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ムジナの話

2014.08.31 (Sun)
えー今、中2です。7月の第4週の夏祭りのときのことだから、
もう1ヶ月前になります。本当はもっと早くに
来たかったんですが、ここのことがよくわからなかったもので。
ネットで必死に探してやっと見つけたんです。地域の祭りに
友だちと遊びに行ってました。えーと諏訪神社のお祭りですね。
そんなに大規模なものじゃなくて、夜店が出るくらいで、
山車とかお神輿とかそういう派手なことはないんです。
2日続きの1日目で地元では「宵宮」といってます。
あれこれ遊びましたが、8時50分になって帰ることにしました。
9時までしか参加できないって学校で決められてて、
その時間になると怖い男の先生方の見回りがあるんです。

自転車は少し離れたスーパーに置いてて、そこで友だちと別れました。
僕だけ家の方向が違うんです。大通りは交通規制になってたので、
普段はあんまり通らない裏道を走ってました。
すると、あんまり大きくはない石の橋の欄干と土手の間に、
変なものがあるのが目にとまったんです。
細長い木で、お寺にあるような・・・ああ、卒塔婆っていうんですか、
それです。ただ上のほうは、家の屋根みたいな形じゃなくて、
人魂みたいになって尖ってたんです。長さは1mもなかったと思います。
「墓でもないこんなとこに、変なの」と思いながら通り過ぎようとしましたが、
自転車のライトがあたったときに、字が読み取れました。

それで急停止したんです。なんでかっていうと、うちの父親の名前が
書いてたんですよ。ちゃんと確認しましたが、漢字も全部同じでした。
普通なら同姓同名ということもあるんでしょうが、
うちは昔からこの地域にある家で、ここでは言えませんけど、非常に
珍しい名字なんです。そのあたりでこの名字なのは家と親戚数件くらいで、
あとはテレビなんかでも聞いたことがなかったんです。
卒塔婆は真新しい木でできてて、白々と光ってました。
筆で書かれた父親の名前も、最近書いたばっかりっという感じでした。
あと、下の埋めてある部分の土のとこは草が生えてなくて、
1m四方くらいを掘り返した跡があったんです。

変だとは思ったんですが、まさか抜いたりもできないし、
そのまま帰りました。父親に聞いてみようと思ったんです。
家に着くと、父はまだお祭りに出ているということでした。
うちは、今は不動産業をやってますが、昔からこの地域の地主をしていて、
江戸時代は庄屋だったという話もあるんです。
祖父はもう亡くなりましたけど、合併前の町長までやった人で、
父もそういう関係から神社の氏子代表だったし、お祭りの世話役も
していました。「遅くなるんだろう」と思いましたが、
テレビを見て起きてました。もう夏休みに入ってましたし。
案の定1時過ぎに、父はかなり酔っぱらって帰ってきました。

これは話が通じないんかなとも思ったんですが、さらにビールを
飲むために居間で座ったので、その卒塔婆の話をしたんです。
そしたら最初はうるさそうに聞いてたんですが、
僕の言ってることがわかると、顔色が変わったんです。
お酒で赤らんでた顔が、急に覚めたように青くなりました。
そして僕に見た場所を聞くと、車庫からシャベルを持ち出し、
「ちょっと見てくる」こう言って、出ていってしまったんです。
母もあっけにとられていましたが、酔っぱらっての行動だと思ったのか、
何も言いませんでした。3時近くまで待ってましたが、
帰ってこないので、その日は寝てしまいました。

次の日、9時には起きて下に行くと、父は戻ってきていて、
待ってたみたいな感じで、あの卒塔婆を僕に見せました。
「お前が見たのはこれか?」って。間違いなくそのものだったので、
父が橋まで行って抜いてきたんだと思いました。
「これ、何なの?」と聞いたら少し黙ってましたが、
「別に秘密ってこともないから、話してやるか」こう言って、
こんな話をされたんです。「昔、江戸時代やもっと前、うちは地域の
 庄屋を務めてたことは知ってるな。その当時は、村の普請、
 普請ってわかるか。川の流れを変えたり、橋を架けたり、
 氏神の修繕をしたり、そういうのは今みたいな公共工事じゃなくて、
 村のもんが自分らでやってたんだ。
 もちろん大がかりなのは藩でやったんだろうが」

