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二面さま

2014.08.13 (Wed)
今、中2です。中1のときに総合学習で郷土研究というのをやりました。
地元に伝わる妖怪「じろすえさま」について調べたんです。
そのときの発表を思い出して話します。
「じろすえさま」は長く上郷の集落で言い伝えられてきた妖怪で、
江戸時代の古文書にもその名前が出てくるんです。
野っ腹の中に「じろすえさま」を祀った小さな祠があり、
そこへ通じる道はなかったと言われています。
世話をするものがなく、
うち捨てられていたため祠はどんどん朽ち果てていって、
農作業のための物置小屋よりもひどい状態になっていたそうです。

ただ、当時の村には「じろすえさま」を不憫に思っていた人もいたらしく、
他の村人にわからないように、暗くなってからこっそり祠を修繕したり、
お供えをあげたりすることもあったと言われています。
「じろすえさま」にお供えをする場合は、2つ、4つ・・・など、
必ず偶数でないといけなかったそうです。
その祠があった場所は、今は市営住宅前の小公園であるそうです。
次に「じろすえさま」の外見について話します。
5歳くらいの子どもの姿をしていた、と古文書にはあります。

子どもの姿なんですが、顔が2つあったという話なんです。
首は一つで、その上の頭も一つなんだけど、
頭の左右に別々の顔がついていたんです。
一つは兄の男の子で名前は「じろう」、
もう一つは妹の女の子で「すえ」という名前です。
これは親がつけたのか、それとも村の人がつけたのかわかりません。
二つの顔はあまり仲がよくなくて、いつもケンカしていたんだそうです。
だから前に話したように、お供えなんかも2つの顔が公平に分けられるように、
必ず偶数でないといけなかったってことでした。
この姿から、「じろすえさま」は「二面さま」とも呼ばれていました。

「じろすえさま」は日が暮れると、
祠を抜け出して村の中を歩き回ることがありました。
村の辻なんかでは、どっちにいくかで「じろすえさま」の二つの顔が、
言い争いをすることがあり、
その声が近くの家に聞こえてくることがあったそうです。
また、村の人は日が暮れてからどうしても出かけなければならなくなったときは、
小さな握り飯かまんじゅうなどを2つ持って歩くことにしていたそうです。
もしも「じろすえさま」に出会ってしまったら、
そのお握りを投げるんです。
そして「じろすえさま」が拾って食べる間に通り過ぎていくことにしていました。

何かをあげなかったりしたらどうなるかはわかりませんが、
とり殺されたり、害を受けるということはなかったようです。
だからお坊さんを呼んでの本格的なお祓いなどは行われなかったのだと思います。
また、あげるものが一つしかなかった場合は、
それを兄の「じろう」がとってしまい、
「すえ」が悲痛な声で泣き叫ぶのだそうです。
・・・だいたいこんな話なんですが、
村は明治になって町に変わり、さらに町村合併の時期に市になって、
その間に「じろすえさま」の話も忘れ去られて、
古くから住んでいる年寄りが、かろうじて覚えているという状態になったんです。

僕もこれを調べたときには、ただの伝説だと思っていました。
そんなことが昔だとしてもあったはずはないし、
まして現代では妖怪なんてマンガの中にしかいないと考えてたんです。
それが・・・今年のお正月なんですが、
「じろすえさま」と思われるものに出会ってしまったんです。
僕は剣道をやっていて、冬休みの学校の部活のほかに道場にも通っています。
その道場で、正月の道場開きがありました。
簡単な稽古の後に、師範の奥さんが作った汁粉を食べ、
1年の目標を紙に書いたりするんです。

最後に、神前に礼をして紅白モチをもらって終わりです。
夜の8時少し前だったと思います。
「じろすえさま」の祠があったと言われる公園の前を自転車で通りました。
するとベンチに一人の男の子がいるのが目に入りました。
いや、「じろすえさま」の祠があった場所だなとは思いましたが、
怖くはなかったです。市営住宅がすぐ目の前で、
ほとんどの部屋に明かりがついてましたから。
それに、男の子は昔の着物とかじゃなく、ジーンズだったし、
現代のジャンバーを着て、フードをすっぽりかぶってたんです。

