FC2ブログ

Body and Soul

2014.11.14 (Fri)
じゃあ話を始めます。つい最近のことです。ここ3週間ほどの出来事。
うちの会社で、受付にアンドロイドを入れたんです。
いや、うちの会社で開発したものではありません。
うちはWEBシステム設備とソフト開発が業務内容で、機械工学関係は畑違いもいいとこです。
でも、たまにそうお考えになるお客さんもいるんですよね。
アンドロイドが出てくるソフトなんかも作ってますから。
これはリースです。リース料は月200万以上だったはずですから、
人間の女の子一人雇うよりはるかに金はかかりました。
まあそれだけうちもね、業績がよくなってきたってことです。
それに宣伝も兼ねているわけですし。
実際、反響は大きかったですよ。同じビルの他の会社の方もたくさん見に来ました。

アンドロイドは、立って歩いたりお茶を運んだりはしません。
そういうのは今のところロボットの仕事で、
うちのは受付のイスに座ったきり大きく動いたりはしなかったんです。
両手は少し動かしますけどね。それよりも売りは音声認識と人工知能です。
会社に来られたお客様がアンドロイド・・・
「北村冴子」という名前を社長がつけました。由来はわかりませんね。
冴子嬢ということで話を進めます。
冴子嬢の売りは、まず来られたお客様が話しかけた言葉を認識するのと、
人工知能がその内容に応じて適切な受け答えをすることです。
それはもちろん、普通受付で言われないような言葉をかけられたら対応できません。
ごくせまい範囲でしか応対はできないんです。

うちに納入される前に宣伝部のほうから開発先に人が行って、
うちの社員名やら部署の名前なんかいろいろインプットしたんですよ。
それで社員の呼び出しや、案内なんかをやることになってました。
先ほど言ったように、人寄せと話題づくりがメインでしたが、
そこそこ実用にもなったんです。あともう一つの売りは顔の表情です。
これはとてもよくできていましてね、
瞬きはもちろん、眼球や顔の筋肉が動いて表情を変えられました。
顔は・・・開発先の話だと特定のモデルはないということでしたね。
年齢設定は18歳で、多くの人が親しみやすい顔を研究して造ったんだそうです。
冴子嬢の勤務時間は、朝の9時から午後5時までです。
それ以降は電源を落としてビニールをかけ、会社の倉庫のロッカーにしまってました。
買い取りだと4000万以上ということでしたので大事にされてたんです。

で、冴子嬢が来てから、その倉庫に幽霊?が出るようになりました。
倉庫といっても貸しビルのワンフロアにある物置みたいなとこです。
広さは20畳くらいで、廃棄予定のOA機器からレクリエーション用品まで、
何でもつっこんでました。・・・うちはこういう業務だから、残業がすごく多いんです。
ビル自体は24時間守衛が詰めてまして、
早朝でも深夜でも、いつでも来たり帰ったりできるんですよ。
でね、最初は女子社員でした。夕方6時過ぎですね。
残業する社員用にカップラーメンを倉庫に取りに行ったんです。
そのときには冴子嬢は専用ロッカーに格納されてたんですが、倉庫に入ったとたん、
そのロッカーの前に、しゃがんだ人がいるのが目に入りました。
ぼんやりとしていて、かろうじて人とわかるくらいのものだったそうです。

それは人が入ってきたのに気づいたようにスッと立ち上がり、
振り向くような動きをして消えたんです。女子社員は驚いて逃げ出し、
課に戻って話をしたので、男子社員数人で見に行ったが何もなかったという顛末でした。
そのときは気のせい、見間違い、ということで片づいたんですが、
その日から3日おきくらいに目撃例が続いたんです。
すべて時間は午後6時以降で、場所は冴子嬢のロッカーの前、これは決まっていました。
見たのはほとんどうちの社員でしたが、社外から来た事務機屋さんも一人見てるんですよ。
ああ、見たのはすべて倉庫に一人で入ったときです。
複数が同時に目撃したという例はありませんでした。
もちろん社長に報告されて、倉庫内は隅々まで調べたんですが、
おかしなものは見つからなかったです。

