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怪片 3題

2014.09.10 (Wed)
一呼吸半

小学生の時分だな。
もうとうに亡くなった、当時でも70過ぎのじい様と裏山に行った。
近かったし、何度も行ってるんだ。家の持ち山だったしな。
斜面のほとんどは杉を植えてたんだが、頂上近辺だけ雑木林が広がってて、
もっと高い山の裾のせいか、日当たりが悪くて低木が多かった。
だからじい様には、いつも「頭をかがめて歩けよ」って注意されてた。
その日もそこを通ってたんだが、じい様の注意を忘れて、
ドングリを拾って立ち上がったときに、張りだしてた太い枝に頭をぶつけたんだ。
見事に仰向けにひっくり返った。

思わず口を開けたんだと思うけど、何かが飛び出たんだよ。
今で言えばグミに似た白い半透明の楕円形のもんで、3cmくらいだったな。
熊ん蜂のような羽があって、小刻みに動かして飛び、
俺が頭をぶつけた朴の枝の脇の幹に止まった。
「息止めろ!」とじい様が叫び、
「息止めたまま立って、それを吸い込むんだ」普段出したことのない大声で続けた。
わけがわからなかったものの、立ち上がって幹に近づいた。
俺の口から出た不思議な虫は、幹の上で透明な羽をわずかに上下させてた。

気持ち悪いとも思わず、言われたとおり大きく口を開けて吸い込もうとした。
唇に羽が触れたが、虫はジジッという音を立てて横に逃げた。
「もっと口を開けろ。息吐いて、もう一回吸い込め。これが最後だぞ」
じい様の声が切迫してたんで、緊張しながら正面から虫にかぶりついた。
すると口の中で溶けた感触があって、喉には何の引っかかりもなく虫が消えたんだ。
じい様は「よかった」と言い、
「一息半で戻さないとダメなんだ。昔からそう言われてる」
心底ほっとした声でこうつけ足した。

「どういうこと?」頭を押さえながら俺が聞くと、
「いやあ、このあたりの言い伝えでな。
 魂が出ちまったときは一息半で戻さないと死んじまうって。
 そんなことになったらお前の父ちゃん、母ちゃんに申し開きできん。
 危なかったんだぞ。よかったなあ」こう答えて、俺の後頭部のほうをなでたんだ。
額は少しこぶになってたくらいで、全然たいしたことはなかったよ。
びっくりしたことで飛び出てしまったらしい。

太鼓人形

小学校3年のときの話です。高学年の兄と共同で使ってる部屋に、
太鼓を叩く猿の人形があったんです。兄が幼児のときに買ってもらったもので、
自分もおさがりで遊んだ記憶があります。
ただ、もうその頃には遊ばなくなって、
おもちゃ箱に放り込まれっぱなしになってたはずです。
ある日、遅く返ってきた兄が、「ほら、これ直ったぞ」と言って、
ベッドでマンガを読んでた俺に人形を投げてよこしたんです。

三角帽子をかぶった布製の猿は、自分の枕元で横になり、ジージー音をさせながら、
そのままの姿勢で胸の前に抱えている小太鼓を2本のバチで叩いたんですが、
昔はトテトテと単純なリズムだったのに、タガラッタ、タタタタンと複雑な音を立てました。
「何これ、スゴイ」自分が言うと、兄は得意そうに、
「スゲエだろ。それ電池も入ってないんだぞ。・・・ほら裏山にUFO跡ってあるだろ。
 あそこの丸い焼け焦げの中心に置いてたらそうなったんだ」
こう答えました。

UFO跡というのは、神社のある丘の斜面に、
なぜか、かなりの大きさの円形に草が禿げてるとこがあって、
むき出した地面が焼け焦げたように黒いんです。
同じ小学校の子どもはそこのことをUFO跡って呼んでました。
「嘘、電池ないって?」と自分が半身を起こしたとき、
マットが持ち上がったのか、人形が床にうつ伏せに落ちたんです。
人形はそのまま円を描くように動き出したんですが、
人形から2cmくらい離れた床が、人形の動きに合わせて丸く黒く焦げだし、
煙が上がったんです。「あ、あ、火事になっちゃう」兄がそう言って、
人形といっしょに床を靴下で踏み始めました。

自分が「これ!」と飲みかけのペットボトルを渡すと、
兄が人形にジャーッとかけ、人形は緑の火花を出して動かなくなったんです。
「やべえなあ」兄がそう言い、人形を拾い上げて背の側を開けてみせたんです。
言ってたとおり電池は入ってませんでした。
「俺、もう一回人形UFO跡に置いてくる」兄はそう言って人形を持って出て行きました。
床の焼け焦げはマットをずらして隠してましたが、すぐに親に見つかりました。
兄が全部俺のせいだと言ったんで、自分はおとがめなしでした。
人形は「次の日見に行ったらなくなってた」と兄は言ってました。
UFO跡の近くで落雷があって2人の子が亡くなったのは、その2年後のことです。

鬼の手

中学校2年生のときです。学区の保育園に職場体験で行ったんです。
私の班は女子ばっかり4人で、
年長組の子どもたちを中学生一人で3人担当させられることになりました。
幼年組は機嫌を悪くして泣き出すとどうしようもないし、
年長組だって保育士さんたちがいつもそばで見ててくれました。
夏休み直前の行事だったので、
その日の午後は年長さんたちをプールに入れる活動があったんです。
けっこう大き目でしたけど、本物のプールじゃなくてビニールプールです。

私たちはズックを脱いで短パンに裸足でプールに入り、
子どもたちを遊ばせてたんですが、私が担当しているさとし君という子が、
いきなりプールの中に顔を突っ込んで泣き出したんです。
それで引っぱり上げてバスタオルで体を拭いてあげたんですが、
「鬼がいた、鬼の手が出てきて水に引っぱった」そう叫んで泣きやみませんでした。
保育士さんの一人が「節分で鬼のお面をつくったけど、ずいぶん前なのにねえ」
と言いながら、さとし君にさわって「あら熱があるみたい」
それで測ってみたら38度あったんです。

お母さんの仕事先に連絡して迎えにきてもらうことになり、
しばらくして軽自動車でお母さんがやってきて、さとし君を車にのせて帰って行きました。
そのときには優しそうな人に見えたんですが・・・
3日間の職場体験が終わり、学んだことをプレゼンにまとめることになりました。
保育園の許可を得てたくさん写真も撮っていたので、
デジカメからパソコンに移して選んでいると、
私の班の別の子が撮ってた、あのビニールプールの画像もあったんです。

ずっと見ていくと、プールの中でさとし君が片足を上げているのがあり、
異様なものが一緒に写ってたんです。
プールの40cmくらいの高さの縁の奥から毛むくじゃらの鬼のような腕が伸び、
今にもさとし君の足をつかもうとしている・・・
さらにその腕が出ているあたりの水面が何となく変な色をしていたので、
画像ソフトで拡大してみると、腕ほどはっきりしてないけど人の顔に見えました。
しかも、迎えに来ていたさとし君のお母さんに似ている気がしたんです・・・



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