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字霊

2014.09.11 (Thu)
こんばんわ。日本語学校の講師をしています。
といっても海外のではなく、日本国内で留学生その他に日本語を教える仕事です。
初級を終了した方の担当ですから、授業はほとんどが日本語で、
少しだけ英語を交えて行っています。
生徒は、東南アジア出身の人が多いんですが、
その他にも南米や中東の方もいますよ。
・・・これはその中で、メキシコから来た社会人留学生の身に起こった話なんです。
4ヶ月ほど前のことです。

外国語の学習は、簡単に言えば「話す・聞く・読む・書く」の4つの内容に分かれます。
日本語の場合は「話す、聞く」も困難はありますが、
「読む・書く」のほうで苦戦される方が多いんです。特に漢字ですね。
表音文字を用いている国であれば、「話す・聞く」ができるようになるにつれて、
「読む・書く」も平行して上達してくるものなんですが、
表意文字である漢字の場合はそうはいきません。
だから、ひれがな、カタカナが書けるようになったあたりで、
もう十分とやめてしまうケースもけっこうあるんです。

日常を過ごすだけでしたらそれでもいいわけですが、
ビジネスや学業で書類を作成するなどとなればそうもいきません。
私のクラスの生徒は1週間でノート一冊使い切ってしまうほど、必死に勉強してますよ。
で、メキシコ人の生徒です。2人いまして、どちらも留学生でした。
政府関係ではなく、自費で来られた友人同士で、
東京は物価が高いとこぼしながら皿洗いのバイトなどもやってたんです。
メキシコ人は一般的に背があまり高くなくて、
平均身長も日本人より低いくらいなんですが、
2人のうちの一人は、190cm以上はある大柄な生徒だったんです。
名前は仮に、ペドロとしておきます。

ある日、授業の終わりにこのペドロから奇妙な相談をされたんです。
彼らは外国人ばっかりが住んでいるアパートにいるんですが、
夜中に目を覚ましたら、押し入れの襖の上を動くものがあった。
小さい電球をつけて寝ていたんで見えたわけですが、
それが手のひらくらいの大きさの漢字だったんだそうです。
黒い習字のような字、と言ってましたから筆文字なんでしょうが、
それがヤモリみたいに、伸び縮みしながら白い襖を這い回っていったっていう・・・
でもね、そのときはそれほど驚きはなかったんです。
外国人が漢字の勉強の最中にその夢を見るのはよくあることなんです。
それほど苦しめられているんでしょうね。

だから「夢じゃないかな」って言ったら、
「そうじゃない、ぜったい起きてた」ってきかないんです。
「どんな漢字だった?」とためしに聞いてみました。
近々授業で習ったものなら、夢で間違いないでしょう。
そしたら「這ってたのは2つの字で、一つは読めた。それは『死』という漢字。
 もう一個は『魚』が左についた見たこともない難しい漢字で読めなかった」って答え。
でね、見たと思ったものを書かせてみたんです。
そしたら黒板にチョークで、たどたどしく『鰐』って字を書いたんですよ。
いや、正確にこのとおりではなく画数も変でしたが、全体としては鰐としか読めない字。
さすがに漢検を受けるわけじゃなし、そんな字は勉強してませんから。

「ふーん」とは思いましたが、でもやっぱり夢だろうと思ったんです。
「死」というのは気になりましたが、
「鰐」と一緒にたまたまどこかで目にしたものが頭に残ってたんだろうとね。
もう一人のメキシコ人、この人はチコという名前にしておきましょうか。
相部屋で住んでいるんで、「君も見たのか?」と聞いてみましたら、
「いえ、見てません。こいついつもグウスカ寝てますよ」と笑ってましたし。
でもね、ペドロのほうはこの後2回くらいこの話をしてました。
「襖の上だけだった漢字が、そこを離れて壁に移り、
 だんだんベッドの自分の足のほうに近づいてきた、すごく怖ろしい感じがする」って。
で、その後夢はどうなったかっていうと、
ペドロは日本語学校をやめてしまったので、よくわからないんです。

