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怪片 3題

2014.09.05 (Fri)
空飛ぶ・・・

私が大学生のときの話ですから、かれこれ30年も前のことですよ。
地元の国立大に入って親元から通ってたんですが、
なかなか厳しい親でね、20歳を過ぎた途端、
もう大人だからって小遣いをくれなくなったんです。
そっからはバイトバイトの毎日でした。一番長く続けたのはエレベーターボーイ。
これはね、当時駅前にできた12階建てのデパートでやったんです。
営業時間は夜の6時までで、そこまでは正社員のエレベーターガールがいます。
その時間を過ぎると12階にある飲食店しか営業しなくなって、
で、店内は警備会社の管理に入るんですが、
その警備会社に雇われて1階と12階を往復するのがエレベーターボーイの仕事。

6時から10時までの勤務で、1日3千円いかないくらいでした。
でも当時としては高額なほうだったんですよ。
行ったらまずブレザーの制服に着替えて、エレベーターのパネルを操作する。
これで1階と12階以外はドアが開かなくなります。
ただ各階には止まることはできましたね。
いつも2階か3階に待機していました。
何で1階にいないかっていうと、客が来ないときはマンガ本読んでるんです。
いつ中断してもいい4コママンガが都合よかったです。
で、1階から呼び出されると、マンガ本をブレザーのポケットにしまって降りていく。
1階のドアが開いたときは、ぎこちない笑みを浮かべて、
「いらっしゃいませ、12階にまいります」と言う。こんな仕事でした。

ああ、言い忘れていましたが、
そのエレベーターはガラス張りで外が見える展望エレベーターでして、
今じゃどこにでもありますが、当時としては珍しかったんですよ。
で、4時間の間に客は50組くらい来たんですが、時期によっては暇なときもあって、
そういう日は意味なくエレベーターを上下させて遊んでました。
いや、怒られることはなかったです。警備会社の人は皆バイトには優しかったですよ。
ある夜ですね。暇なほうの日で、10階くらいにいたんです。
マンガを読んでいたら、何か視界を動いたものがあったんです。
顔をあげると、ガラス越しに白い丸いものが見えたんです・・・人の尻でした。
「ええっ!」とガラスに近寄りました。
ネオンで明るい夜空をね、ホウキが飛んでたんです。
いやいや魔女の宅急便とかのずっと前の話ですよ。
後ろに跨ってたのが素っ裸で金髪の女、その前にスーツを着たサラリーマンのおっさん。

間違いなく見たんです。わざとこっちに見せつけるように何度も前を横切りましたから。
どうやらホウキを運転?してるのは裸の女のほうで、
前のサラリーマンは目を閉じてこっくりこっくり居眠りしてるみたいでした。
女は・・・正面からはっきりとは見てないんですが、体つきは日本人離れしてましたね。
それにその時代、日本人で金髪に染めてる人はいなかったです。
「あ、あ、あ」とあっけにとられてる間に、ホウキは向こう向きに方向を変え、
女が尻を高く掲げたかと思うと、
ロケット花火のようなスピードで夜空に飛んで消えたんです。
・・・いや、誰にも話しませんでしたよ。キチガイと思われそうだったんで。
でね、翌日話に聞いたんですが、小遊園地みたいになってるそのデパートの屋上から、
フェンスを乗り越えての飛び降り自殺があったらしいんです。
デパートの役員ということでした。あのサラリーマンかは確かめようがなかったです。
それから2ヶ月くらいして、デパートの営業時間がのび、
飲食店街は映画館になって、バイトもなくなっちゃったんですよ。

3大仏

小学生のときの話です。地元のお寺は禅宗で、もうとうに亡くなりましたが、
子ども好きの住職さんがいて、
子どもらが境内で遊んでも怒ったりしなかったんです。
だから小学校の中学年まではよく友だちと遊びに行きました。
ただ、生き物をとることは禁止でしたね。
直接言われたわけじゃないんですが、
「当山で殺生するなかれ」という立て札がありました。
いやこれは、親父と来たときに意味を教えてもらったんです。
今から思えば、境内の中に浅いけどけっこう広い池があって、
子どもが落ちたりするのを防ぐ意味もあったんだと思います。
あと、境内は墓所と続いていて、
そっちで遊んでも何か言われるってこともなかったです。
ただ子ども心にも、墓所にはあんまり行っちゃだめだとはわかってました。

ある夏の日ですね、同級生2人とそのお寺で遊んでたんです。
そしたら1人のやつが、ワクワクすることを言い出したんです。
そこの墓地には3体の大仏像があって、
その3つをある順番に回ると不思議なことが起きるって。
不思議なこと・・・というのが何かは、
言い出したやつにもわかってないみたいで、
もしかしたらその場で思いついた出まかせだったかもしれません。
この大仏像というのは、地元の市の有力な家系の墓所です。
他と差をつけるためなんでしょう。
広い墓所の中に、墓石とは別に石彫の大仏が造られてたんです。
結跏趺坐というんですか、台座の上に蓮の花があって、それに座った形の。
「すげえ、やろうぜ」ってことになり、「ある順番」というのがわからないんで、
ひととおり全部試してみることになりました。

