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駅 3題

2014.11.18 (Tue)
象虫

ある私鉄の・・・「いしさき駅」って名前にしておくか。
ホームで終電を待ってたんだ。いや、仕事で遅くなってね。
そこは会社からの最寄り駅で毎日利用してるんだけど、
それまでおかしなことは一度もなかったな。
会社の近辺は飲み屋もほとんどないから、電車を待ってる人もまばらだった。
でね、ベンチに年配の立派なジイサンが座ってたんだ。
立派というのは、黒の紋付袴姿で、長くて白いあごひげを蓄えてたからそう言った。
年齢は80を過ぎていたと思うな。
ジイサンは壺を抱えてて、俺は詳しくないからわからんけど、
青磁っていうのかな、蓋付きの高価そうなもんだった。

ジイサンは座ったまま羽織の下にその30cmほどの壺を抱えて、
ときどき蓋をずらして中を見ては、ニヤニヤしたり、声を出して笑ったりしてた。
さすがに何が入ってるか気になるだろ。
よっぽど後ろに行ってのぞき込もうと思ったが、まあやめておいた。失礼だしな。
で、終電がホームに入るってアナウンスがあったとき、
ジイサンが立ち上がった拍子に、壺が傾いて蓋がチャリンと音を立て床に落ちた。
そしたら壺から何かが飛び出したんだ。
真っ黒いカブトムシより少し大きいくらいのもんで、
鼻先が象のように長くなってるように見えた。
それは素早い動きで走り、線路に落ちたんだよ。

ジイサンはすごい慌てた表情をして後を追ったが、年のせいでよたよたしててね、
追いつけなかった。というかあの素早さじゃ若いやつでも無理だろ。
ジイサンがホームの先端に出たとき電車が走り込んできて、
接触しそうになったんだ。
そしたらだよ。ホームの下から真っ黒な象の鼻、
あれがにゅんと出て、ジイサンを後ろにはじき飛ばしたんだよ。
見たのは俺だけじゃないかな。
他の人は気がついた様子はなかった。ジイサンは尻餅をついたが、
立ち上がって壺を抱え、しょぼんとした様子で、
電車には乗らず地下のほうに降りてったな。

象電車

えー私鉄の駅にいたんです。「いしさき駅」という名前にしておきます。
残業の帰り終電を待ってまして、その日はすごい疲れててベンチに座ってたんです。
そこの終電は一本だけ遅い時間で、待ってる間についうとうとしてしまいました。
それで、ドカンドカンという音と地響きがして目が覚めました。
・・・何を見たと思いますか。たぶん言っても信じないと思いますが、
本当に見たんですよ。疲れてましたし、寝起きでしたけど酒も薬もやってません。
ああ、はいはい、今しゃべります。
象のようなもの・・・ですね。大きさは動物園で見た象ほどあるんですが、
目がないし、あの特徴的な耳もない。ただね、長い鼻だけが前面に突き出されて、
うねうねと動いてたんですよ。色は真っ黒で・・・4頭でした。

それが線路に2列に並んでね、太い綱で電車を引いてたんです。
ね、信じられないでしょう。見た自分がそうでしたからね。
引かれていた列車は1両だけで、照明がついておらず中は真っ暗でした。
それで、ホームに人が一列に並んでたんです。5人だったと思います。
みなサラリーマン風でスーツ着てましたが、
どの人も後ろに両手を回して肩が突っ張ってたんです。・・・手錠ですよ。
手錠をかけられてたんです。それだけじゃなく、
顔にぴちぴちのゴムマスクをかぶせられてました。
目も口もないやつです。5人の後ろにすごく体格のいい若い男が1人いて、
そいつは先端がチカチカ光る棒のようなものを持ってました。

で、手錠のサラリーマンらをその棒でつつくと、
そのたびにつつかれたやつが小さく飛び上がるんです。
マスクがなけりゃ悲鳴をあげてたんじゃないかな。
やがて電車のドアが開いて、5人とも乗り込んでいきました。
象に似た奇妙な生き物は4頭とも、あやつる人もいないのにまた静かに動き出して、
ゆっくりゆっくり遠ざかっていったんです。
私ですか?ベンチに座ったまま呆然として見てました。声も出なかったですよ。
そしたらね、いきなり首筋に強い衝撃を感じて、そっから記憶がないんです。
気がつくと終電に乗ってました。いや、普通の電車です。
自分の他にぱらぱらと乗客もいましたしね。

