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20秒

2014.09.02 (Tue)
3日前の夜の9時過ぎです。ファッション雑誌の編集の仕事をしているんですが、
その日は軽く残業をして帰宅したんです。電車に乗り、いつもの駅で降りました。
そこから私のマンションまでは、歩いて10分少しです。
小雨が降っていたので傘をさし、広めの通りに出たとき、
50mほど前でテイッシュを配ってる宗教団体らしき人が見えました。
それとちょうど信号が青だったので、道の反対側に渡ったんです。
いつもはこちら側は朝しか通らないんですが、
どうせどこかで道路を横断するのに違いはありません。
しばらく行くと、「開運」と大きな看板のあるハンコ屋さんの前に、
易者さんが出ていました。

毎日ではないですが、よく見かける人です。
たぶんそこのお店をやっているご主人なんだと思います。
その店の前を覆っている庇の下に見台を置いてましたから。
お店の宣伝を兼ねてやってるのかもしれません。
夜8時過ぎでないと出てませんし。
60過ぎくらいでしょうか、宗匠帽?の下の顔は、
昔テレビで見た、ムツゴロウさんという動物好きの作家によく似ているんです。
足下に目を落として通り過ぎようとしたとき、
「あの・・・ちょっと待ってください」と、その人から声をかけられました。
「あ、はい」つい返事をして立ち止まってしまいました。

「えー、ちょっとお時間いいですか?」こう聞かれたので、
「すみません、急いでますから」と答えて過ぎ去ろうとしました。
「待って、見料とかいただこうと思ってませんし、20秒だけでいいんです。
 迷ったんですが、引きとめてしまいました」
「あ、でも・・・」
「ほら、こうしてる間に10秒たつところですよ。
 いやこれね、営業でもなんでもないんです。あなたが心配に思えたもので」
「それ、どういうことでしょうか?」
「はっきりは言えません、言うと結果が変わってしまうかもしれないし・・・
 それにね、もう20秒たちました。ご苦労様、お気をつけて」

何がなんだかわかりませんでしたが、毎日私がこの道を通っているのを見て、
お客として取り込もうとしているのかもしれないとも思いました。
「ああ、こちら側を通ったのは失敗だったか」という考えが頭をかすめましたが、
ただ軽く礼をして歩き出しました。
すると背中から「・・・お花、あげてやってあげてくださいね」と、
声をかけられたんです。
こう言ってはなんですが、おかしい人なのかなと思ったりもしたんですよ。
一つ角を曲がると、マンションのある通りに出ました。
このあたりは、敷地面積がせまく高さのある同じようなマンションが、
ずらっと立ち並んだところなんです。

傘をすぼめながらマンションに入りました。エントランスに管理人室があり、
夜間は警備員さんが終夜常駐しています。
ちょうど顔見知りの警備員さんが、
ハンカチで手を拭きながらエレベーターホールのほうから戻ってきたところでした。
「お疲れさまです」とあいさつをし、エレベーターで部屋へと向かいました。
その日は少しネットで調べものをし、発泡酒を飲んで寝ました。
朝方・・・パトカーのサイレンで目が覚めました。
時計を見るとまだ5時台でした。
何かと思い、部屋のある階のホールに出ると、私のところを入れて4つある部屋のうちの、
2部屋の住人の方が同じように出てきました。

連れだって下に降りてみました。
エントランスには住人の方がたくさん出ていましたので、何が起きたのか聞きました。
はっきりしたことがわかる方はいないようでしたが、
火事ではなく、事件があったらしい様子でした。外に出ようかと思いましたが、
警備員さんが入り口で、
「特に用事のない方は出ないでください。もう少し明るくなるまで待ってください」
と言ってるのが聞こえたのでやめにしました。
やがて出勤時間がせまった人たちは部屋へと戻り、
人の騒ぐ声が多くなってきたようなので外へ出てみました。
私のマンションからすぐ先の路上にパトカーが何台も停まり、
警官が出て、野次馬らしき人を押し戻していました。
何が起きたのかを近くにいた人に聞いてみましたが、憶測ばかりでらちがあきませんでした。

私は出勤の時間が遅いので、部屋に戻ってテレビをつけてみましたが、
全国ニュースではなにもわかりませんでした。
ネットで私のマンションのある街の名と「事件」という言葉で検索してみると、
いくつもアップされている記事が見つかりました。
殺人事件でした。私のところから3つ離れたマンションのエレベーターの中で、
若い女性が刺殺されたんです。
そこのセキュリティがどうなっていたのかわかりませんが、
一緒に乗り込んだ犯人によって胸や腹を何度も刺されたとありました。
犯人は血まみれの包丁を持って呆然と立っているところを、
住人に見つかって通報され、すでに逮捕されていました。

はっきりしたことはわかってないようでしたが、時間はちょうど私が帰ってきた頃で、
その女性とは面識のない、通り魔的な犯行の可能性が高いと書いてありました・・・
それで昨日です。会社の帰りに花を買いました。
そのマンションには入れないでしょうが、玄関前にお供えしようと思ったんです。
駅からの道を通っていると、あの開運ハンコ屋の前に易者さんが立っていました。
私が通るのを待っていたように、見台の前に出ていたんです。
そして私が手に花束を持っているのがわかったんでしょう。
ちょっと厳しい顔をして「うんうん」という感じでうなずきました。
それを見て私は道路を隔てた反対側の歩道え立ち止まり、
深々と頭を下げたんです。
ええ、このあと、店まで行ってきちんとお礼をしてこようと思っています。

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コメント
 語り手さんの主観では「20秒の足止めのおかげで命が助かって、誰かが身代わりになった」というお話ですが、視点を変えると「未来を変えようとして足掻いても、歴史の防衛作用によって大筋は変わらない」となりますね。・・・そんな映画があったなあ。
| 2014.09.05 00:44 | 編集
コメントありがとうございます
映画はファイナル・デスティネーションのシリーズなんかが
そんな感じですね
昔からよくあるテーマではありますが
bigbossman | 2014.09.05 01:05 | 編集
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