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結界 2題

2014.10.17 (Fri)
水回り

今年の4月に引っ越したんです。地方都市に転勤になって、そこの社宅ですね。
それが一軒家だったんです。とは言っても部屋は一階が2つ、二階1つだけでしたが。
会社がそこを借りてるんですが、どうやら家賃は月4万くらいって話でした。
東京では信じられない安さです。
ただ作りが古くって、いろいろ不具合がありそうでした。
荷物の整理が終り息子の学校のことも決まって、2週間が過ぎた頃です。
妻が「台所に入るのが気持ち悪い」って言い出したんです。「どこが?」と聞くと、
「まず、どんなに天気のいい日でも台所の中が暗い。
 西向きの大きな窓があり蛍光灯も2灯なのに、包丁を使う手元が見えにくい」
「いつもじめじめしている。床下に野菜貯蔵庫のようなのがあるが、水が溜まってて、
 いくら拭いても元に戻ってしまう」こんな内容です。

「それに水道の蛇口から水がしたたる。どれだけキツく締めてもダメ」
これはゴムパッキンが古くなってるせいだと思い、
ホームセンターで買った新品にとっかえました。
でも、すぐまた水が落ちてくるようになったんです。
自分でもためしてみました。ぽたぽたって感じじゃなく、
締めた数分後にドボッとコップ半分くらいの水が一度にこぼれてくるんです。
で、また数分後に同じことが・・・
でも、蛇口なんて構造は単純で、そんなふうになるはずはないですよね。
しかたがないから水道屋を呼びました。蛇口ごと取っ替えて、それは収まったんです。
暗くて湿っぽい感じがするのは同じで、
スリッパなしで入ると木の床がじめっとしてて靴下が濡れるんです。
それ以上の実害はなかったんですけどね。

ところが2週間ほどして、今度は雨漏りするようになりました。
それが不思議なことに、雨の降る降らない関係なしになんです。
3日に一ぺんくらい台所の隅の天井が濡れてて、そっからしずくがぽたぽた・・・
屋根か天井裏に、水の溜まってるとこがあるんだろうと思って登ってみたんですが、
それらしいものはなくて、トタン屋根が少し錆びてたのでペンキを塗り直したんですよ。
結果としては雨漏りは止みました。でも今度は流しの水が逆流するようになったんです。
シンクはステンレスでしたが、新しいもので、そこだけ後で作り変えてあるようでした。
もとは石だったんじゃないかと思います。
その排水溝から噴水みたいに汚水が噴き上げるんです。さすがに考えられないでしょ。
でね、この頃、妻が親しくなった近所の人に水回りの異常のことを話したら、
「知り合いにいい人がいるから」って紹介されたみたいなんです。

この話を聞いたときは、工務店の人だとばっかり思ってたんですが、
日曜日に来ていただいたら、和服を着た若い人で驚きました。
その人はあいさつもそこそこに、紙の細長い札を持って台所に入っていきました。
昔の1万円で、聖徳太子が笏を持ってましたでしょ。あんな感じです。
で、あちこち向きを変えながら台所内を歩き回ってました。
一回横切るたびにその紙のしめり具合を調べてるみたいでした。
10分ほどそれを続けてから、
「わかりました。この台所には河童がいます。水をほしがっているんですね。」
こう言ったんです。「河童!?」と思いましたが、その人は真顔で、
「警察に連絡しなければならなくなると思いますので、覚悟をしておいてください」
そう言って、金槌を求めました。で、床板を上げて野菜貯蔵庫を見たんです。
コンクリの底に2cmくらい水が溜まってました。

床に這いつくばり、金槌の上の部分でコンクリの底をドンと突くと、
1回でバラッと崩れ落ちました。自分が懐中電灯で照らしてみたら、頭の皿が見えました。
本当に河童がいたんですよ。・・・作り物であることは一目でわかりました。
紙細工っていうんですか? 和紙を何枚も重ねて貼りつけて作った河童。
素人の工作に見えましたね。元は薄緑に塗ってたんでしょうが、
カビだらけのまだらになってました。その人は手をつこんで河童を取り出しました。
グズグズで指がめり込んで気持ち悪そうでした。
河童は長さ30cmくらい、うつ伏せになって背中の甲羅を上向きにした形です。
その人は両手で端をつかみ、肉饅を割るように河童を引き裂いたんですが、
すごい悪臭がして、中から細い骨がパラパラとこぼれ落ちてきたんですよ。
・・・後でわかったところでは、生まれたての赤ちゃんのものでした。

