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異能者たちの系譜

2014.10.10 (Fri)
怪談にはときおり異能者が登場します。例えば霊感を持つ友人とか、
罰当たりなことをした主人公をしかりつけ、霊を祓ってくれる和尚さんとか。
これらの人の登場には賛否両論があります。
霊能者を登場させるとたちまち嘘くさくなる、と嫌う人は実話怪談フアンには多いです。
一方、どうせ幽霊なんか嘘なんだから、
霊能者が出てきても別にかまわないと考えるむきもあります。
ただ霊能者を出すことで、より話が創作的、小説的になることは確かでしょう。
自分的には、創作宣言もしていますし、
一つ一つの話の中の現実感はそれぞれ異なるように書いています。
ですから異能者が出てくる話もあります。
では、霊能者、異能者はどんなタイプがあるのだろうか、というのが今回のお題です。

仙道系

仙道者とは仙人になるための修行をする者ということです。
つまり肉体的な不老不死を得、自在に空を飛ぶなどの通力を有することを目指します。
日本では「久米の仙人」の話が有名ですが、
これは天平年間に大和国吉野郡竜門寺の堀に住んでいた人物で、
飛行の術を行っていたが、久米川の辺で洗濯する若い女性の白い脛に見ほれ、
神通力を失って墜落してしまったという逸話があります。
脱俗していなくてはならない仙人をも惑わす、
女の色香がテーマになっているわけですね。

仙道(神仙思想)と道教は大部分で重なりますが、少し違っているところもあります。
この違いはかなり難しく、中国の古い書物を引用して説明しなくてはならなくなるので、
ここでは割愛させていただきます。
赤松子、王子喬などの有名な仙人は道教の神として祀られています。
仙人になるためには、仙骨という生まれながらの素質が必要と言われることがあります。
仙人になる方法としては、内丹術が知られています。
現代小説に出てくる仙道修行者としては、
夢枕獏氏の『闇狩り師』シリーズに出てくる”ミスター仙人”九十九乱蔵が有名ですね。
仙人には痩せ枯れたイメージがあります(内丹術を用いていればまずそうなる)が、
乱蔵は慎重2m、体重145kgの巨漢です。

陰陽道系

日本独自のものです。
中国で生まれた陰陽五行説を元にした教えで、古代にあっては、
天文道、暦道などと並ぶ当時の最先端の科学(に近いもの)であったと言えます。
陰陽道で祀られる泰山府君は、中国の泰山信仰にまつわる道教の神でもあります。
ところで、日本では中国の民間信仰である道教を取り入れることに対して、
妨害する勢力があったという説があります。
けして多数派とは言えませんが、自分はこの説をけっこう支持しています。
陰陽道は、道教の中で特に取り入れることを許された一部分である、
と見ることもできるのではないかと思います。
最も有名な陰陽師は、言うまでもなく安倍晴明で、数々の現代作品に登場しますね。
またライバルの民間陰陽師、道摩法師(蘆屋道満)や、
その師である賀茂忠行・賀茂保憲父子も名が知られています。

密教系

密教とは「秘密の教え」を意味します。一般的には大乗仏教の中の秘密教を指し、
密教は「秘密仏教」の略であるとも言われます。
インドに長い歴史のあるものですが、
日本では伝教大師最澄、弘法大師空海が唐より、中国経由で持ち帰りました。
空海と最澄は史実的にライバル関係にありましたが、
伝説の弘法大師には、守敏大徳という呪術合戦の相手がいます。
これは上記した安倍晴明と道摩法師の話によく似ています。
フィクションに出てくる密教者のイメージとしては、
印を結びマントラを唱える姿が一般的で、代表的なキャラクターとしては、
荻野真氏の漫画『孔雀王』の主人公、孔雀が有名でしょうか。

