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封印2

2014.10.09 (Thu)
半年ばかり前、競輪でスッカラカンになった帰り道、
顔見知りの筋者に声かけられた。
「しけた面しやがって、どうせ今日もオケラだろう。バイト世話してやろうか」
みたいな感じで。そのまま近くの屋台で関東煮を奢られた。
恐縮しながら話を聞くと、大阪の近県に一軒家があるんだが、
しばらく住まないかという内容で、1ヶ月20万払うってことだった。
むろんワケありなのはわかったし、そのワケを聞いちゃなんないこともわかった。
しかし、ただ住むだけで20万ならこれはおいしい話で、
どういう事情かはわからないが断る手はねえと思った。
まあね、薄々事情はわかる気もしたんだ。
賃貸住居の告知義務のロンダリングじゃねえかって。

どういうことかってと、瑕疵物件ってあるよな。前住者がなんかよくない死に方、
自殺もあるし、孤独死で長い間見つからずに放置されたとか、
もしそういうことがあった場合、
次に住むやつにその事実を告知しなきゃなんないと不動産業界では言われてる。
まあ、そう言われてるだけで、やらなくても別に罰なんてないが、
もし住んだやつと裁判とかになった場合、やっぱり不利があるだろ。
だから、間に短期間人を住ませてそれを消しちまおうってことだと思ったんだ。
でね、あまり考えず引き受けることにして翌日その筋者と行ったんだよ。
場所は言えないがかなり田舎のほうで、それがちょっと意外だった。
だって都会のマンションなんかと違って、そんな田舎で告知義務ったってなあ。
何が起きたかなんて周りの住人がみな知ってるだろうし。

でね、着いた先はボロボロの一軒家でとにかく大きい。
平屋建てで、部屋が1階に8つあったからな。
しかしあんまりボロ過ぎて、このままじゃ人に貸すなんて無理じゃないかと思った。
実際、住んでみたらヒドい雨漏りがしたよ。
交通の便も悪いから高い家賃なんて取れないだろう。
いっそ取り壊して更地にして売っぱらうしかねえようなとこだったんだ。
あ? 俺のアパート? そっちはそのまま契約を続けてた。
そこに住むのは何ヶ月もねえだろうし、大阪に出るには多少交通費もかかるが、
基本、住んでるだけで20万なんだから。
それに季節的にはちょうど春になったばかりで、
暖房費とかよけいな出費もないと思ったんだよ。
ただね、ちょっと奇妙な条件をつけられた。

筋者といっしょにもう一人来ててね。スーツ姿の痩せた男で、
その筋ではないと思ったが、ちょっと職業の見当がつかなかったんだ。
七三わけののっぺりした白い顔で、そのわりに目つきが鋭かった。
そいつが、俺の寝る部屋を指定したんだ。
8間あるうちの真ん中左側の和室、そこで毎日必ず寝ろってことだった。
つまり外泊禁止が条件なんだな。
それと人を夕刻までは人を呼んでもいいが、泊まらせるのは厳禁とも言われた。
ま、そんときは金欠に加えて女もいなかったから特に気にはしなかったがな。
でね、その部屋の押し入れから布団を出して、
「寝るときはこれを使ってください。いや、新品ですからご心配なく。
 ただし、毎日寝る頭の方向を変えてください。時計回りに今夜はこっち、
 明日の晩はこっち側です」ってね。

さすがにコレは冗談じゃないかと疑ったが、筋者は真面目な顔をしてた。
で、すべての条件を説明して20万を前渡しされ、
やつらは帰って行って俺は一人になったんだ。
何をしたかはわかるだろ。この奇妙な話の説明がつくもんがねえかどうか、
家の中を徹底的に調べたんだ。とにかく、何もかもが古かったな。
玄関脇には土間があって、竈の跡まであったと言えば察しがつくだろ。
もちろん俺は自炊なんてしねえから、外食か弁当だったがね。
押し入れから天袋、台所の野菜貯蔵穴、でかい仏壇の中まで調べたが、
片づけられてほとんど物は残ってない。トイレ・・・厠って言ったほうがいいか、
あと風呂もおかしなもんは何も見つからなかった。
ああ、あと監視カメラや盗聴器もないと思ったよ。
次にやったのが情報収集だ。外出は禁じられてなかったから飲みに出たんだ。

金はあったしな。1kmばかり歩くと地元の町に出るんで、
そこで小さなスナックを見つけて入ってみた。しばらく飲んでから、
さりげなくその家の話を出してみたが、めぼしい情報は得られなかった。
11時過ぎに戻ってきて寝たよ。そんときは最初だから頭が西向きだったな。
特に何事もなく朝を迎えた。いや、怖いなんて思わなかったよ。
幽霊とかそういうの信じてなかったんだ。
そんな感じで日が過ぎて、3日目になった。
つまり寝るときの頭の方向は、初日と逆の東向きになってたんだ。
その夜、夢を見た。暗い部屋に椅子に縛りつけられた男がいる。
30代くらいだろうか、髪が長いのと顔が血の跡だらけでよくわからなかった。
俺はちょっと高いところからそいつを見おろす感じでゆっくり回ってる。
後ろ側に来たとき、後ろ手になってる男の右腕の肘から先がないことに気がついた。

