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トイレ 2題

2014.11.23 (Sun)
図書館で

市の緊急雇用対策の一環で、公共施設のトイレ、その他の清掃をしています。
週に5日、3カ所を回るんですが、そのうちの市営図書館であったことです。
用具や洗剤は市から配布されたものを自分の軽自動車に積んで持っていくんです。
そこの図書館は古くて、トイレが1階2階に男女各一カ所、
それから職員専用のものがありました。
最初にご挨拶をして、簡単な説明を受けたとき、
2階の女子トイレの個室の最奥が壊れて使用禁止になっているため、
清掃の必要はないと言われました。
作業は午前中に済ませてしまうんですが、1階を終え、2階のトイレに回ってみると、
確かに女子用の8つある個室の最奥に使用禁止の紙が貼られていました。
試しにドアを引いてみましたが、未使用の青色の札が出ているのに開きませんでした。

特に気に留めることもなかったし、
公共施設なのでそのうち修理されるだろうと思ってたんです。
ところが始めて2週間たっても、そこは相変わらず使用禁止のままでした。
それで担当の方に質問しようと思っていた矢先のことです。
そこの隣の個室を清掃していたんです。汚い話でもうしわけありません。
便器はウオシュレット式で、ほとんど汚れてはいません。
清掃を済ませ、汚物入れの中身を改修していると、
左隣の使用禁止の個室から物音が聞こえてきました。
くぐもった音で、最初は水が配管でボコボコ鳴っているんだと思ったんです。
ところがだんだん、人が喉の奥から発している声のように聞こえてきました。
「ボクボ ボクボドド ボクボド」こんな感じです。

でも、人がいるはずはない・・・その日も使用禁止の紙はそのままでしたし、
個室の戸は開けた状態で清掃しているので、人が入ってくれば必ずわかります。
なんだか気味悪くなってきました。
そのとき、トトンとトイレの板壁をこぶしの先で叩くような音が隣から聞こえました。
最初は1mほどの高さ、すぐ2回目はそれより10cmほど上、
3回目はもっと上。「誰かいるんですか?」そう言いながら、
清掃中の個室の外に出ました。すると、使用禁止の個室の上のところ、
天井との境目が開いた構造になってるんですが、そこに髪の毛が飛び出ていたんです。
壁の上端は私の背よりもちろんずっと高くて、2m近いでしょうか、
そこから黒い髪の毛の先端部分が逆立ったように上を向いて出ていたんです。
長い髪の毛の人か、すごく身長の高い人が中にいて、なぜか髪が逆立ち、
毛先が天井を向いて揺れている・・・でも、そんなはずはありません。

「ボグボッ」ひときわ大きな声が中から聞こえ、ドーンとドアが中から叩かれました。
足で蹴ったのかもしれません、板がたわみましたから。
私はモップを投げ捨てて、一目散に逃げ出しました。
そのまま担当者のいる事務室に行って、今あったことを訴えたんです。
設備化の担当者は初老の優しい方でしたが、
すぐ出てきて「・・・ああ、そうですか、今日はこのままお帰りになってけっこうです。
 次回まで必ず直しておきます」こうとだけおっしゃったんです。
質問できそうな雰囲気じゃありませんでした。
事情がわからないまま、その日は次の場所にまわったんです。
その後は特に変わったこともなく、2時過ぎに家に戻りました。
3時を回った頃、小学校2年生の娘が学校から戻ってきました。

家に入るなり「お母さん頭がいたい」と言ったので、額を触ると熱があるようでした。
ああ大変、病院につれていかなくちゃと思いました。
娘は扁桃腺が腫れて高熱を出すことがたまにあるんです。
フラリと娘が倒れ、あわてて体を支えたとき、短くしてある娘の髪の毛がすべて逆立ち、
白目をむき出しながら「ボクボォー」って言ったんです・・・
娘は2日間入院しました。扁桃腺に異常はなく、風邪の症状もない。
原因は病院の先生もつかみかねているようでした。
図書館は、2階の女子トイレ全部が使用禁止になっていて、
清掃の必要はありませんでした。
そのまま1ヶ月ほどが過ぎて使えるようになったときには、
最奥のトイレそのものがなくなっていました。コンクリの柱で埋められてたんです。

列車で

家族旅行してた。子どものときのことだから記憶が多少あいまいだけど、
両親と弟で電車に乗ってた。小学校5年のときだったはず。
たしか箱根の山の中の温泉に行って、
遊園地にも行った気がするんだけど、前後のことはあんまり覚えてない。
それは列車の中での体験があまり強烈で印象に残っているせいもあるかもしれない。
俺はお茶が好きな子どもでね、その頃ジュース類は好まず、
母親がいれたお茶の水筒を持って始終飲んでたようだ。
だからトイレも近かった。その列車の中でもトイレに行ったんだよ。
時間は・・・なんとなく車窓の外が暗かった気がするから、
旅行の帰りだったんじゃないかな。ローカル線だったからけっこう揺れて、
左右の座席につかまりながらトイレまで歩いた。

あの客室と客室の間にあるトイレだよ。使用中ではなかったから、
引き戸を開けて仰天した。中に何がいたか想像がつくかい?
まあ無理だよな・・・イノシシだよ。でっかいイノシシが和式の便座の上に
覆い被さるようにうつ伏せになってたんだ。ピクリとも動かなかったから、死んでたと思う。
その姿は目に焼きついてる、絶対見間違いとかじゃない。
だいたい何をイノシシと間違えるってんだよ。
肩から背中にかけて毛が濡れて汚れてた。黒く見えたけど、血じゃなかったかと思う。
俺はのけぞって後ろに下がり、そのまま引き戸を閉めたんだ。
走って父親を呼びに行った。で、ワンカップ飲んでた父親の手を引いてトイレの戸を開け、
俺はさらに愕然とした。何もなかったんだよ。
父親は「ほーら、イノシシなんいるわけない」とか言って戻ってた。

トイレの金属の床は汚れもなかったし、毛なんかも落ちてなかった。
そのときは、見たのは一瞬だったから、やっぱりマボロシだったかもしれないって、
自信がなくなったよ。で、用を足して座席に戻った。
山の中を走ってたのが、ちらほら町の明かりが見えてきたときだったと思う。
急にギーンという音とともに列車が減速した。
そして駅でないところで止まったんだ。
父親が「何かあったのかな?」みたいなことを言った。
しばらくして「野生動物との接触があり、点検のため緊急停止しました」
このとおりではなかったと思うけど、車内アナウンスがあったんだ。
それを聞いて、さっのイノシシと関係があるんじゃないかとすぐに思った。
でも、轢かれたイノシシがトイレにいるわけはないし、でも傷ついてたし・・・

列車は30分近くそこに止まってて、また出発した。
こういう記憶なんだ。でね、実はまだ変なことがあるんだよ。この旅行から帰ってから、
夕食のときに、トイレの中のイノシシと事故の話を蒸し返したんだ。
そしたら父親が「うん、お前がトイレでイノシシを見たって騒いでたのは覚えてる。
 でも事故は野生動物とは関係なかったぞ。そんなアナウンスはなかったし、
 どうやら飛び込みだったみたいだ」こう言って、旅行帰りの翌日の新聞を持ってきた。
「ほら、これのことじゃないか」
新聞には確かにその日の人身事故のことが出てて、俺らが乗った列車だった。
「気の毒に、女子学生だったみたいだぞ」父親が言った。な、わけがわからないだろ。
イノシシを見たのも、野生動物とぶつかったってアナウンスも、
どっちも俺の記憶違いってことで片づくのかもしれないけど、
どっか釈然としないんだよな。






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