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木妊

2014.06.12 (Thu)
今月のことですが、山菜採りに行きました。ヤマウドやフキなんかが目あてです。
けっして高い山じゃなく、標高にしたら100mもないところですが、
けっこう奥まで入ります。ああ、山主にはもちろん許可を得てありますよ。
・・・ここいらでは毎年この時期と、
秋のキノコ採りのシーズンは山での行方不明者が多いんです。
大々的な捜索をしても、半数以上は亡くなってしまいますね。
だから私も、食料や熊よけ、その他の装備は厳重にして出かけるようにしています。

その日も朝早くから山に入って、山菜採りをしていました。
毎年、同じ場所に入るので道がわからなくなるということはないつもりです。
山の中には目印になる木や岩もありますしね。
昼近くになって、ザックがいっぱいになったのでもう下りようと思いましたが、
ふと、近くにあるクスノキに挨拶していこうという気になりました。
それはここから数十mほど上ったところにある、
大人ふた抱え以上もある大木なんです。

上っていくと草に踏み跡があるような気がしました。
10分ほどでクスノキが見えてきましたが、何か様子が変でした。
近くまでいってあっと驚きました。
道に向いたほうの木の皮が横1m、縦2mばかりに大きく剥がされていたんです。
動物の仕業ではないことは一目でわかりましたよ。
剥がした跡が直線になっていましたし、
何より剥がしたところに彫刻が施されてあったからです。
等身大の裸の女性像が、木からか体を手前に斜めに突き出すようにして彫られていました。

生木ですから、ここまで彫るのはかなりの時間がかかるはずです。
おそらく1日では不可能でしょう。
しかも彫り跡は新しく、あたりに木の香が立ちこめていたんです。
近くに寄ってみると全体は荒々しい感じで、ナタなどで彫ったようですが、
顔とお腹の部分だけはひじょうに丁寧に、
表面がつるつるになるまで仕上げられていたんです。
女性像はお腹の部分が丸く大きく張り出していて、妊婦なのだと思いました。
脚の太もものあたりまで彫って、その下は木肌に溶けこむように消えていましたね。

それから女性像の顔なんですが、見覚えがある気がしました。
近くの市にある総合病院の消化器科の女医さんによく似ていると思ったんです。
私は胃弱の持病があり、昨年も一ヶ月おきくらいに市の病院を訪れ、
その女医さんの診察を受けていたんです。
ふせた顔を覗き込むようにしてしげしげと観察しましたが、
やはりその人としか考えられない。それくらいよく特徴がとらえられていました。
ただ、その女医さんは30代前半くらいでしたけど、
妊娠しているという話は聞いたことはありませんでした。そもそも独身だったと思います。

・・・さて、どうしようか思案しました。
携帯のきく範囲ですので、警察に連絡しようかとも思ったんですが、
考えてみれば大犯罪というわけではないし、警察がくれば大事になってしまうでしょう。
そこで山主と、近くにある森林管理署に一報だけしようと考えたんです。
そうすれば、警察を呼ぶかどうかはその人たちが決めるだろうと。
幸い連絡先は携帯に入っていましたので、下りる道すがらかけてみました。
山主はあいにく不在でしたが、管理署には連絡がつき、
すぐに署員がそちらに向かうから、待っていて道案内をしてほしいと言われました。

ああ、やっぱり時間がつぶされてしまうか、あの木を見に行かなきゃよかったと思いました。
下の道沿いの倒木に腰かけて待っていましたら、
署員の方と、顔を知っている作業員1人が車でやってきました。
「ご苦労さまです。国有林でもないのにすみませんね」
「いやこちらこそ、通報感謝します」
こういうやりとりをして、また木のあるところに戻ったんですが、
遠目でもさっきと様子が違っていることがわかりました・・・
よく見えるところまできて、さきほどよりいっそう驚きました。

女性像の腹のところに、生後まもない仔猿が張りつけられていたんです。
四肢を伸ばした先が、すべて太い釘で木に打ち込まれていました。
仔猿は頸が折れているように見えましたが、それ以外の外傷は見あたりませんでした。
それと奇妙なことに、先ほど見た見事に丸く突き出た腹部が、平らに削られていたんです。
それだけではなく、女性の顔の部分も人相がわからなくなるところまでそがれていました。
・・・奇妙といえば、もちろん全部が奇妙な出来事なんですが、
それにしても、先ほど最初に木を見てから、
ふたたびここに来るまで1時間半くらいしかたっていません。
このように腹や顔を削って猿の子を張りつけることなんてできるものなんでしょうか。
しかも下の地面には削りカス一つ落ちていなかったんです。

それともう一つ、自分は道なりに下りていきましたし、その道の入口で待っていました。
もちろん山ですので、藪こぎをすればどこからでも入ってこれるし、
下りることもできるわけですが・・・それはたいへんな難儀です。
見つかるかもしれない危険を犯して、
そこまでするのはどんな意味があるんだろうかと思いました。
管理署の方も作業員も、木の様子を見て驚き呆れていましたが、
山主と相談して今後の方針を決めると言っていましたね。まあこれだけの話です。
ああ、市の病院の女医さんですか・・・気になりますでしょう、それは。

私ももちろん気になっていまして、
これまでのところ、亡くなったとかその他の悪い噂は聞こえてきてないんです。
で、来週に確かめに病院に行ってこようと思って、今日予約を入れたんです。
その病院で今も勤務されているのは間違いないようでしたよ。
何かわかりましたら、またこの場でご報告したいと思います。


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コメント
 個人的に、この女性像の描写からは邪な情念のようなものを感じますね。いやまあ、子猿を殺して打ち付ける儀式(?)からして真っ当な「作品」でないのは明らかなんですが…女医さんの無事を祈りましょう。
| 2014.06.14 02:17 | 編集
コメントありがとうございます。
この話は典型的な「~を見た・体験した」系の話です
おそらく深い事情があるんでしょうが、自分にもよくわかりません
bigbossman | 2014.06.14 23:40 | 編集
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