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臨時の仕事

2014.06.25 (Wed)
みなさんどうも。うまく話せるかちょっと自信ないスが、まあ聞いてやってください。
えーちょうど10年前のことスね。ここ10年ずっとね東南アジアを回ってて、
つい1週間前に帰ってきたばっかなんス。
たった10年でも、浦島太郎になったような感じっス。日本語変じゃないスか?
当時パチプロをやってて・・・地グマってやつです。

ある一店を拠点にして食いつないでいくシノギで、
開店ねらいなんかに比べると効率悪いんスが、自分の性には合ってたんす。
ところがね、ちょっと下手打って根城を出禁になっちまった。
しょうがないんで他店に回ったんスが、これがドツボにはまって負けるわ負けるわ・・・
まあ、今考えれば自分の腕の問題なんスけど。

少ない残り金で居酒屋で飲んでたら顔を知ってる地回りがきてね、
なぜか「景気悪そうなツラしてるから奢ってやる」って、
高級クラブに連れてかれたんス。
まあね、ゴミカスパチプロにただ酒飲ませるわけはねえんで、
何か魂胆があるんだろうと察してはいたんスよ。

そしたら案の定「ヤバくも危険でもねえ1日仕事で15万、受けるか?」って聞かれて、
「んなわけねえだろ」とは思ったんスよ、当然。
簡単な仕事なら組の若いもんはいくらでもいるんだし、俺に特殊技能があるわけでなし。
報酬も法外で、キナ臭いったらありゃしねえ。
でもね、受けちゃったんスねえ。

そんなに非道いことにならないだろうとも思ってたんス。
というのは、俺の叔父貴が・・・これは本物の親戚なんスが、
そいつらとは別の組でけっこうな顔だったんス。そいつらもそれは知ってるから、
俺がパクられるとか、ケガするようなことはまずないんだろうってね。
もしかしたら叔父貴が手を廻して、俺に稼ぎ口を提供してくれてるんじゃねえかって、
そんなことまで考えたんス。

で、仕事ってのは、場所は言えねえけどある地方空港に客2人を迎えに行って、
そいつらの言うとおり半日街を案内して、それからホテルに送り届ける・・・これだけ。
「俺は車持ってねえ」って言ったら、そいつらのミニバンを貸してくれるって。
ナビもついてるそうだから確かに難しい話じゃないんス。
あと、その2人は美術品を持ってるから扱いに気をつけろって言われて、
それで合点がいったんスよ。実はこう見えても、美術の専門学校行ってたんス。

で、当日11時に空港前の道路に黒のアルファードを横付けして待ってたんス。
ロビーまで迎えにいく必要はないって言われてたから。
・・・約束の時間を過ぎても誰も来ないんで、不安になって車外に出てたんス。
そしたら近くの出口から2人組がでてきて、一人は小柄なアジア人で、
もう一人は巨体の黒髪の外人。

どっちもビシッとスーツ着て、ボストンバッグを持ってたっス。
アジア人のほうはその他にもう一個、大き目の帆布製のバッグを肩にかけてて、
それが美術品じゃないかと思ったっス。
「◯◯さーん」アジア人のほうが俺を見て手を上げ名前を呼んだんで、
これがめざす相手だってわかったんスよ。
いや別に符牒なんか決めてないって、そんなのテレビの中だけの話っス。

アジア人のほうは30代かなあ、若ハゲで色の黒い精悍な顔をしてたっス。
外人は年齢不詳で、ずいぶん年がいってるような感じがしたけど、髪は真っ黒だし、
シワもほとんどないんス。ただ動き方とかが老人じみてて・・・
あと膚が漂白したように白いんス。
2列目の座席に乗ってもらい3列目にボストンバッグを入れると、アジア人が
「駅前に行ってください」って流暢な日本語で言ったんス。

これは道知ってるんで30分ほどかかって大通りに出ると、
信号のない角のさびれた感じのビルの前で、
「ここで停めてください。1時間後に迎えに来て」と言われたんス。
アジア人が帆布製バッグだけ持って2人は地下への階段を下りていき、
駐車できるとこじゃないんで、
俺は近くに有料パーキングを見つけてずっとそこにいたんス。
・・・1時間後に行ってみると、2人は歩道に立って待ってたスね。

急いで乗り込んでもらったんスが、そときにね、俺の気のせいかもしんないけど、
紙のように白かった外人の顔色が、なんか血色がよくなってる気がしたんス。
次は、アジア人がメモを渡してよこして「ここへ」とだけ言ったんス。
電話番号だったんでナビに入力したら、小一時間はかかる市の外れだったんス。
目的地は何かの工場みたいだったんスが、ナビは「個人宅です」としか言わなかったス。
道中、2人とも一言もしゃべらないし、もちろん俺から話しかけることもしなかったス。