「村には奇妙なしきたりがあって、橋の工事のときには、
 長く保ちますようにと生贄を捧げた。いやいや人間じゃない、
 そんな非道なことはせん。ムジナ・・・今でいうアナグマのことだとも
 言われてるが、山でこれをつかまえてきて、工事の終了のときに
 橋のたもとに生きたまま埋める。そこに、この形の卒塔婆を立てたんだな」
「どうして父さんの名前が書いてあるの?」
「それが、これはどうやって始まったのか言い伝えられてはいないんだが、
 埋めるムジナには人の名前が付けられるんだ。ただ誰でもいい
 ってわけじゃなくて、実際にいる生きた人、庄屋の家系、
 つまりうちの誰かの名をつけることになってたんだ」 「どうして?」
「わからんが、おそらく村の責任者ってことでなんだろう。たいがいは
 隠居したじいさん、いなければ当主の名がつけられたんだそうだ」

「どうしてこの卒塔婆に俺の名があるのかわからんけどな。
 この風習はお前の祖父ちゃんの頃にはもうなかったはずだ。
 戦前あたりはちょっとわからんけどな。
 だが、今じゃこんなこと知ってる人もいるとは思えないんだがなあ」
「昨日、これ抜いてきたんでしょ。そのとき下も掘ってみた?」
父は少し黙りましたが、
「うん掘ってみた。そしたら、動物の死骸が埋まってたよ。
 まだ死んだばかりでほとんど臭いもしなかった」
「ムジナだったの?」 「いやあ、今このあたりで
 ムジナを見ることはない、山にはいるかも知れないが、
 つかまえるのは一苦労だろう・・・猫だったよ。小さめの雉猫」
「それでどうしたの?」

「・・・うん、いやな、埋め戻せばよかったのかもしれないが、
 酔ってたし、俺の名が卒塔婆に書いてあるのを見たら急に腹が立って、
 川に投げ込んじまったんだ。どうすればよかったのかよくわからん。
 昼から祭りの本宮に行くから、そのとき神主さんに聞いてみる」
これで話は終わりでした。僕も親父もどう対処していいかわからなかったんです。
朝昼兼用に母がそうめんをゆでてくれたので、父と僕と弟で食べていました。
そしたら急に、父が「むーん」とうめきながら、そうめんを吐き出したんです。
そして頭をテーブルにつけて、両手でランニングシャツの
背中を掻き毟り始めたんです。「おぶっ、おぶぶぶっ」と声を出し、
そのたびにそうめんが口から出てきました。
呆然と見ていると、父の背中が割れたと思いました。

そこから雉猫が一匹飛び出してきて、トントンとタンスを駆け上ると、
ジャンプをして天井の隅に消えたように見えました。「ああ。猫が!」
昨日からの話を知らない、小4の弟が叫んで立ち上がりました。
その声で僕も我に返って、「父さん、大丈夫?」と言って駆け寄ったんです。
そしたら父が頭を上げ、「持ってかれた」とかすれた声で言いました。
背中を見ると割れてなかったし血も出てなかったんで、少し安心して、
「持っていかれたって、何を?」と聞いたんです。
父はぼんやりと僕を見つめて、「10年、10年分の寿命・・・」
こうとだけ答えて、またテーブルに頭を落としました。それからは、
母親が神主さんに連絡して家に来てもらったり、いろいろ大変だったんです。

あの卒塔婆はそのとき神主さんが持っていってしまいましたから、
今はありません。父は、体調的にはそんなに変わったことは
ないようでしたが、気分がふさぎ込んでしまって仕事が手につかなくなり、
今は仕事を休んで病院に通っています。
え、猫ですか?あの後、家の中を探したんですが見つかりませんでした。
ただ・・・ときどき、夜中に猫の鳴き声が聞こえることはあります。
外の野良猫だと思うようにしてますけど・・・やっぱり怖いです。ここは、
こういう不思議なことに詳しい人が集まってる場所だって聞いてきたんです。
今後どうすればいいか、どなたか教えてくれる方はいませんでしょうか?

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