3体の大仏がA、B、Cとすると、
A-B-C、A-C-Bという具合に6通りになりますよね。
で、Aから始めて広く入り組んだ墓所の中を大急ぎで走って回った・・・んですが、
そこは小学生なんで、途中でわけがわからなくなっちゃったんです。
まあ、算数が得意というやつもいませんでしたし。
それで今度はCから始めて、その大仏の前の細かい砂利に、
小枝で通った順番を書いておくことにしたんです。
で、Bを最初にしたときだったから3回目か4回目のことです。
「いっせいの」で、B大仏にタッチして走り始めた・・・んですが、
最初に走ってたやつがせまい墓所の通路で急に転んで、
残り2人もそれにつまずく形で折り重なって倒れました。
そのとき、空が急に真っ暗になったんです。
ずっと向こうまで続いていた墓は見えなくなってて、夜みたいでした。

ただ、ずっと遠くに山があって、その上に赤い火が燃えてたんです。
いえ、火山という感じはしませんでしたね。黒と血のような赤い色の世界です。
声が聞こえたんです・・・「ヒイイイィ」という悲鳴が、
いくつも重なって聞こえるような。
すごく怖ろしい気持ちになって立ち上がりました。
すると、あたりは明るくなって蝉の声が聞こえる・・・元に戻ったんです。
友だち2人も立ち上がってきょろきょろしていました。
「お前ら今の見たか」と言うと、「見た、赤かった」「見た見た、声も聞こえた」
こう口をそろえました。「何だったと思う?」「地獄!」3人が同時に言いました。
このお寺の本堂には有名な地獄絵があって、
お盆の公開のときに3人とも見たことがあったんですが、
それと色合いがそっくりの世界だったんです。
もちろろん大仏巡りはそこでやめにして帰りました。大人には言いませんでしたよ。

ベランダ

マンションの8階に住んでいます。高いところなので、
夏場は両側の窓を開け放しておくと、
風が通って涼しく、エアコンをつけることはほとんどないんです。
ただ、鳩が来て糞の害があるので、ベランダには鳥避けネットを張ってあります。
だから物干しには使えなくて、そこは不便ですね。
ダイニングキッチンと寝室の2部屋で、一人暮らしには十分な広さです。
ある朝ですね。寝室で目が覚めると、レースのカーテンが少しめくれていて、
外で黒く動くものが見えたんです。鳥みたいでした。
名前はわかりません。後日ネットで検索もしてみたんですが、
似たようなのが見つからないんです。
小さな黒い鳥で、ネットをすり抜けて入ってきたんだと思いました。
あの大きさならガラスにあたっても割れることもないし・・・
そのときは特に気にかけることもなかったんです。

鳥の姿はちょくちょく見かけました。いつも朝方です。
ベランダの手すりの上をちょこまか歩く姿がか可愛いなあ、
くらいにしか思ってなかったんですが、
ある日曜の朝、目が覚めるとガラスの外にやっぱりその鳥がいて、
いつもと違ってたのはクチバシに何かを咥えていたんです。
白っぽい、細長いもので・・・かなり大きな芋虫に見えました。
「ああ、嫌だ」と思いました。
鳥は芋虫をぽとりという感じでベランダの内側に落としたんですよ。
そのまま鳥は手すりの端にいて、じっとベランダの床を見ているようでしたが、
やがて飛び去っていきました。
・・・ほっとけばよかったんでしょうが、気になったんです。
窓を開けたときに今の芋虫が入り込んでこないかって。

それで、テイッシュとビニール袋を持って出ていきました。
寝室からは行けないんで、ダイニングを回ってです。
寝室のほうのベランダは、ダイニングのより少し低くなっていて段差があります。
そこを越えたら、排水溝の近くに芋虫が7・8匹散らばっていました。
いえ・・・動いてたので芋虫と思ったんですが、それは人の指だったんです。
親指はなくて小指か薬指・・・全部違う手のものだと思いました。
あたりに血は落ちてませんでした。
でも、切り取られたばっかりだとしても動くなんてありえませんよね。
それらは自分で這うように動いて、一カ所に固まったんです。
全体として手のひらには見えませんでした。それよりも肉色の蜘蛛に見えました。
指の蜘蛛はひとかたまりになった状態で、
ベランダのコンクリの壁を這い上って私に近づいてきました。

「キャーッ」と叫んで飛び退きましたが、それ以上足が動きませんでした。
指の蜘蛛は私のすぐ近くまでくると、手すりをのり越えて下に落ちたんです。
おそるおそる覗いてみると、
下の階の部屋のベランダの鳥避けネットにひっかっかっていました。
モゾモゾと動いてネットをかいくぐり、下の部屋のベランダに入っていったんです。
顔見知りでしたので、よほど下の住人に知らせようかと思ったんですが、
信じてもらえないだろうとためらっているうちに、
「ギャーッ」という、私と同じような悲鳴が下の部屋から聞こえてきたんです・・・
・・・マンションは賃貸ではなく買ったもので、まだローンも残ってるんです。
どうすればいいんでしょうか。とりあえず自費になりますが、
鳥避けのネットをもっと目の細かいものに交換しようとは考えているんですが。



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