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ぬらり

2014.10.01 (Wed)
1ヶ月前のことです。昼休み少し前、
会社の受付から面会人が来ているとの連絡がありました。
集合ビル1階の喫茶店でお待ちになっている田中さんということでしたが、
まったく心あたりがなかったんです。
行ってみると、通りに面した席でこちらに向かって手を挙げた人物がいました。
思わず「うっ」という声が漏れました。異様な姿だったんです。
着てるものは黒いスーツでしたが、よれよれであちこちほころび、
ずいぶん年代物の喪服に見えました。しかもご丁寧にも黒のネクタイをしめていました。
体は痩せていて、スーツはブカブカでしたね。
で、背が高そうには思えないのに、椅子にかけている座高が異常に高いんです。
これははっきり頭が大きいせいです。

その人物は、挙げた手をひらひらと頭上で振り立ち上がりました。
「こっちですよ田中さん」その人物が言ったので、近づいて「私は山本ですが」と答えると、
「ああ、そうでした、そうでした。田中はわたしですよね。
 あなたです、あなたに用事で来たんです。どうぞどうぞ」
とテーブル向かいの席を勧めてきたんです。女のような声でした。
私は不審に思いながらも椅子にかけ「ご用ということでしたが?」と尋ねました。
それにしても、やはり頭が大きい。
常人の倍とまではいかなくても、1・5倍は間違いなくありました。
しかも形が変で、何というか、らっきょうの細いほうを下向きにしたような形だったんです。
顔の造作も奇妙でした。

垂れ目が腫れぼったく、鼻がひょーんと長いんです。茄子をくっつけたような形で。
「はじめまして。わたしは『ぬらり』と申します」その人物が名のったんで、
「田中さん、と聞いてきたんですが」
「それはね、方便ですよ。ええ、偽名です」
「何でまた?」そのとき、その人物の首筋で、何か小さいものがピョンと跳びはねました。
ノミとかでしょうか、いやしかし今の世に・・・
「いやいや、ホホホホ」その人物が口に手をあてて笑ったしぐさが女っぽくて、
すごく気味が悪く、鳥肌が立ちました。
「何のご用件ですか?」早く済ませてしまおうと、単刀直入に聞きました。
「はい、あなた○○に土地をお買いになりましたよね」
「ああ、ええ、買いましたよ。それが何か」

「どうしてあんな山の中にまた」
「それよりあなた、何で土地を買ったことを知ってるんですか?
 いや、別に秘密でもなんでもないですけどね。ログハウスを自分で建てるんです。
 別荘と言うほど立派じゃないが、週末を過ごすためのもんです。
 あと、ブログを作ってそのDIYの様子も公開するつもりでいます。それが何か?」
「いやあ、やめてほしいんですよ。あのあたりは運気の高い土地でして、
 仲間がよく保養に行くんです」
「仲間って?」
「妖怪仲間ですよ。わたしが代表で来ました」
ここまで聞いて馬鹿らしくなって席を立ちました。

「変な言いがかりはやめてください。もう登記の変更も支払いも済みました。
 木材も注文してあるんですよ」
「ぜひ手放していただきたい」
「しつこい人だな。まともな話なら聞かないわけじゃないが、妖怪って何です?
 ふざけたことにはつき合いきれない」
こう言って、背を向けたんです。
「ああ、待って」
「しつこいと警備員を呼びますよ」ずんずん歩いてその場を離れました。
後ろで「食べちゃいますよ~」と歌うような声が聞こえましたが、
何のことかはわかりませんでした。

憤慨しながら会社のフロアに戻ると、もう昼休みが始まっていました。
「何だったんだ今の、嫌がらせか?にしてもあんな土地、価値なんてないだろうに」
そう思っていると、携帯が振動し、出てみると家にいる妻からでした。
「ねえ、今電話だいじょうぶ?」妻が不安そうな声を出したんで、
「どうしたんだ?」と聞きましたら、
「あなたの知り合いって人が家に来てるんだけど、何だか様子が変で」
「どんな人?」
「田中って名のったんだけど、変なのよ」
ここまで聞いて、とても嫌な予感がしました。でもね、まさかとも思ったんです。
会社から家までは電車とバスで1時間半以上かかりますから。

「どうしてそんなやつ家に入れたんだ?」
「入れてないわよ。玄関の鍵はずっとかかったままで、朝から1回も開けてない。
 それなのにいつの間にか家の中にいたの。気がついたら客間に座ってテレビ見てた」
「今もいるのか?」 「ええ」
「どんな人なんだ?」
「それが・・・頭が大きくて鼻が長いの。黒いスーツを着てて・・・」
そこまで聞いて絶句しました、しましたが妖怪とは思いませんでしたよ、まさかねえ。
会社から私の家まで5分足らずで移動できるはずはありません。
双子を使ったんでしょうか兄弟とかなのか、それにしても手が込んでます。

「いいかよく聞け。まずその部屋には近寄るな。そっと外に出て警察を呼べ。
 外から鍵をかけて、不法侵入者がいますって通報するんだ」
ここまで言って、ふと妙なことを思いつきました。
「そうだ、こないだ夏物の服を整理したあと燻煙殺虫剤を焚いたよな。
 あれまだ残ってるはずだし、この前やったのを見てただろ。ヒモを引くだけだ。
 あれ仕掛けてから外に出ろ」
「・・・いいのかしら?」
何でそんなことを思いついたのか自分でもわかりません、さっきのやつが来たとき、
ノミみたいなのを見たからなんでしょうか。

