顔の前に捧げ持ちました。
牛の骨じゃないかと思いました。人間のよりもずっと太かったですから。
家族は頭を垂れて祝詞を聞いている間に、家長がうやうやしい動作で骨を火の中に投げ入れ、
家族は一礼して、その場を下がりました。
そして次の家族・・・ただこれだけを繰り返すようです。
小声で部下に「そろそろ戻ろう」と言いました。「ええ」
次の家族には生まれたての赤ちゃんがいて、家長らしい老人が骨を火に投げ入れたとき、
若い父親が赤ちゃんを両手で高々と掲げました。

・・・これは見間違いだとそのときは思ったんですが、
まだ髪も満足に生えそろっていない赤ちゃんの頭が火に照らさたとき、
その額の両脇に2本の小さな角があるように思えたんです。
そっと音を立てないようにして、部下と車まで戻りました。
Y字路まで戻ってからもう一本の道を進むと、ほどなくして市街に出ました。
まだ10時前でしたので、軽く1時間ばかり居酒屋に入って生ビールを飲み、
ホテルに戻って寝ました。
翌日、また支社へと赴き、監査対策を万全にしてその日のうちに戻ったんです。
後日の監査のときには私も立ち会いましたが、特に問題もなくすんなり通りました。

支社にいるときに、この鬼講について聞いてみたんですが、
その市に住んでいる人も「そういう行事は知らない」ということだったんです。
それどころか「Y字路になった道はたしかにあるが、
そこはJA倉庫を過ぎたあたりで行き止まりになっていて、
奥には集落もないし、学校の建物もない」って言うんですよ。
ただ、年配の人が一人だけ、
「明治の頃にはそのあたりに学校があったという話は聞いたことがある」と言ってました。
まあこれだけの話なんです。

・・・なんですが、今年に入って、
あのとき一緒にいた部下が駅の階段から落ちて大腿骨を骨折しました。
かなりの重症で、手術をして今も入院しています。
・・・ここまでなら偶然ということで済まされるでしょうが、
3ヶ月前、私に二人目の子どもが生まれまして。
男の子でしたが・・・事前の検査では何の異常もなかったはずなのに、
頭の生え際の右側にだけ・・・1cmくらいの角のようなのが生えていたんです。
医師の話では、たいしたものではなく、
皮質過形成だから手術で簡単に取ることができるということでした。
ただ・・・どうしても、
あのグラウンドで見た不思議な儀式と関係がある気がしてならないんですよ。

『鬼の骨』




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