吹雪

今年の正月のことです。初詣の帰りですね。
といっても元日に行ったわけじゃないんです。正月休みは家族でハワイに行ってましたので、
帰ってきて一息ついた6日の夜です。この時期になると神社もそう混んではいなくて、
郊外にある地元の護国神社だったんですが、1時間かからないでお参りし終えました。
その帰り道、夜の9時過ぎ頃です。自分のノアに乗ってたのは、妻と息子でした。
雪は行きもちらちら降ってたんですが、国道に出たとたん、すごい吹雪になりました。
まったく前が見えない状態です。とりあえずフォグランプをつけて徐行しましたが、
雪がフロントグラスに吹きつけてワイパーが追いつかないんです。
あまり車通りのないところなんで、
除雪した雪が壁になってるぎりぎりまで路肩に寄せて止まりました。
追突が心配でしたが、視界がきかないんじゃどうしようもなかったです。

で、10分ほど休んでいると、やや小降りになってきたような気がしました。
風がおさまって、吹きつける勢いがなくなったのかもしれません。
で、そろそろと出発したんですが、街の灯りがないんです。
道は続いてるんだけど、回りの建物の灯りや街灯も見えなくなっていたんです。
闇の中をヘッドライトだけで照らして走ってるんですよ。
おかしいと思ってナビを見ました・・・画面が真っ黒になって消えてました。
ラジオもつけてみましたが、聞こえてくるのはパチパチいう雑音だけです。
8歳の息子は寝てしまったようでした。
そっから30分ほど走りました。とっくに家に帰り着いてる時間ですよ。
なのに、ただ雪の壁の中に道がまっすぐ続いている。
まっすぐ、って言いましたが、30分走って交差点がないって変でしょう。
それに信号も交通標識さえなかったんです。

「あなた、これどこを走ってるの?」妻が心配そうな声を出しました。
そのとき、誰も乗ってないはずのノアの3列目の座席から声がしたんです。
「こっちを見ないで聞け」・・・去年亡くなった父の声でした。
だいぶ前に母を亡くし、父とは同居してたんですが、
自分と妻が朝に出かけ息子が小学校に行ってる間に、家のトイレの中で倒れたんです。
カルチャー・スクールから帰ってきた妻が発見しました。
しばらく意識はあったみたいで、トイレの壁の親父が倒れてた下の方に
何だかわからない文字が爪で彫られてあるのを後になって見つけました。
そんな後味の悪い最期だったんですよ。その親父の声だったのは間違いないです。
「絶対にこっちを見るな」親父は低く沈んだ声でささやき、続けて、
「迷ったんだろう。こういうことはごく稀にあるようだ。
 前に出張で行ったロシアの山道を走っていたとき自分もなったことがある」

「とにかくお前たち2人で、簡単に頭に思い浮かぶものを強く念じるんだ。
 日本ならコンビニがいいだろう。この道の左側にコンビニがある様子を強く思い浮かべろ」
「父さん、何で後ろ見ちゃいけないの」こう聞いたんですが答えはなし。
助手席の妻の膝ががくがく震えているのがわかりました。
二人で言われたとおりに、コンビニが見えてくる様子を想像しながら走りました。
5分ほど走ったでしょうか、左に念じていたとおりコンビニの青白い灯りが見えてきました。
駐車場に車が何台か停まっていました。
「あっ、ナビがついた」妻が言いました。
「そこで地図を買え。場所を迷った分、俺がこうして出てこられた。
 もう振り向いてもいいぞ。あの世は悪くない。お前達も楽しくやれ」
こう言って親父の声は消え、気配もなくなったんです。

駐車場に車を止めてコンビニに入ったとき、3列目の座席にはだれもいませんでした。
道路地図と暖かい飲み物を買って戻ってきました。
それで、ナビを見て愕然としたんです。隣の県に入っていました。
雪の中の一本道を走った時間はせいぜい1時間もなかったはずなんですが、
車でなら3時間以上かかる場所にいるようなんです。
信じられないので、もう一度コンビニに戻って店員に聞いてみたんです。
不審な顔をされましたが、ナビの通りでした。
それからは・・・無理して帰ろうと思えば帰れたんですが、
近くの市でホテルに一泊して、翌日家に戻ったんです。雪は晴れてましたね。
それから仏壇に酒をあげて、親父の墓参りにも行きましたよ。
何が起きたのかわかりません。場所がおかしくなったから親父が出てこられたのか・・・
まあ、こういう話です。



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コメント
 「吹雪」のお父さん・・・最期からして、何か心得がある人だったのでしょうか。化けて出ている(?)割りにはまるで生きているような口ぶりで、この話における「あの世観」が気になりますね。ともあれ、見るなのタブーが破られなくてよかった。
| 2014.10.21 01:16 | 編集
コメントありがとうございます
確かにお父さんはずごい冷静でしたね
すぐ出てきたのも不思議です
bigbossman | 2014.10.21 22:04 | 編集
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