「かまわん。玄関で焚いてすぐ外に出ろ。休暇をもらってそっちに行くから」
「携帯は切らないままにして部長に事情を話し、外に出ました。
「どうだ、やったか」
「ええ、言うとおりに殺虫剤焚いて出た。外から鍵もかけたし通報もしたわ」
「よし、どっか近所の家にでも・・・いや、コンビニに行って待ってろ。
 あそこからなら通りが見えるし、パトカーが来たら追いかけてって事情を説明しろ」
「あ、あ、家の中で何か怒鳴ってる」
「ドア閉めて外にいるんだろ、聞こえるはずないじゃないか」
「でも聞こえるのよ。食べちゃいますよ~って叫んでる」

でね、警察が来たときには家の中は殺虫剤の臭いが充満してましたが、
誰もいなかったんです。
妻が玄関を開けたんですし、警官が見回ってもすべての窓の鍵、裏口も閉まってました。
「ホントに人がいたんですか?」みたいな対応もあったようです。
私が家に戻ったときにもまだ警察はいましたので、会社での出来事も話したんです。
警官も首をかしげてましたが、
「不法侵入で告訴しますか?いずれお宅には毎日警邏します」
こんなふうに言われました。告訴のほうは保留し、巡回をお願いしました。
で、家の中は客間もその他も特に異常はないと思ってたんです。

不安なので土曜になったら、買った土地も確かめにいこうと考えました。
夕方になり小3の息子が帰ってきて、妻が夕食の支度をしようと冷蔵庫を開け、
大きな悲鳴を上げました。
何事かと思い行ってみると、台所の床に藁包みが落ちて中身がこぼれてました。
それが、テンプラに揚げた数匹のネズミだったんです。
これ、何なんでしょうね。手土産代わりのつもりなのか、
それとも呪いのアイテムとか?
・・・思えばこれが、いまだに続いてる妖怪との戦いの始まりだったんですよ。
(続きません)





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コメント
 ・・・あ、続かないんだw ぬらり氏は創作で総大将を任されるだけあって、確かに人型妖怪の中では交渉ごとに向いていそうです。ただ、どうしても脳内ビジュアルが水木御大ので固定されてしまう!
 あと、ネズミの天ぷらのくだり。子供の頃に「鬼太郎」を読んで、妖怪にとっての「ごちそう」の数々がやたらとワイルドでショックを受けた記憶が蘇りましたw
| 2014.10.02 23:10 | 編集
コメントありがとうございます
妖怪大戦争・・・になるにしても
やはり水木御大のイメージから抜け出せない気がして・・・
あと、ぬらりの剽悍な感じもうまく出せませんでした
bigbossman | 2014.10.02 23:52 | 編集
現代風妖怪を描くのは難しいですね。
どうしても貞子スタイルになるか、もっとSFになってしまうか。
ここ20年くらいでライフスタイルが変わった部分を取り上げて、インターネット妖怪なんてどうでしょうか。

妖怪;にちゃんねらあ
妖怪;だいえんじょう

・・・・とかね
makakaraten | 2014.10.03 09:34 | 編集
コメントありがとうございます
コミカルでない形に妖怪を描くのは難しいです
ネットには確かに妖怪じみた方はたくさんいますね
それはもう信じられないほど妖怪じみてる方が
bigbossman | 2014.10.03 22:39 | 編集
妖怪は分類すると、精霊、妖精、に近いものでしょうね。
水木しげる先生はどういう分け方をしてるか知りませんが、龍とか天狗なんかも入れちゃってますもんね。
龍や天狗は人間からの尊崇を受けているだけで本来は妖怪と同質なのでしょうが。
つまり、神の部下であり、神の命令のまにまに動いているものは眷属、精霊。
神の部下でないものが妖怪。
こういうことが言えるのではないでしょうか。
makakaraten | 2014.10.04 11:07 | 編集
コメントありがとうございます
基本的には人の霊は幽霊で、それ以外の動物や器物の霊、
自然の霊気が凝り固まったものなんかが妖怪でしょうね
おっしゃるように神の眷属というのは妖怪とは違うと思います
あと河童なんかはUMA説がありますね
つまり未確認の実在生物の可能性です
bigbossman | 2014.10.04 23:45 | 編集
連投すみません。
私は修業時代、山の中で風も吹いていないのに、一本だけ木の枝がばさばさな揺れているのを見たことがあります。
また、奈良県の石上神宮でお祓いを受けている最中、白砂の真ん中に植えてあった榊がこれまた風もないのにゆっさゆっさ揺れているのを見ました。
他の木々は揺れてないのでおかしなものですが、このときは同席した母も見たということでした。
神や眷族は自分の存在を示すため、時としてこういう行動をとることがあると後から知りました。
makakaraten | 2014.10.05 01:41 | 編集
コメントありがとうございます
その木の枝が一カ所だけ揺れてるのはyoutubeにあがってますね
自分も「蛇湯」という話で書きました
何かの通り道になってるという話もありますがよくわかりません
bigbossman | 2014.10.05 11:19 | 編集
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