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木のごときもの

2014.10.26 (Sun)
2年前、中2のときの話です。夏休み中のことでした。
すごく暑い日で、日中は気温が36度を超えたはずです。
私はソフトテニス部に所属していたんですが、その日は弁当を持参の1日練習で
くたくたに疲れていました。5時過ぎに家に戻るとすぐ水風呂に入り、
あとは勉強も何もしないで部屋でエアコン全開にしてぐったりしていたんです。
そしたら起き上がれる気がしなくなり、晩ご飯ができたと呼びに来た母に、
「調子悪いからいらない」と言って、そのまま寝てしまいました。
夢を見たんです。どこだかわからない深い森の中にいました。
涼しいというか寒いくらいでした。目の前に大木がありました。
木の葉は緑に茂ってましたから、夢の中でも夏だったんだろうと思います。
大木は見たこともない太さで、
大人が何人も手をつながなければ周囲を巡れないほどでした。

木の肌はゴツゴツしていて、見上げる高さにしめ縄が張られていました。
私は、その木に神々しいものを感じて前の草地にひざまずいたんです。
そしたら急に風が強くなってきて、あたりの木々がざわざわ揺れ、
私の背中にコツン、コツンと何かがあたりました。
拾い上げてみると褐色の丸い木の実でした。
ザーザーいう風の中に声が聞こえましが、何と言ってるのかわかりませんでした。
「ごんご、ごうんご」こんな感じだったと思います。
そこで目が覚めました。部屋の中が冷え切っていたので、
立ち上がってエアコンを切りました。それからもう一度寝直したんですが、
その後は夢を見た覚えはありません。朝までぐっすり寝てすっかり疲れは取れていました。
夕食を抜いたので、お腹が空いてしかたがなかったです。

それから3日後くらいだったと思います。また夢を見たんです。
今度は前とは少し違っていました。自分が家の屋根くらいの高さのところに浮いていて、
下を見おろしている夢でした。暗い夜の道があり、街灯が光を落としていました。
そこに、角を曲がって何かが出てきたんです。
歩いているんですが、人間でないことはすぐに気づきました。
とてつもなく背が高かったからです。頭の先が私の足下くらいまであったので、
4m以上の高さです。最初は黒いシルエットだったのが、
光があたるところにきて何だかわかりました。
木のようなものだったんです。電信柱よりちょっと太いほどの木に見えるものが、
枝に葉を茂らせた状態で歩いていました。足の部分はよく見えませんでしたが、
2またに分かれていたかもしれません。

宙に浮いた私と、そのすぐ下を歩いている木、変な夢ですよね。
さらに高いところからまた声が聞こえてきました。
前と同じ「ごんご、ごうんご」というのです。
そこで目が覚めました。汗をびっしょりかいていたので、
エアコンを少しだけかけて寝ようとしましたが、なかなか寝つけませんでした。
翌日は土曜で部活が休みだったので10時すぎまで寝ていました。
起きて階下に降りると父が新聞を読んでいたので、夢の話をしたんです。
自分では何気ない話題のつもりでしたが、
父は新聞から顔をあげ「たいへんだ」と大声を出しました。
すごく真剣な顔になっていました。父は私に明日の部活を休むよう連絡しろと言い、
あちこちに電話をかけ始めました。

翌日、朝から家に白い着物を着た女の人がやってきて、私を浴室に連れて行きました。
何が始まるのかと思っていたら、体にバスタオルを巻きつけられ、
ハサミでジョギッと横の髪を切られたんです。
「何するんですか!」叫んで押しのけようとしたら、
ついてきていた父に平手打ちされました。母も何も言いません。
「命にかかわることなんだぞ」そう怒鳴られたんです。
結局、髪は丸坊主に近いまで切られてしまいました。
私が泣いていると「髪はまた生えてくるし、命がなくなるよりいい。
 どうせもう学校には行けないから」父が諭すような声で言ったんです。
ぞれから前に金属の箱を持ってこられ、中には白い粘土のようなのが入っていました。
「目をつぶって、口を閉じて。少し熱いけどガマンしてね」

こう声をかけられ顔を押しつけられたんです。
その後、女の人に太い注射器で腕から血を採られました。
「何が起きているの?説明して」何度も抗議したんですが、
誰も何とも答えてくれませんでした。
部屋に押し込まれ、父がドアの前でイスに座っていて出られませんでした。
私は鏡を見てショックを受け、ベッドの上で泣いていました。
2時間ほどたってドアがノックされ、開けると母と和服の女の人が丸太を持っていました。
「ここを出るから、勉強道具をバッグに入れなさい」母に強い口調で言われ、
もう逆らってもしかたがないと思い、そうしながら見ていると、
1m以上ある丸太は私のベッドに寝かされ、真ん中へんに点滴の袋を結わえられました。
中は赤くなっていて、さっき採られた私の血が入っているんだと思いました。