やや話がそれますが、最近、中国明代の伝奇小説『封神縁起』を読み返しました。
これには後半で孔雀明王が登場して、仙人たちをさんざん苦しめます。
仙人たちが五色光で多数生け捕りにされて進退窮まったとき、
西方からその正体を知るものが現れ、
明王を孔雀の姿に戻してインドに連れていきます。
仏教の神は「次元の違う者」として、
中国の仙人には対処することができないという部分が面白いなあと思いました。
密教自体は大変に難しく、自分も細部はほとんど理解できていません。
(というか弘法大師のような大天才でないと、理解には一生かかる?)
昨日書いた「封印2」に登場する若い男は、
金剛杵(独鈷杵)らしきものを用いているので、密教者なのかもしれませんね。

その他の仏教者

日本にはたくさんの仏教宗派があるのですが、
密教以外、例えば日蓮宗や禅宗の修行者が
活躍するフィクションはあまりありません。
・・・とここまで書いて、「一休さん」を思い出しました。
一休禅師とも呼ばれるように、臨済宗の禅僧です。
まあしかし、とんち話は幻想文学とはまた異なりますので。
やはり密教とは違って、宗派の小道具や呪文が知れ渡っていない分だけ、
フィクションに登場させるには難しい面があるのかもしれません。
ちなみに、前に書いた『累が淵』の怨霊を鎮めた、
江戸時代を代表する霊能者 祐天上人は浄土宗の僧ですね。

黒魔術系

これもなかなか難しい概念です。
一般的には、呪術で悪霊の力を借りるなどして、
相手を呪う術はすべて黒魔術にあたるとされます。
また、これと対置する概念が白魔術であると思われがちですが、
黒、白は術者の意志、目的によって違うだけであり、
魔術をそういう形で分類をするのは無意味という考え方があります。
呪い系の黒魔術を操る者は現代のアフリカ、南米などにも存在しますが、
きりがないので、ここでは置いといて、
キリスト教と黒魔術の関係を述べてみましょう。

もともと欧州世界にはキリスト教以前からの土着宗教があり、その名残は、
「黒猫が前を横切ると~」とか「赤ちゃんには銀のさじを~」とか、
そういう部分に残っています。
この間、仕事で関係があるアメリカ人に、
日本の「節分」を説明するという経験をしましたが、ある程度話すと彼は、
「Oh! superstition(迷信)」と言って一人で納得していました。
これはキリスト教に迷信として押さえつけられながらも、ずっと生き残ってきた部分です。
『グリム童話』などに見る妖精や侏儒が出てくるような世界観で、
これを押し進めていったのが『ハリーポッター』シリーズだと思ってます。

キリスト教には「魔女狩り」という暗黒史がありますが、
当時魔女とされた人々は、基本的には上記した土着信仰の担い手で、
薬草や助産術などの知識を持った人たちであったと思われます。
これを当時のキリスト教は悪魔の力を借りる者として貶めたわけです。
ここで悪魔と関連付けられたために、魔術の概念が大きく変わってしまいました。
現在の黒魔術師には、悪魔を召還するなどのイメージがあるのですが、
本来はそうではなかったはずです。
これはキリスト教による、土着宗教攻撃の一環と見ることができます。

昔のキリスト教世界では、競争相手を追い落とす手段として、
「あいつは悪魔信仰に荷担している」という誹謗がありました。
錬金術師などは、この噂を立てられることを非常に嫌っていたのです。
王侯や金持ちに雇ってもらえないばかりか、異端審問の懼れすらあります。
ゲオルク・ファウストはドイツ人の占星術師、錬金術師ですが、
錬金術の実験中に化学的な爆発があり、五体がバラバラに四散したため、
悪魔と関係を持って肢体を引き裂かれたとする伝説が死後に生まれました。
これを下敷きにして書かれたのが、かのゲーテの『ファウスト』なわけです。

・・・軽く書き流すはずでしたが、予想外に長くなってしまいました。
まだ神道系とか書かなくてはならないことがあるんですが、
それは次の機会にまわすことにして、今回はこのへんで。

関連記事 『異能者たちの系譜2』

『鬼面独鈷杵』






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