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異能者たちの系譜3

2014.10.20 (Mon)
錬金術師とアバンチェリエ

今回は基本は錬金術師について書きます。
あまり小難しくならないように気をつけますw
錬金術は、荒川弘氏の漫画『鋼の錬金術師』が有名ですね。
もう一つアバンチェリエという語がくっついています。
こちらのほうは森田崇氏の『怪盗ルパン伝 アバンチュリエ』
という作品で知れ渡りましたが、「山師」と訳せばいいんでしょうか。
「大がかりな詐欺をする者」くらいの意味です。
錬金術は近代の自然科学を生み出したとも言われ、
それは正しいと思いますが、その周辺にたくさんの怪しげな人物(アバンチュリエ)も
産み落としてしまったのです。ただし、自分はこのことを批難しているわけではありません。
なぜなのか理由は後で述べます。

ざっと錬金術の歴史をたどると、
四大元素説など、古代ギリシャに誕生した自然哲学が元になっています。
医学の祖となるべきものもここで生まれましたし、
数学の発展は目をみはるほどでした。豊穣な知の世界があったんです。
一方、パレスチナ周辺においてキリスト教が誕生しました。
西欧社会の歴史は、このキリスト教からの影響抜きに語ることはできません。

ギリシアからローマに覇権が移行し、多神教であったローマにおいては、
キリスト教は世界観を共にしないものとして大きな迫害を受けました。
しかし信徒らの殉教が続きながらもじわじわローマ社会に浸透してゆき、
ついに4世紀に至りローマ帝国においてキリスト教の公認と国教化がなされました。
これは世界史上の大きな出来事ですが、
残念なことにここから、西欧社会で行われる学問は神学に偏ってしまい、
自然哲学は、触れるべきではないものとして長く失われてしまったんですね。
イタリアの記号学者、ウンベルト・エーコが歴史推理小説『薔薇の名前』を書きましたが、
あの中に見るように、古代の知識は禁じられ隠されてしまいました。
知的には暗い時代が続いたんです。

11世紀に入り、キリスト教徒は、
イスラム勢力からの聖地エルサレムの奪還を目的に十字軍を派遣しました。
十字軍遠征の詳細はテーマから外れますのでふれません
(これもオカルト的には極めて興味深いものです)が、
ここで遠征隊はオリエントに受け継がれていた、失われた知識を再発見したのです。
ギリシア・ローマ時代の英知に古代エジプトからの知識も加味され、
独自の進化が遂げられていたんですね。
この再発見をきっかけに、西欧社会で錬金術が流行することになりました。
錬金術の始祖的な人物と考えられたのは、
ヘルメス・トリスメギストスです。

Wikiによれば、
「ギリシア神話のヘルメス神と、エジプト神話のトート神がヘレニズム時代に融合し、
さらにそれらの威光を継ぐ人物としての錬金術師ヘルメスが同一視されて
ヘルメス・トリスメギストスと称されるようになった。
それら3つのヘルメスを合わせた者という意味で「3倍偉大なヘルメス」
「三重に偉大なヘルメス」と訳される。」

となっていますが、実在の人物ではなく、伝説的な神人です。

この名を記した「ヘルメス文書」と呼ばれるものが、
12世紀のヨーロッパに広まりました。
たくさんの好事家が錬金術の研究を始めたのです。
錬金術というと「賢者の石」を用いて、
水銀や銅を黄金に変えるというイメージがありますが、
それはわりと後代の話で、初期の研究は、万物を溶かす液体を発見し、
それを用いて物資からその精髄(エリクシール)を開放することでした。
金を溶かして金のエリクシールを解放し、
それを使用して他の物質を金に変えるというのは副次的な産物で、
最終目的は「生命のエリクシール」を発見し、不老不死を得ることだったのです。

さて話はかわって、錬金術は初期の頃からすでに、
うさんくさいもの、として見られていました。
これは当然と言えば当然で、莫大な研究費を使っても金を造り出すことはできないし、
費用に見合うだけの結果が得られたことはないからです。
昔の人々にもそのくらいの知恵はあります。
(とはいえ、副次的には蒸留技術やフラスコ等の実験器具、硝酸や王水の発見など、
近代化学の発展の土台を築いたのは間違いないでしょう)

14世紀にイングランドの詩人、チョーサーが『カンタベリー物語』を書きました。
この中の一節「僧の従者の話」には、
弟子が主人の錬金術師のイカサマをばらすという形で、
多様な詐欺の手法が紹介されています。
現在では、錬金術は神秘的なものとして語られることが多く、
王侯貴族に取り入って金を巻き上げようとする手段であったことは、
あまり触れられません。

しかし、これは個人的な考えですが、ここで登場するアバンチェリエ(山師)たちが、
現在のオカルトの基礎の一部を築いているのだと思います。
16世紀のパラケルススなど、歴史的には多くの有名な錬金術師がいますが、
詐欺的な面での代表は、サンジェルマン伯爵、カリオストロ伯爵などでしょう。
サンジェルマンは18世紀の人で、錬金術の研究家ですが不死の人として有名です。
語学や音楽など多彩な教養を備えていたとされます。
またカリオストロは、サンジェルマンとほぼ同時代の人で、
自称、医師、錬金術師。マリー・アントワネットを巻き込んだ大規模な詐欺事件、
「首飾り事件」を引き起こしています。この事件後、終身刑となり獄死するのですが、
その後も姿を目撃したという噂が絶えませんでした。

ヨーロッパ社会には極めて堅牢な身分階層があり、
それを庶民が打破してのし上がるのは難しかったのですが、
その一つの突破口が錬金術であったと言えます。
宮廷や金持ち貴族に錬金術師(あるいは医師、占星術師)として雇ってもらい、
サロンで人気を博し、よい生活をする。
雇い主から金を引き出し、成果を出せという矢の催促をごまかすために、
さまざまな詐欺の手口が開発されたのです。

この「詐欺の歴史」とでもいうべきものは、自分の大きな研究テーマの一つです。
これは時代とともに姿を変え、
永久機関等の疑似科学、偽医学などとして現代でも存在します。
(余談ですが、アントニオ猪木氏がプロレス記者を集めて開催した「永久電気」の
発表会では、ネジが一本壊れていたため機械が動かなかった)
しかしはっきり言えば、
教育の機会均等などが保障された現代にこれを行うのは犯罪的です。
王制貴族制の階級社会はそもそもが矛盾をはらんだもので、
下層階級には世にのし上がる手段がなかった
昔の西欧社会とは条件が異なるからです。

最後に、東洋の錬金術に少しだけ触れます。
司馬遷の『史記』(前1世紀)に、秦の始皇帝に仕えた徐福という方士が登場します。
彼は不老不死を研究する初期の道教家で、
さまざまな言を用いて始皇帝をたぶらかしました。
しかしついにはごまかしきれなくなり、蓬莱山に行って不死の薬を入手するとして、
3000人の童男童女と百工(多くの技術者)を従え、五穀の種を持って東方に船出し、
「平原広沢(広い平野と湿地)」を得て、王となり戻らなかったとの記述があります。

このたどり着いた先が日本であるという言い伝えがあり、
日本各地に多くの伝承が残っています。
「史記」には、方士は詐欺師であるとして始皇帝を臣下が諫めたり、
結果を出せなかった方士が逃亡する話も出ています。
不死を求める者と、不可思議の術をもってそれを適えようと権力者にをすり寄る者。
この構図は、はるか古代からあったのです。

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