で、田園地帯に入ってしばらく行くと、ナビが「目的地周辺です」と言ったのが、
やはり工場らしい高い塀の前だったんスよ。
ただ・・・廃工場って感じで薄汚れて見えたっスね。
門まで行っても何の看板もなかったし、柵とかチェーン張ってるということもなし。
なんとなく食品加工っぽいとこだとは思ったんスけどね。
2人はまた例のバッグだけ持ってそこに入っていき、俺は門の前の道で待ってたんス。
時間は2時前かなあ・・・人通りも車通りもまったくなかったっス。

1時間過ぎ、2時間過ぎ・・・今度はなかなか出てこなかったんス。
俺は9時ころ飯食ったんスが腹減ってきて・・・
よほどコンビニでも探そうかと思ったんスが、
その間に出てこられたらマズイと思って我慢したんス。
でね、2時間半すぎて2人が出てきたとき、
アジア人がさっきのバッグの他にでかい箱型の袋みたいなのを苦労して持ってたんスよ。
俺も手伝ってそれを後部座席に積んだときに、中はクーラーボックスじゃないかと思ったっス。

乗り込むとアジア人がホテルの名を言ったんで、
「ああ、これで終わりか・・・実働5時間じゃね」って思ったんスよ、「ラッキー」って。
・・・市街に向かって10分くらい走った田んぼ中で、
アジア人が何か切迫した声を出したんス。
外国の言葉で意味はわかんなかったス。俺にじゃなくつれの外人に言ってるみたいだったス。
ミラーで見ると、外人が長い体を伸ばして後ろからさっきの箱の袋を持ちだそうとしていて、
アジア人がそれを止めようとしてるみたいだったス。

俺は・・・どうしたらいかわかんないんでそのまま運転してたら、
アジア人が「止めて、止めて」と日本語で言ったんス。
俺にだと思ったんで路肩に車を寄せ、後ろを向くと、
ちょうど外人がアジア人の肩に組んだ両手を叩きつけたとこだったんス。
アジア人は悲鳴をあげてシートの間に転がったっス。
外人は大きな袋を膝の上に抱えてチャックを開け、さらに中の容器のフタも開けたんス。

そのとたんムッと生臭い臭いがしたんス。外人は手で中のものを掻き出す仕草をして・・・
生肉だと思ったっス。それをむさぼるように音立てて食いはじめたんス。
青黒い塊のような肉で、内蔵・・それも腐ってるような臭いがする・・・
アジア人がやっと起き上がってきて、俺に向かって「車から出て、連絡して」と叫んだんス。
言われたとおり車外に出ようとしたとときに、
アジア人は帆布製のバッグから油紙にくるまれた何かを取り出そうとしてるように見えたっス。

何かの・・・マスクだと思ったっス。変な顔のお面みたいなブサブサした粗い作りの。
それを・・・夢中になって肉を喰ってる外人の顔に下からかぶせて・・・
外人は少し抵抗したんスけど、すぐにぐったりして、
面をつけたままシートにもたれかかったんス。
俺が車外で立ってると、アジア人がウインドウを少し開け、
「あんた、すぐ離れて、ここ離れて電話して応援呼んで」と怒鳴ったんで、
田んぼの畦まで下りて、あらかじめ聞いていた連絡用の番号にかけたんス。

すぐに連絡がついて、出たやつに事情を説明すると、居酒屋で会った兄貴分に代わって、
緊張した声で「トマスが出たって? お前・・・車はそこに置いていいからすぐ駅に行け。
 とにかくその場を離れろ。後は俺らが処理するから」こう言って切れたんス。
・・・もちろん言われたとおりにしたっス。駅に行って電車で帰ってきたんスよ。
その後はまったく連絡なし。
で、翌日アパートにいたら叔父貴から電話が入ったんス。

叔父貴は「お前にいいと思ってやったんだが、マズイことになった。今から迎えに行く」
で・・・そのままどこかの山奥に連れてかれて軟禁状態、
あとパスポートを取らせられてアジアの某国に行かせられたんス。
その間、何がなんだかわからないし、叔父貴からも一切の説明はなし。
まさかこんな大事になるとは・・・向こうでいちおう仕事は用意されてたんス。
「15年は日本に戻らない方がいい」と言われてたんスが、
途中でバックレて別の国に出て、なんとかこうやって戻ってこれたんスよ。ね、変な話っしょ。

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