だからここで親が来るのを待ってるとかだろうと思ったんです。
自転車の速度を少し落として通り過ぎようとしたら、
「お兄ちゃん、お腹が空いてるから食べるものない」
とその子に声をかけられました。
ちょっと変な感じはしたんですが、自転車を停めて生垣をとび越えていくと、
「お母さんがいつまでたっても帰ってこないんで、お腹空いた。
 何か食べ物があったらちょうだい」
その子はベンチにまっすぐ座って、顔だけこっちに向けたままそう言いました。
かわいそうに思ったし、ちょうど紅白モチを持ってたので、
それをあげようとしたんです。

「ほら、これあげるから」と紙箱ごとモチを手渡したら、その子は、
「一つでいいです」と言って白いモチをとり、あとは箱ごと返してよこしました。
「でも、お母さんが遅くなれば、またお腹が空くかもしれないから」
僕がそう言ったら、
「でも、死んでしまって、妹の分はもういらないから」
こう答えてフードをめくり、横を向きました。
・・・後頭部の髪が削れたようになくなっていて、
そこに白い小さなガイコツの顔があったんです。
「これ、妹だよ」男の子がそう言いました。
僕は後も見ず逃げだし、自転車に飛び乗って全速力で逃げ帰ったんです。
 
家に帰ってこの話をしたら、親は笑ってましたが、
高2の兄さんがいっしょに見に行ってくれると言い出しました。
2人で自転車で行ってみたら、公園には誰もいなかったです。
兄さんがゴミ箱を調べたら、紅白モチの箱が出てきて、中身は空でした。
兄さんは「俺は信じるから。食べたみたいだから、いいことをしたんじゃないか」
と言いました。
もしかしたら僕が郷土研究で、
「じろすえさま」の発表をしたから出てきたんじゃないかとも言ってました。
妖怪だって、忘れ去られるのは嫌だろうからって。
その後、特に変わったことはありませんでした。
これで終わります。



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コメント
いつも読ませていただいてますが、コメントは初めてさせていただきます。

なんか、切ないですね……。仲の悪かった二面さまなのに、妹が死んでしまってやっぱり寂しいのかな、と思いました。

こうやって人から忘れ去られることで、妖怪たちは死んでいくのかもしれないですね。
椿 | 2014.08.14 08:28 | 編集
コメントありがとうございます
そうですね・・・妖怪を信じる人はほんとうに少なくなりました
一妖怪好きとしてたいへん残念に思っています
その分幽霊の話が多くなっているんですが
この原因はいろいろあると思います
後で書けたら書きます
bigbossman | 2014.08.14 20:53 | 編集
はじめまして

この話を読んで、両面宿儺を思い浮かべました
| 2015.02.28 00:34 | 編集
コメントありがとうございます
自分にはシャム双生児のイメージが強くあって
これはその手の話の一つです
bigbossman | 2015.02.28 01:44 | 編集
「じろう」が二郎・次郎だとすると、上に誰かもう一人いたような感じがします。
「すえ」が末だとすると、次がもう生まれてこないと分かっているかのようで。
なんだかいろいろと妄想が膨らみます。

さらに言えば、男女の双子だと二卵性なので、一卵性特有の変異である結合双生児として生まれてくるとは考えにくいんですよね。
二人がそのような姿になったのには何か別の由縁があったのかなぁとも考えたり。
| 2019.06.20 07:02 | 編集
コメントありがとうございます
二面さまはヘルマフロディテだと思われます
ヘルメスとアフロディテが合わさった両性具有の神です
この兄妹の体がつながったのも
ギリシア神話のような理由があったのかもしれません
bigbossman | 2019.06.20 08:27 | 編集
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