奉納相撲

2014.07.05 (Sat)

こないだね、うちが氏子になってる神社で、恒例の奉納相撲があったんだよ。
俺も世話役の一人で、早朝から土俵の整備をしたり、テント立てたりした。
境内に土俵がある、相撲に由来のある神様をお祀りした神社なんでね。
天気もよくて、いい相撲日和だったよ。
10時から昼までが小中学生の部で、昼食休憩して午後からが大人の部。
だけど大人で出場する人は少ないんで、地元の高校の相撲部に参加してもらってたんだ。
だから高校生以上ってことだな。
ここまでは特におかしなことはなかった。

でね、その大人の部に例年にない変わった参加者があったんだよ。
髪を長くして束ねてる外人で、その日に申し込んだ飛び入り参加だったんだけど、体がでかい。
190cmで、130kg以上はありそうな巨体で、しかも筋肉質。
でね、そいつの応援の外人の男女が来てて、これがまたうるさかったんだよ。
事情を知ってそうなやつに聞いてみたら、
何でも相撲部のある高校に来てる英語助手ってことだった。
それでもね、相撲は素人だからすぐ負けるだろうと思って見てたら、
これが強かったんだ。後で聞いたところ、グレコローマンレスリングで、
オリンピックのアメリカ代表になりかけたくらいだったらしい。

参加10人のトーナメントで、その外人の山は3回勝てば優勝。
1回戦は外人が教えに行ってる高校の相撲部のキャプテン。
身長はともかく体重ではそう負けてない感じだったが、頭から当たっても外人は動かない。
そのまま廻し取って、キャプテンを一気に釣り出してしまったんだ。
勝負がついた直後「ガラガッシャーン」というすごい音が社殿のほうでした。
見ると、賽銭箱の前に下げられてる銅製の鈴が落ちて、木の階段を転がってたんだよ。
・・・まあね、このときはたまたまだと思ったんだよ。
鈴のヒモも長年取りかえてなかったし。

2回戦。うちの県は2年前に国体があって、そのときの団体戦の選手だった県の職員。
この人はそんなに体は大きくなかったが、巧者という評判で優勝候補の一人。
けど、その相撲は外人のほうからも強く当たってきて、
県職員は最初に当たり負けしたままズルズル押し出されちまった。
で、足が俵から出たあたりで、
土俵の屋根の四隅につり下げられてる房が、同時にハラハラと地面に落ちたんだよ。
・・・これはさすがにおかしいと思うだろ。
房は普段はしまってて、俺らが朝ハシゴに登ってつけたんだけど、
一つならともかく、同時に全部落ちるなんて偶然じゃないよな。
観客はみな変に思ったけど、外人もその取り巻きもそんなに気にした風もなく騒いでた。

いよいよ決勝、外人の相手はやはり国体メンバーの県職員で、団体戦の大将だった人。
この人は個人成年の部でも入賞してる最大の優勝候補なんだけど、
さっきからの鈴といい、房のことといい、かなり異様な心持ちになってみんな見てたな。
・・・当たりは互角、そのままがっぷり四つになったが、
外人の力が強くて技が通用してなかった。一歩一歩という感じで下がっていって、
足が俵にかかると外人が一気に体を寄せ、それをこらえて弓なりに反ったとき・・・
外人の尻が宙に持ち上がったんだよ。いや、確かにこの目で見た。
まるで・・・透明な大きな手にひょいっとつまみ上げられたみたいだった。
外人の足が頭より高くなり、そのまま腹からぺちゃっと土俵に落ちた。場内は騒然。
行事も目を白黒させていたが、ややあって県職員に軍配を上げたよ。

・・・優勝の賞品は米一俵と、酒樽一つだが、
酒樽はその場であけて皆にふるまうのが決まり事なんだ。
蓋をとーんと打ち割って、升酒をあおいだ人がみな顔をしかめた。
中には隅の草むらにいって吐き出している人もいたな。
俺も一杯飲んでみたが・・・これがまるで、酢に麹を入れてかき回したような味で、
とても飲めたもんじゃなかった。
この酒樽は地元の造り酒屋が奉納したもんで、悪くなってるなんて考えられない。
こりゃ、神様が怒ってるんだと思ったね。
そんな中で、特に怪我もしなかった例の外人だけが、
「コレ、ウマイデスネ」と片言の日本語で言いながら、何杯も飲んでいたよ。



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