また正面に回ってきて、そのとき縛られた男が少しずつ顔を上げた。
顔がさんざん殴られたみたいに腫れた男が、
俺がそこにいるのがわかるかのように口を開けた。
歯が一本もなく歯茎がむき出してた・・・ここで目が覚めたんだ。
朝になってたが、自分の寝てる位置がおかしいことにすぐに気づいた。
布団がずれてたんだよ。1mくらいかな。寝るときは四方の襖を開けてるんだが、
その東の端のあたりまできてたんだ。さすがに寝相のせいじゃねえと思った。
でも、まさか夜中に布団を引っぱる妖怪がきてるわけもねえだろうし、
わけがわからんかったよ。体調? うーん別に悪くはなかったがね。
でね、4日で一回りするだろ。東向き以外のときは何も起きないんだ。
頭をそっちに向けて寝たときだけ、縛られた男の夢を見て布団がずれる・・・

一度東向きのときに寝ないで起きてたこともあった。
これは契約違反だが。特におかしなことはなかった。
風が強かったせいか家の周囲の壁が揺れてたような気もしたが、その程度。
でね、2週間目くらいに筋者とスーツの男が車で様子を見に来た。
そんときその男に言われたんだよ。「寝なかったときがあるでしょう」って。
わかるわけはないからカマをかけられてたんだろうが、聞いてた筋者が色をなした。
男はそれを制して「契約は守ってくださいよ。これはあなたのためでもあるんです」
こう言ったよ。で、いろいろ聞かれたんで、東向きに寝たときだけ布団がずれること、
それと縛られた男の夢を見ること、それを正直に話した。男は筋者と顔を見合わせてたが、
「あと少しかもしれません。もし今月中に終わっても、来月分の金も払います」
こう言って帰ってったよ。

相変わらず、東向きに寝ると布団がずれる。だが、
そのずれ方がだんだん小さくなってきた。最初1mくらいって言ったろ。
それが5回目・・・20日過ぎた頃には20cmくらいまでになってたんだ。夢も見た。
布団のずれが治まるに従って、どんどん男の様子がズタボロになっていくんだ。
拷問でも受けてるような感じだったな。床に落ちた血と髪の毛が増えてったから。
あと、調べるのは続けてたよ。3日にいっぺんくらい飲みに出かける。
あちこち別の飲み屋に入って、事情を知ってるやつがいないか聞く。
でね、何件目かでこの家のことを知ってるやつが客にいたんだよ。
ずっと、10何年も空屋だったのが、ここ1年くらい人が入るようになった。
つまり俺の前に住んでたやつが何人かいたってことだな。
そいつらはどうなったか聞いたが、3ヶ月くらい小汚いやつが入っては、
また別のやつに入れ替わる。その程度のことしかわからなかった。

住んで1ヶ月を越えた。もう東向きに寝ても布団がずれることはなくなった。
男の夢はまだ見てたが、頭をうなだれてピクリとも動かず、死んでるようだった。
俺は朝になって目が覚めるまでそれを眺めてたわけだが、
あんまり長い時間には感じなかった。
で、次の日曜日、男と筋者が来た。俺が近況を報告すると、
男が「もういいでしょう。封印は切れたんじゃないかな」こう言った。続けて、
「バイトはこれで終了しますが、前に言ったように今月分も支払います」
俺に20万くれたんだよ。筋者が車に戻って、掛矢を持った若いやつを2人呼んできた。
筋者は俺に帰れって言ったが、男が、
「この人にも見せてあげましょう。どういうことだったか知りたいでしょうし、
 ここまで知ったなら、もう仲間みたいなもんですから」
でね、俺らは家の西側の壁に向かったんだ。

そこは表側が小屋になってるしっくいの壁で、
なんとなくその部分だけ塗りが白く新しい感じがした。
筋者が合図すると若やつらが、掛矢で叩き始めた。壁はかなり厚かったがもろくてね、
どんどん崩れていって、やがて大きなものが転がり出てきた。
黒革の大ぶりなバッグだった。バッグの持ち手のところに白いものがくっついてた。
骨、肘から先の腕の骨がバックの持ち手を握りしめていたんだよ。
男は内ポケットから、金色で両先がとんがった短い棒を出し、
何か呪文みたいなのを唱えてから、それで手の骨の甲の部分を突いたんだ。
骨はばらっと崩れて、筋者が「もういいのか?」と言ってバッグを開けた。
ちらっとしか見えなかったが、中は札束だったと思う。
ま、こんな話だ。完全に俺の理解を超えてる。

この場所に話に来たのは、謝礼がほしいためもあるんだが、
どういうことなのかあんたらに説明してほしいからだよ。
ここはそういうのに詳しい人の集まりなんだろ。
いや、俺にしてみれば1ヶ月ちょっとで40万になったんだから、何も損はない。
あんたらは秘密を守ってくれるって聞いたから、話をしたんだ。
ただ、気になることがあるんだよ。
車で大阪まで送られて、その別れ際に男が俺のほうに寄ってきて、
「ご苦労様でした。あなたのおかげでたいへん助かりましたよ。
 ・・・間をおかないうちに病院に行ったほうがいいかもしれません。
 あと、あなたの郷里の神社にお参りすることも勧めます。
 あなたで4人目でしたから、力は相当に弱まっていて、
 大丈夫だとは思いますが念のため」こんなことを言ったんだよ。

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コメント
 おお・・・「彼」が再登場しましたね。この話も不気味は不気味なんですが、彼が絡むと何かこう、「理路整然としたウラ」がありそうな気がしてきます。
 骨の画像は「樹海のおとしもの」というサイトを思い出しますね。現在は閲覧できないようですが、引き込まれるサイトでした。
| 2014.10.10 19:06 | 編集
コメントありがとうございます
彼のクールな感じはけっこう気に入ってるので
この人もまた別の話の中で出てくると思います
bigbossman | 2014.10.10 22:32 | 編集
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