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子ども 3題

2014.10.13 (Mon)


営業の帰りな。会社に戻るまで少し時間があったから、
住宅街の公園のベンチで缶コーヒーを飲んでたんだよ。
したら、4歳くらいかなあ。俺は子どもいないし嫌いなんででよくわからないが、
ズボン吊りのついた黒の半ズボンに白ワイシャツの、
付属幼稚園の制服みたいのを着た男の子が、
70過ぎと思える婆さんに手を引かれて前の道を通りかかったんだよ。
ていうか子どものほうが元気で、婆さんを引きずって歩いてるような感じだったけどな。
婆さんは目を伏せて、泣きそうな顔にも見えた。
ちょうど植え込みのサツキが咲いてる時期のことだ。
その子は目鼻立ちは整ってるんだけど、頭の天辺がとんがってて、
髪の毛がまばらにしか生えてなかったんだよ。

なんか可哀想な病気の子なんじゃないかと思ったね。
そう考えた理由は他にもあって、
その子は道々「ハチ、ハチ」とでかい声で連呼しながらやってきたんだよ。
無表情で、声は普通だった気がしたけどな。
「八」じゃなく「蜂」って言ってるんだと思った。
で、2人が近くまで来たとき、蜂の羽音が聞こえてきたんだよ、「ブゥーン」って。
音が聞こえるくらいのはスズメ蜂とか熊ん蜂とか大きい危険なやつだろ。
死者が出ることもあるのを思い出した。その音は婆さんにも聞こえてるみたいで、
おびえたように、頭を下げたり周囲を見回したりしてたな。
俺も少し怖くなって植え込みのあたりを見たんだけど、
蜂の姿はなく、どっから音がするのかもよくわかんなかった。
で、病院騒ぎにでもなったら嫌だから、ベンチから立ってサツキの側を離れようとした。

そのときちょうど2人が横にきて、子どもがこっちを見たんだよ。
さっき目鼻立ちが整ってるって言ったけど、目の焦点が合ってなかった。
顔は俺のほうを向いてるんだが、俺を見てるわけじゃないって感じで。
その子どもは、にやっという感じで笑って口を開けたんだ。
そしたら、これは確かに見たんだが、小さな口の中に熊ん蜂がいたんだ。
俺のほうに頭を向けた熊ん蜂が、子どもの口の内側には触れずに羽搏いてた。
子どもは蜂を入れたまま口を閉じ、前を向いて婆さんを引きずってったよ。
で、翌日の地方紙に、市会議員の家の庭で、
使用人の婆さんが、蜂に刺されて死んだってニュースが出たんだ。
写真が載ってたわけじゃないから、このときのことと関係があるかわからないがね。
ただ・・・俺と同じだろう子どもの、不思議な話を知ってる人がいたんで次に出てもらう。

猫の群れ

事務機の販売会社に勤めています。残業で遅くなって終電で帰ったんです。
自宅のある駅に着いたときは12時少し前だったと思います。
そっから自転車に乗ったんですが、住宅地ですから人も車もほとんど通ってなかったです。
でも、そのあたりは治安もよくて、変質者なんて話も聞いたことはなかったですけど。
10分もあれば家に着きます。最後の角を曲がって、あと数百mというとき、
横の家の塀の上に何か黒いものが内側から跳び上がったんです。
大きくはなかったので、猫だろうと思ったんですが、
次々と何匹も塀の上にあがってきて一列に並んだんです。
猫好きなので、自転車を停めてどうなるのか見てよう思いました。
街灯の光があたる場所にも出てきたのんですが、それがとても異様なものでした。

確かに猫なんですが、毛並みがグチャグチャに乱れてて、
タールの中に落としたような感じで固まってたんです。それだけじゃなく、
足のうちの2本の肉がなくなって白く骨が突き出ていました。
片目だけ見えたんですが、それが・・・煮た魚みたいに白目しかなかったんです。
「何これ!?」と思いました。
そのとき、列の先頭、塀の曲がるところに猫よりも大きな影が跳び上がりました。
暗いんですが、その影は白々としてて裸の人間だと思いました。
小学校以下の人間の子ども・・・
影は道路に飛び下りると街灯の光の下に出てきたんですが、
頭頂部が奇妙な形に尖っていたんですよ。