その後、丸太は寝具をかけられ、布団から出た部分に女の人が肌色の面をかぶせました。
浴室で顔を押しつけられた粘土から作ったものです。
面の周囲には髪の束が散らされました。これも私のです。
それから必要最小限のものだけ持ってみなで父のミニバンに乗りました。
行ったのは隣の県のホテルです。ここで10日ほど暮らしました。
私の側には父か母のどちらかが必ずついていました。
いくら事情を聞いても頑として教えてくれないのは同じでしたが、母が、
「夏休み中にかたがつけば、また今の学校に戻れるかもしれないから」と、
なぐさめるように言いました。
あの女の人がときどき来て、「どんな夢を見たか」と尋ねていきました。
その間ははっきりした夢は見てなかったと思います。

それから女の人と父の姿が見えなくなりました。母がやっと教えてくれたところでは、
沖縄近辺の島に行っているということで、そこは私が2歳まで過ごした場所なんですが、
もちろんそこでの記憶は一切ありません。
あと3日で夏休みが終わるというとき、女の人と父が戻ってきて、
「少しだけ家に戻る」と言われました。
私の髪はやっと少し伸びたところでしたが、「ちょうどいい」と女の人になでられ、
黒の学生ズボンとワイシャツを着せられました。
最後に家で丸太にかぶせたのとよく似た材質の面をつけさせられました。
これも男の子の顔のようで、目の部分に穴が開けられ前が見えるようになっていました。
ミニバンで3時間かけて家に戻ったんですが、
見えるところまできたとき、あっと声をあげてしまいました。

家の壁全体がツタで覆われていたんです。ツタは前から塀に少しあったんですが、
それが塀の上から壁を伝い、2階にある私の部屋にまでのびていたんです。
家の扉もツタがからんでいて、父が鉈で切り払って中に入りました。
窓もほとんどがツタで隠されているため家の中は薄暗く、電気は止められているようでした。
女の人を先頭に私の部屋まで行ったんです。
ドアを開けると、窓が破れていて中にまでツタが侵入していました。
あの丸太の人形はまだ布団の中にありましたが、前とは様子が違っていました。
白い私の顔のお面にたくさんのひっかき傷ができ、何カ所かは深くえぐれていました。
それと丸太にかけてあった布団が大きく膨らんでいたんです。
父が私に小さな刀を渡しました。後でネットで調べたところでは、
懐剣と呼ばれるものみたいでした。

女の人が布団をめくりあげると、ちょうど丸太に私の血の袋をくくりつけたあたりに、
大きなコブができていました。
それは動物にも植物にも見える質感で薄黄色く、どくんどくんと脈打つように動いていました。
「その刀をここに刺しなさい。それですべてが終わるから。学校にも戻れる」
女の人が力づけるような口調で言い、私は思いきって、
刀を一番膨らんだところに上から突き立てたんです。
それは見た目どおり柔らかく、刀は苦もなく沈んでいって袋が破れました。
中からどろりとした液体がこぼれ、強い臭いがしました。
ただそれは悪臭ではなくて、森と木の香りだったんです。
この後、一つだけ不可解な行動をさせられました。
窓の破れ目から面をつけたままで顔を出しなさいと言われたんです。

これで話はほとんど終わりです。結局家は引っ越さなくてはなりませんでしたが、
同じ市のマンションから学校に通うことはできたんです。
しばらくは夢にも注意していましたが、あの森や木が出てくることはありません。
両親はどうしても詳しい事情は教えてくれなかったので色々と自分で調べました。
特に自分が幼児期に住んでいた島のことです。
ほとんどの部分が森林に覆われていて、現在は住んでいる人は3桁ということでした。
それ以外には森の中に神社があることや、島の小中学校のこともわかりました。
でも、それだけです。あの奇妙な一連の体験につながることはまったくわかっていません。
父は「俺が死ぬときには全部話すから」と笑っていました。
それから、これは関係ないと思うんですが、
つい最近、島で中学生の男の子が亡くなったという記事を見つけました。
森の中で倒れているのを発見され、心臓マヒということでした。



*発想を、坂口安吾『樹のごときもの歩く(復員殺人事件)』より得ました。

『樹人』




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コメント
 ここまで「分かりやすい」話を書かれるのはちょっと珍しい気がしました。その、情報が出揃っているというか・・・
 異類婚ものは、男の側が異類だとこういう理不尽で強引なものが多くて、逆に女の側が異類だとロマンスの要素が大きくなりますね。
| 2014.10.27 22:29 | 編集
コメントありがとうございます
不条理なものだけを並べてると
わけわかんなくて見なくなる人がいるかと思って
わけわかる話も適宜入れています
いずれにしても毎回違う雰囲気で書きたいと思ってます
bigbossman | 2014.10.27 22:35 | 編集
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