それとですね、目撃した内容がだんだん変化してきたんですよ。
ほら、最初の女子社員が見たのはぼんやりした影みたいなのだったのが、
だんだんに姿がはっきりしてきたんですよ。
まず着ている服がわかったんですが、制服のような地味な紺のベストとスカート・・・
うちは制服なんてないんですが、これって冴子嬢が着ているのと同じなんですよ。
あと、幽霊?の動作はいつも同じで、冴子嬢のロッカーの前にしゃがんでいたのが、
人が入ると起ち上がり、振り向いて消える、その顔の表情もわかるようになりました。
もうおわかりでしょう。冴子嬢と同じ顔をしていたんですよ。
ね、奇妙な話でしょう。アンドロイドの幽霊・・・
というか分身のようなものなんでしょうか?
で、もちろん、冴子嬢の開発先にも問い合わせたんですが一笑にふされました。

どこでもそんな話は出ていません、ってね。
そもそも冴子嬢は座ったきりで、車輪つきのイスもセットになってるんです。
立ち上がることも自分で振り向くこともできません。
それでもいつもメンテナンスにくる方が詳しく調べてくれましたが、
もちろん異常は見つかりませんでした。
で、3週間目に入って幽霊?を見たという人が5人を超えたんです。
この頃には誰も嘘だと言いませんでしたし、倉庫に入るのを怖がる人も出てきました。
冴子嬢の存在と何か関係があるのは間違いないと思われ、
会社の上の方ではリースを打ち切ろうかという話も出てたみたいです。
でも、実害があったわけではないし、お客様には冴子嬢の評判は上々で、
彼女を見るために、メールですむ話なのにわざわざ来社される人もいたんです。

社長の一存でリースは続けられることになりました。
で、一昨日の話です。午後4時近くになり、そろそろ冴子嬢の電源を落として、
しまおうかとした頃だそうです。何も話しかけたわけじゃないのに、
冴子嬢が突然「怖い、怖い、コロサレル、コロサレル」とおかしな発音で話し始めました。
これは絶対ありえないことで、そもそもそんな言葉はインプットされてません。
だからもし聞いたやつの話が本当だとしたら、
冴子嬢が音声機能を自分で改変して話したってことになります。
でなきゃ何者かがとり憑いてしゃべっているか・・・こっちのほうがありえないですか。
ああ、これは私が聞いたわけじゃなく、2人の担当者の話をそのまましてるんです。
とにかく電源を切ったら静かになりました。そのままイスごと動かして受付デスクの
前に出し、倉庫まで押して行ったんです。受付から倉庫までは外の廊下を通って行くんです。

倉庫に入ってロッカーの前に来ました。これは普通のロッカー4つ分くらいあって、
表に「冴子の部屋」という木札が下がってました。社長が作ったもので悪趣味というか・・・
中には服や髪を掃除するブラシ類、大きなビニール袋なんかが入ってました。
で、開けようとした瞬間、ロッカーの戸がドカーンと中から勢いよく開いたんです。
女が出てきました。茶色の髪、紺の服、顔も冴子嬢そのものだったそうです。
見たうちの一人は、冴子嬢よりも人間に近かったとも言ってましたけどね。
そのとき、電源の入ってない冴子嬢が「怖い、怖い、コロサレル」と言ったんだそうです。
呆然としている2人の前で、ロッカーから出てきた女は両手で冴子嬢の頭をつかみ、
前後左右にゆすぶり始めました。
「怖い、コロサレル、怖い、怖い、タマシイのあるものは怖い、怖いィィィィィ」
音量最大でこう叫び続ける冴子嬢の頭がもぎ取られ、コンクリの床に落ちました。

カシャーンという音で2人が我に返ると、ロッカーから出てきた女の姿はどこにもなく、
ただ眼球がこぼれ,ひび割れて無残な姿になった冴子嬢があるばかりでした。
まあこういう顛末なんです。・・・ロッカーの中には人が潜んでたような様子はなかったそうです。
どういうことなんでしょうか?冴子嬢の生霊が自分で自分を壊した??
それとも実は冴子嬢にはモデルがいて、その人の幽霊なんでしょうか?
社内ではいろいろな意見が出てましたが、私にはさっぱりわからないです。
あと冴子嬢のほうですが、幸いにしてAI部分は壊れていなかったので、
修理代はそれほど高くないそうでした。それでも1千万近くかかるようです。
で、昨日社長が話してましたけど、冴子嬢が治ったらリース契約を再開するようなんです。
何を考えてるんでしょうねえ。またこんな怖いことが起きるかもしれないのに・・・
どうしたって何か裏の事情があるかと勘ぐってしまいますよねえ。





関連記事
スポンサーサイト




トラックバックURL
http://scoby.blog.fc2.com/tb.php/575-8142ce66
トラックバック
コメント
管理者にだけ表示を許可する