子どもは一瞬こっちに顔を向け、その年齢とは思えない素早い動きで、
道の反対側の塀に入り込んだんです。
猫の群れがその後に続いて・・・十数匹いたと思います。
それがみな、死んだ猫なんですよ。どれも毛並みが乱れてて、
足がないのや頭が欠けてるのもいました。なのに普通の猫と同じように素早く動いて・・・
呆然と見ていましたが、最後の猫が消えたところで我に返って、
とにかく家まで全力で帰ろうとしたんです。
そしたら、後ろから車が来ました。大きな黒いSUVでとてもスピードを出していて、
あっという間に私を追い越して停まったんです。
中からばらばらと4人人が出てきました。白い上下のつなぎの服を着ていて、
あの・・・街宣車って言うんですか、あれに乗ってる人みたいでした。
路上に立ち止まって私のほうを見ていましたが、また車に乗って走り去ったんです。

大猫

なあ、不気味な話だろ。これは絶対嘘じゃねえよ。
今夜出てきた3人は前からの知り合いじゃねえ。たまたまネットで地元のSNS参加してて、
この頭の尖った子どもの話題が出て、同んなじものを見たんじゃねえかってことになった。
実際に会ったのは今日が始めてなんだよ。
あ、俺が見たのは2人の話の年の2月だよ。地元の建築会社で夜にブルで除雪してたんだ。
市から請け負ってるんじゃなくて、法人から頼まれたやつ。
で、そのときはある貿易会社の倉庫の駐車場に入ってた。
港の近くだからそんなに雪は積もらないんで3日おきくらいだな。
そういうのが夜の間に5件ほどあったんだ。
あらかじめ入り口のチェーンは鍵かけないようにしてあったんで、
ブルから降りて外そうとした。

そんときにね、駐車場の雪の上に何かが立ってるのが見えたんだ。
雪は降ってなかったよ。月が冴え冴えと明るい晩だった。
大きいもんだった。3mはあったと思う。
全体としては人の形・・・というか、立ち上がった猫の形にも見えた。
もちろんそんなのがいるわけはねえから、いつの間にかこさえたオブジェがあるんだと思った。
いや、雪で作ったとは考えなかったな。黒っぽかったし、なんか複雑にでこぼこしてたから。
これを残して周囲を除雪すればいいのか、こんなの聞いてねえぞ。
そう考えながら近づいていったら、そのでかいのが動いたんだ。
立ってたのが、うつ伏せの四つ足になった。
「まさか生き物か?」ドキッとしたよ、そりゃ。
ブルに戻って懐中電灯を出して照らしてみたんだ。

そしたら、光があたったところに小さい猫の顔みたいのが見えた。
その横にも・・・何て言えばいいんだ。つぶれた猫の死骸が固まって、
一匹の大きな猫を形作ってる?3mもあるんあるんだから、何十匹、百匹以上かもしんねえ。
そんなものがあるか?心底ぶるったが、体が固まったように動けなかった。
で、倉庫の裏手から今度は白い小さいものが出てきたんだよ。
人間の子どもだと思った。それも裸の。
前の人たちが言ってたのと同じくらいの年ごろ。
その子は大猫の横に来て、飛び上がるようにして背中に跨ったんだよ。
大猫が動き出し、俺のほうに近づいてきた。
逃げなきゃ、と思ってブルの陰に入ったんだ。大猫はブルの横を通り過ぎ、
背中の子どもの横顔が見えた・・・頭が奇妙に尖って、仏像みたいだったよ。

大猫はそのまま駐車場を出て、海のほうに走り去って行ったよ。
何がなんだかわからなかったが・・・仕事だから除雪はした。
そんときに大猫の足跡を形態のカメラで写真に撮ったからあとで見せる。
猫の足跡の形にはなってないから、棒とかで作ったって言われるかもしんねえけど。
でな、朝方会社に戻ってブルを車庫に入れてから日誌を書くんだよ。
少し迷ったが倉庫で見たもののことも書いたんだ。
そしたら、次の日は非番なんだが、夕方連絡があって会社に呼び出された。
社長室に顔を出せって言われて、行ってみたら社長が日誌持ってて、
俺が書いたページを破いて丸めたんだよ。それをなんと食っちまった。
でね、「死にたくなければしゃべるな」一言だけ言われて封筒を渡された。
封筒は分厚くて、後でトイレで見たら100万入ってたんだ。



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