トカゲの記憶

2014.08.02 (Sat)
ここ自分の話じゃなくてもいいんですよね。
えー7歳下の妹が、小学校3年生のときの話なんです。
聞いたのはつい最近ですけど。
ちょうどハムスターなどの小動物を飼うのが流行っていた頃で、
妹のクラスでも飼ってた子がけっこういたみたいです。
でも、うちはずっと動物いっさい飼うのは禁止だったんです。
母親が「生き物は死んだときに可哀想だから飼わないで」と言ってたから。
でも、死んだら可哀想というより、生き物自体が嫌いなんじゃないかと思ってました。

僕もだから、犬猫はもちろん金魚やバッタなんかも飼ったことはないんです。
ああ、すみません。話がそれてしまいました。
で、妹もハムちゃんを飼いたくてしょうがないんだけど、
母親に言い出すと、怒られるというより、
長い時間せつせつとと説き諭されることがわかってたんで、我慢してたんですね。
だから飼っている友だちのところに行って見せてもらうようにしてたんです。
あるとき、同級生の沢地さんという子の家に行ったんだそうです。

この間妹の小学校の卒業アルバムを見せてもらったんだけど、
6年生の中にはその子の名前は見つけられませんでした。
まあ4年生からの3年間で転校したのかもしれないけど、妹の記憶もあやしいんですよ。
当時の町からは引っ越しましたが、長い間いましたのでよく覚えています。
それなのに、妹に「その子の家はどのあたりにあった?」って聞いても言えないんです。
遊びに行ってるのに。
あと両親に聞いても、沢地さんっていう妹の同級生の記憶はないって言うんです。
まあそんな程度の話ではあるんですよ。

沢地さんの家には普通の道を通って行ってないから、って妹は言います。
2回行ったことがあったはずなんだけど、
その2回とも、人の家のせまい裏庭を通ったり、スーパーの駐車場を横切ったりして、
とにかく舗装路はほとんど通らない。
土管の中をくぐったりもした、というのを聞いたときは笑ってしまいましたけどね。
で、金網の破れ目から入ったのは集合住宅の庭のようなところで、
団地じゃなかったみたいです。
あと、1回目に行ったときは何があったか覚えてないとも。

同じ作りの2階立ての家が4つくっついて並んでるような作りで、
その右から3番目と言ってました。
道順はほとんど覚えてないのに、そのあたりの記憶ははっきりしてるんです。
入口はアパートのようなドアではなく木の扉なのに、
そこに筆字で大きく「258」と書かれていたということです。
沢地さんが自分で鍵を開けたので、家の人はいないんだろうなと思ったそうです。
入るとやはり誰もいないらしく、沢地さんは先に立ってとっとと2階に上がっていく。
妹はいちおう「おじゃまします」と言ってからついていったんです。

2階はせまく2部屋しかなかったそうです。
手前は和室で、真ん中にガラスがはまった和室になっていて、
そのガラスの間から白い布をかけた台のようなものが見えたといいます。
今から考えれば、何かの祭壇みたいだったって。
で、沢地さんの部屋に入ったんだそうですが、
ベッドがあって、そのベッドと壁の間に、
大きな人形が5つくらい、はさまるようにして立ってたって言うんです。
人形は・・・材木を十字に組んでその上に綿かなんかを巻きつけ、
白い布でくるんだようなので、大人よりも大きかったそうです。

凹凸のない棒人形と妹は表現してました。
顔の部分に墨でおざなりな感じに目鼻が書かれてたそうです。
「これなに?」と興味をひかれた妹が聞いても、沢地さんはそれに答えず、
「ハムちゃん見て」と言って押し入れを開けました。
下の段には布団が入ってて、上の段に新聞紙が敷かれ、
そこに有名なお菓子の紙箱が乗ってました。
「ハムちゃんここ」沢地さんがフタを開けると、中はおがくずで一杯でした。
沢地さんが指で掘るようにすると、白いガーゼがでてきました。

ガーゼは四角く袋にしたのを胴体、頭、手足の形に白糸で縫いつけられていました。
「あれ、生きたハムスターじゃない」妹はそう思ってがっかりしたそうです。
ところがガーゼ細工は立体感があって動いたんです。
ぐっと頭を持ち上げ、するとガーゼには目の部分らしき穴が開いていて、
そっから見えたのは爬虫類・・・たぶんトカゲの目じゃないかと言ってました。
なぜそう考えたかというと、
おがくずから、ガーゼに包まれてない生のしっぽがぴゅんと持ち上がったからです。

「これ、ハムスターじゃなく、トカゲをガーゼに包んでるんだ」
そう思って気味が悪くなりました。沢地さんはそのガーゼの背中を指でなで、
「○○ちゃんも、さわってみる?」と聞きました。
断るのは悪いような気がしたけど、
怖くなってきて「いい、わたしはいい」と答えたそうです。
すると沢地さんは、がっかりしたような、意地悪そうな目で妹を見て、
「じゃあ私の弟を紹介するね」と言いました。
で、いったん部屋から出たんです。

沢地さんは隣の和室の障子を開けると、その部屋には窓がなく、
正面にさっきちらっと見えた祭壇がありました。
ロウソクや線香立てなんかがあったそうです。
その部屋の隅に、学校で言えば掃除用具ロッカーのような縦長の木箱があり、
沢地さんはそれを指さして「これが弟の部屋」と言いました。
でもそれだと、いくら子どもでも、立ってるのがせいいぱいじゃないですか。
妹が「えーうそ」と言うと、沢地さんは怖い顔をして「弟の部屋だもん」と、
ドンドンと前の板をノックしたそうです。
するとすぐに、ドカンという音が箱の下のほうで聞こえました。

「開けてもいいって」沢地さんはそう言って、取っ手を引っぱりました。
前の板にもたれかかっていたものが転げ出てきましたが、それが・・・
白い布を、さっきのハムちゃんと同じように細工したものだったそうです。
その拡大版というか、長さは1m以上と言ってました。
それは畳の上でのたくるように動き、すると頭部の布がずれて皮膚の一部が見えました。
黄土色の鱗・・・日本にいるとは思えない大きなトカゲだったそうです。
トカゲはむき出しのしっぽを振りながら、
シューという音を出して妹に近づいてきました。

妹は「私、帰る!」そう叫んで、階段を駆け下り開いていたドアから出て、
走って走って家までたどりついたんだそうです。
「なんでその話、当時言わなかったんだ」と聞いたら、
「生き物嫌いのお母さんにそんな話をするとすごく怒られそうだったから」
と言ってました。
沢地さんは、少なくとも3年生の終わりまでは学校にいたそうで、
その後もまずまず普通に接してはいたんですが、
家に遊びに行ったときの話はしなかったし、
ハムスターも弟の話題も出なかったということです。

で、何で今頃このことが出てきたかというと、
先日、妹に沢地さんから久方ぶりに葉書がきたんです。
それには「弟が今度結婚することになった、よかったら出席してほしい。
 教会で行うので、普段着でいいし、ご祝儀などは一切いらない」
こういう主旨のことが書いてあったそうです。ええ、もちろん日時と場所も。
調べたら、ある県の海沿いにある新興宗教の施設のようでした。
でね、僕が相談されたってわけです。
変な話でしょ。みなさんどう思いますか。



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