異能者たちの系譜4

2014.10.23 (Thu)
霊媒とサイエンティスト

前回の錬金術師の項目からの続きのような内容になります。
さて、19世紀に入り「心霊主義」と呼ばれる思潮が流行しました。
これは「Spiritualism」の訳語ではありますが、
現代の日本にある「スピリチュアリズム」
とは少々概念が異なっていることを含んでおいてください。
それから、自分の本意としてはスピリチュアル批判を
意図しているわけではありません。
ですから、霊訓」等はここでは取り上げません。

この思潮が広がった要因として、
キリスト教による心の支配の衰退があげられます。
さらにその大きなきっかけとなるのは、
チャールズ・ダーゥインによる1859年『種の起源』の出版です。
神による世界創造が疑われ、
この手のことを科学の題材として取り上げてもかまわない
とする機運が高まりました。

これ以外にも自然科学の成果が次々に発表され、
それまでキリスト教会の専売特許であった魂や霊の領域が、
研究対象として科学者の俎上にのったのです。
また、1839年フランスの画家ルイ・ジャック・マンデ・ダゲールにより、
「銀板写真法」が開発され、写真術が実用化しましたが、
そのごく初期から、心霊写真と呼ばれる「故人の姿が映った」
とされる一群の写真が出現しました。
タイミング的に、心霊主義と心霊写真は切り離すことができないんですね。

主に英仏に登場した、心霊を科学的に検証しようとした科学者たち、
アルフレッド・ウォレス(ダーウィンと共に進化論を発表)、
レイリー・ストラット(ノーベル物理学賞受賞)
シャルル・リシュ(ノーベル生理学医学賞受賞)
ウィリアム・クルック(タリウム発見と真空放電管発明)・・・などです。
キューリー婦人に降霊会への参加歴があるのも有名な事実です。

彼らの登場により、それまで細々と活動を続けていた霊媒たちに、
一気に陽があたるようになりました。ここはポイントです。
霊からのこの世に対する働きかけが強まった、などの理由ではなく、
まず心霊研究の機運が起こり、
それを機として多くの霊媒が世に現れたのです。
つまりそれがヨーロッパのアバンチュリエたちにとって、
一つの流行(はやり)になったわけです。

ここに登場する霊媒たちですが、
日本で理解されている霊媒とはやや異なります。
日本だと、霊媒と呼ぶよりも巫女、シャーマンと
言ったほうがふさわしいでしょう。
日本の巫女は神懸かりすることが古来より多く、憑依するのは神仏でした。
故人の霊を呼び出す東北のイタコなどは例外的です。
ところがヨーロッパ心霊主義時代の霊媒は、故人の霊、
それも魂の格(霊格)の高い高次の霊の憑依を受けることが多かったのです。

考えてみればこれは当然のことで、
最初にキリスト教の力が弱まったために心霊主義が台頭したと書きましたが、
この流れからすれば、
霊媒に降りるのは神ではなく個人でなくてはならなかったのです。
心霊主義は神中心の精神世界を個人のものへと奪還する運動でもありました。
この思潮がアメリカに渡り、ニューエイジ文化となって、
ジョン・レノンが「Imagine there's no Heaven」と
歌うことにつながっているんですね。

ではここらで、ほんの一例だけですが、有名な霊媒を紹介してみましょう。
フローレンス・クック(1856年 ~1904年)
英国最初の完全物質化霊媒として有名です。
物質化というのは、ケイティ・キングと名乗る美少女の霊を呼び出したことです。
現在残っている画像を見ると、
ケイティ・キングはフローレンス・クック本人とそっくりです。

彼女の降霊会は、多くの観客を集めて行われ、
キングの霊は照明にも耐性を得るようになります。ショー化がなされたわけです。
多くの場合フローレンスは『スピリット・キャビネット』と呼ばれる小部屋に、
手足を縛られた状態でこもり、
10分程度の時間が経過したあとケイティが出現します。
会の最盛期には、キングの霊は観客の間を歩き回り、
隣に腰をかけたりしたそうです。

この調査にあたったのが上記したクルックス卿ですが、
彼は最終的に、フローレンス・クックは本物であるとの結論を出します。
その詳しい根拠はここでは触れませんが、
自分の目からは科学的にけっして納得できるものであるとは思えません。
もちろん当時の世においても、うさんくさいものとして見る人が多かったのです。

この後、フローレンスは船乗りと結婚して霊媒をやめました。(後に復活)
主婦となったフローレンスは後年、「すべてインチキだった」と述懐しています。
まあ、このケースはあくまで一例で、
すべてのこの時代の霊媒がそうであったとまで言うつもりはありません。
しかし、心霊研究に目覚めた科学者たちと、そこに取り入ろうとする霊媒の構図は
見てとれるのではないでしょうか。
クルックス卿はフローレンスとのロマンスもささやかれていました。

こうして霊研究を志した科学者たちは、ある者は霊研究から離れ、
ある者は霊媒を糾弾する側に回り、ある者は深みにはまって溺れました。
アメリカにおいても、かのエジソンが霊界通信機の研究をしていたことは有名ですし、
ニコラ・テスラ(アメリカの19~20世紀の電気技師、発明家。
エジソンとはライバル関係にあったとも言われる)
というオカルト的にも重要な人物もいます。

映画に登場するマッド・サイエンティストという定番キャラは、
(そういえば『バック・トウ・ザ・フューチャー』のじいさんもそうですね)
メアリー・シェリーが創造したフランケンシュタイン博士が
元になっているのでしょうが、
中世以来の錬金術師のイメージ、そして心霊主義時代の科学者たちのイメージも
ないまぜになっているのだと思います。

関連記事 『異能者たちの系譜』

関連記事 『異能者たちの系譜2』

関連記事 『異能者たちの系譜3』

『テスラ・コイル』





関連記事
スポンサーサイト

トラックバックURL
http://scoby.blog.fc2.com/tb.php/554-a09c0ec4
トラックバック
コメント
 少し時代は下りますが、コナン・ドイルの心霊主義への傾倒を思い出しました。テスラもそうでしたが、「偉人の哀しい晩年」で片付けてしまうのも少し惜しい気がするんですよね。
| 2014.10.24 01:57 | 編集
クリスティが好きなのですが、彼女の作品にも頻繁に降霊会が出てきます。
大概の人はいかがわしい、と横目で見ていながら、ハマってしまう人も多くいる、そんな状況が伝わってきます。

今の日本の宗教みたいな感じだったんでしょうか。
| 2014.10.24 13:36 | 編集
まあドイルも、理知的な「ホームズ」物を書いた上で
妖精事件を広めてしまったわけですが
人間の持つ多様性について恰好の研究材料を提供してくれたとも
言えるのではないかと
bigbossman | 2014.10.24 21:19 | 編集
クリスティは「そして誰も・・・」みたいな作品でも
じめっとした感じはあんまりないんですよね
カーとはまた違う趣を感じます

bigbossman | 2014.10.24 21:21 | 編集
管理者にだけ表示を許可する