で・・・夢を見たんだと思ったんです。半分寝たまま電車に乗って、
バカげた夢を見ていたんだろうと思いました。
あんなおかしな生き物がいるはずはないし、もしいたとしても、
あのスピードで歩いてたんじゃ、後ろの電車がつっかえてしまうじゃないですか。
・・・でもね、首筋がひりひりしたんです。火傷をしたような痛み。
それで降りた駅のトイレに入って鏡を見たんですよ。
そしたら、右の首の後ろの皮が直径3cmくらいに剥けてたんですよ。
家でずっと冷やして次の日医者に行ったら、やはり火傷。
それも電気的なものじゃないかって言われたんです。スタンガンみたいなやつですね。
どう思われますか、私が見たことは実際にあったんでしょうか?

杖の人

私が普段利用している駅での話です。場所は言わないほうがいいんでしたね。
そうですね、じゃあ仮に「いしさき駅」という名前にしておきましょうか。
え? なんで「いしざき」じゃなく「いしさき」って言ったかって?
さあ・・・何でですかね。本当の駅の名前は、これとはまったく似てないです。
うーん、今とっさに頭に浮かんだとしか言いようがありませんね。
これって何か意味があるんでしょうか? ああそうですか、じゃ話を進めます。
終電を待ってたんです。ホームには人はまばらでしたよ。
ぼーっと立っていると、地下街のほうから階段を上がって人が来るのが見えました。
それが、ものすごく背の高い人だったんです。
身長は190を超えていたんじゃないかな。

見てのとおり、私も180近くありますが、それよりずっと高かったです。
鶴のように痩せている、という言葉がありますが、
まさにそんな感じで、長い足がものすごく細いんです。
髪は白髪でオールバックになでつけてました。
しわはほとんどなかったんですが、60は過ぎてると思いました。
それと大きな黒のサングラス、あと白い杖を持ってましたから、
目の不自由な方かもしれません。でも足下に不安そうな様子はなく、
すたすた歩いてましたね。あと片手に中国風の壺を抱え持ってて、
高価そうな感じだったので、落としたら大変だろうなと心配になりました。
いや、それまで一度も見かけたことはありませんよ。

でね、その人は私の座ってる隣のベンチに腰掛けると、
ポケットから何かを取り出しました。
銀色の5cmほどの筒です。笛だと思いました。
何でそう思ったかって言うと、その人は頬を膨らませて、
思いっきりそれを吹いたんです。ところが音がしなかったんですよ。
ほら、人間に聞こえない音の波長ってあるじゃないですか。
特定の動物にしか聞こえない笛、あれじゃないかと思いました。
その人はひとしきり笛を吹くと、壺を下に置いて蓋を開けたんです。
・・・1分くらいして、もうすぐ終電が来るというとき、
何か小さなものが線路から駆け上がってしました。

動きが素早くて数は数えられませんでしたが、5匹前後でした。
最初はネズミだと思ったんですが、近くに来たのを見ると実に奇妙な生き物で、
カブトムシのような黒色で4本足。頭の前に象の鼻のようなのが長くのびていました。
で、そいつらは次々にその人の足下に寄ってきて、壺の中に飛び込んだんです。
その人はすぐ蓋をして、「収穫、収穫」と相好をくずして言いました。
でね、あまりに不可解なことだったんで声をかけてみたんです。
「今の何ですか?不思議な生き物が壺に入ったようですが?」って。
そしたらその人はサングラスの顔をこっちに向けて、「放牧ですよ」と答えました。
それから続けて、「まだ小さいですが、もっと大きくなります、象くらいに。
 あなたもどうですか?」って言ったんです。

何が「どうですか」なのかわかりませんでしたが、何となく気味が悪く感じました。
そのときちょうど終電がホームに入ってきて、
その人は立ち上がり、電車には乗らずに地下街のほうへ戻って行ったんです。
でもね、考えてみると、その時間だと地下街はとうに閉まってるはずなんです。
というかいつもは階段の入り口自体シャッターが下りてたような。
終電に乗って帰りましたが、その後はおかしなことはなかったですよ。
これ・・・どういうことかわかりますか?
だいたいわかったって?食事をしながら教えてくれる・・・
そうですか、ずっと気になってたんで来たかいがありました。
え、鼻のあたりがムズムズするようなことはないかって? あります、その日からずっと。
どうしてわかるんですか? このことと何か関係が・・・








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