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寄付します

2014.09.06 (Sat)
しがない雑文書きをしています。
この間、1週間ばかり前に、雑誌の取材でとある心霊スポットに行ったんですよ。
わりとマニアの間では有名な廃鉱山跡です。
ただ今回は、鉱山そのものがメインじゃなく、
その近くにある特殊な旅館の廃墟が取材の対象でした。
特殊なというのは、遊郭みたいにして使われてたとこなんです。
昔々の話ですけど。で、自分はね、あんまり文章の才能ってないんです。
ただ、すこーし、ほんの少しですけど霊感があるんです。
自分が取材メンバーに加わってれば、
何かしらの怪異が起きるって評判になりまして、
この手の仕事が多く入るようになったんです。

いや、行ってみるとなかなか大変なところでしたが、
今夜は心霊スポットの話じゃないんです。その後のことですね。
首尾よく、やらせではない映像や音響が撮れまして、
取材のメンバーが出版社前で夕方5時頃に解散になったんです。
家まで送ろうかと言われましたが、断って電車で帰りました。
そのときにはズーンという感じで肩が重くなっていました。
「ははあこれは、何か憑けてきちゃったな」ってわかったんです。
そういうことはよくあるんですよ。今回はモノホンの場所でしたしね。
でも、これまではたいがい、2・3日くらいで自然に抜けてったもんでしたが、
電車の中で、これはちょっと様子が違うなって思ったんです。

なんでかっていうと、これまでもらってきた霊は、せいぜいが肩の重さ、
だるさ、頭痛くらいだったんですが、今回は触感があったんです。
ゾゾーッという感じで、右頬に触れてくるものがある。
髪の毛の感触です。ボサボサに髪が伸びた頭が自分の右肩の上にあって、
その髪の束が、自分の首筋から頬にかけて触れるのがはっきりわかるんです。
で、そこから、強い恨みの念が流れ込むようにして伝わってくる。
電車は混んでなかったので、もうすぐトンネルに入るというときに、
席を立って自分の姿を暗くなった車窓に映してみました。
ええ、いましたよ。もつれまくった髪の毛の固まりの中に、
濁った白い目が一つ見えたんです。
実体化して見えたのは今回が2度目で、ヤバイなあと思いました。

霊は危険なんです。幽霊は関係のない人には危害を加えないって
言う人もいるんですが、そんなことはありません。
霊障としかいいようがない形で亡くなった方を何人も知ってますよ。
ああそれは、商売柄、霊能者の人は数人知己を得ています。
でもね、簡単にお祓いなんて頼めない。
モノホンの霊能者ってのは、自分の寿命を削ってやってるようなもんです。
だからね、御祈祷料も1回に何十万レベルでかかります。
知り合いだからってまけてくれるようなものじゃないんです。
どうしようかと思いました。・・・一つには、パワースポットと言われる
場所を巡るという方法があります。これまでの経験では、
神社仏閣よりも修験道の山のようなところのほうが効果がありました。

でも、自分にしては珍しく仕事のスケジュールが詰まってまして、
旅行する日程が立てられなかったんです。
そうしてるうちにも、肩の重さだけじゃなく息苦しくなってきたんですよ。
首に手の感触があって、後ろから絞められているんだと思いました。
そのときね、家にこういう霊を封じる水晶があったのを思い出したんです。
それは2年前にメキシコに行ったときに、
向こうの政府関係者をひょんなことで助けて、お礼にもらったものだったんです。
いやいや、霊を成仏させることはできませんよ。
ただ分離してその中に封じ込めるだけ。方法は細かく教わってました。
でね、部屋に戻って水晶を取り出し、準備をして近所の公園のトイレで
試してみたんですよ。自分の部屋ではできませんからね。

どんな方法かって? うーんそれはちょっと、ここでは勘弁してください。
大量の血液が必要だったので、手首を切らなくちゃなりませんでしたよ。
でね、見事に霊を封じることはできました。
ましたが・・・この水晶玉をどうするかの問題が残ってました。
そんなの捨てちゃえばいい、と思うかもしれませんが、そうはいきません。
封じられたことで霊はかなり怒ってるはずです。
何かの拍子に封印が解けて出てきてしまったら、
近くにいる人はまず死にます。それだけ強力な霊だったんです。
でも、とりあえずの危険は脱しましたので、手首の治療をしてから、
袱紗に包んだ水晶玉を持って、やはりパワースポットまで行かなくちゃなんないか、
とか考えながらブラブラ歩いていたんです。

そしたら、とある大きな家の門の前に、自転車が2台停まってて、
痩せて背の高い外国人2人が門扉を開けてその家に入っていくのが見えたんです。
ああ、これはと思いました。見覚えがあったんです。
労をいとわずはるばる日本まで来て布教してる外国の人たちです。
彼らは菜食で、酒もタバコもやらず実に謹厳な生活をしていることを知ってましたからね。
そこらの生臭坊主よりはるかに力を持ってます。
でね、まことに申し訳ないとは思ったんですが、
自転車のカゴにあった革カバンのチャックを開けて、袱紗ごと水晶玉を入れたんです。
いや、心配はしてませんでしたよ。彼らの力を信じていましたね。
宗教は違っていても、信じる心というのは一緒です。
それに彼らは彼らなりのノウハウをちゃんと持ってますから。

やれやれひと安心、こんな短時間で片がついて、
ラッキーと思って部屋に戻ったんです。
で、心霊スポットの原稿を2日がかりで書いてメールで送ったときは、
とにかくほっとしました。徹夜した午前中でしたが眠る気にもなれず、
サウナに行くことにしたんです。
マッサージをしてもらっていい気分で出てきたときに、
後ろでキッという自転車のブレーキの音がしました。
そして「ミツケタ!」という片言の日本語の声。
ふり向くと外国人2人が立っていて、大声でまくし立てられたんです。
「アナタ ヒドイ ヒトネ。ドシテ アンナ コトシタ」
「ワタシタチニ ゴースト イレタデショ。ダメヨ ソンナノ フェアジャ アリマセン」

あ・あ・あ、何で自分がやったってわかったんだろう、さすがだなあと思いました。
外国人の1人は短く刈った頭があちこち円形に禿げてましたし、
もう1人は自分と同じように右手首にぐるぐる包帯を巻いてました。
かなりの壮絶なバトルをしたんでしょう。
なんといってもジャパニーズゴーストは強力ですから。
でね、どうしようもないんで平謝りに謝って、寄付を申し出たんです。
さすがに改宗はできませんからね。
金額は・・・今回の原稿料の半分でしたよ。
もうね、こんなことばっかりなんです。でも、お金のことはともかくとして、
今の仕事も、霊に関わることもやめる気はありません。
霊がいるからこそね、生きている実感もわくってもんですから。




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コメント
今回はパワフルな語り手さんでしたね。
呪われても気にしない、平気で人に押しつける、とか、メンタル強すぎる(笑)

外国人宣教師?もいい味でした。
椿 | 2014.09.07 10:45 | 編集
コメントありがとうございます
これはナンセンス話なので、描写を省略し
けっこう複雑な筋を短くつめて書いてます
モルモンの宣教師さんは個人的に知ってる人がいますが
ものすごく真面目です
bigbossman | 2014.09.07 22:21 | 編集
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