チコは「悪い人にスカウトされた」って言ってました。
皿洗いのバイトは深夜にわたるんですが、そのメキシコ料理店に来た暴力団ですね、
いえ、ペドロは母国では普通の機械技師だったらしいですが、
ヒゲが濃いし、あの身長ですから。強面がするって雇われたんじゃないでしょうか。
そのあたりのことは推測でしかありませんがね。
ええ、私としては一応は教師ですからね、心配はしたんですがどうしようもありません。
それまで住んでいたアパートも引き払ってしまったんですが、
チコにはある程度情報が入ってくるらしく、
「○○の店で用心棒みたいなことをしている」とか「取り立てをやってる」
などと話してくれました。

でもそれも2ヶ月前までで、その後は消息が完全に途絶えました。
・・・それから1ヶ月して、ペドロと会ったんですよ。
私の所属する学校は、昼に学校や仕事をしている生徒が多いため授業は3部制になってて、
最終が終わるのは夜の11時過ぎだったんです。
繁華街に近い学校から出て、やや離れた駐車場に向かってました。
するとね、いきなり駐車場の管理棟の陰から、
しゃがんでいた大きな男が立ち上がったんです。
ペドロでした。ゴールドに近い色の派手な背広からシャツを出していましたが、
その右肩から胸にかけて黒く染まっていたんです。血じゃないかと思いました。

「先生、私ヘマやった。国にお金を送りたかったから悪い金盗んだ。
 でも、もうダメかもしれない、さよならです」一気にそれだけ言って、
こっちが答える暇も与えず、走り去っていったんですよ。
跡を追うこともできずぼんやり立っていると、
駐車場の向こう側のフェンスを乗り越えて、男が2人駆けてきました。
いかにもその筋という風体で、息を切らしながら一人が、
「あれだけ刺してやったのに、逃げ足が速ええな」と言い、それに答えるようにもう一人が、
「駅は固めてるから逃げられやせんよ。親分の鰐の餌にしてやる」
確かにこう言ったんですよ。

2人は私に気がついてじジロジロ見ていましたが、何も言いませんでした。
で、ほうほうのていで車まで行き、一目散に家に戻りました。
警察に行ったほうがいいだろうとはもちろん思いましたが、
ペドロの滞在資格のこともあるし、一晩じっくり考えようと思ったんです。
それにしても「親分が飼ってる鰐」って・・・ その夜、あれこれ思い悩んでいるうちに、
夢を見ました。自分では目を開けていた気がしたんですが、夢です。
夢でないとしたら、あまりに怖ろしすぎます。
寝室の天井に「死」と「鰐」という筆文字が浮き上がり、
ぐるぐる追いかけっこするみたいに回って、その中心にペドロの顔が浮かんだんです。
ペドロは、見たこともないような苦悶の表情をして大きく口を開け・・・消えたんですよ。





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コメント
bigbossmanさん、こんばんは!!^^

ワニかなー?(裏、取ってません。)まさかなーと思いながら、まさかと感じました。^^;
くわがたお | 2014.09.12 17:19 | 編集
コメントありがとうございます
これ・・・何か変な話になってしまいました
ほぼ毎日書いているとこういうときもあります・・・
bigbossman | 2014.09.12 20:37 | 編集
字霊ですか・・・
本なんかには文字魂とでもいうもんが宿りますけどねえ・・・
makakaraten | 2014.09.13 16:00 | 編集
コメントありがとうございます
よくあるパターンとしては、経文の字が毎日読まれることで
不思議な力を持つようになったなどの話がありますね
この話は、メキシコ人がなぜその字を見たのかという理由を
少しにおわせればよかったんでしょうが、書き落としてしまいました
bigbossman | 2014.09.13 22:39 | 編集
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