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グリーンピーポー

2014.11.24 (Mon)
土建作業員やってるんだよ。まあドカタってことだ。
謝礼もらえるって聞いたから話をしにきたよ。
あんなあ「イエローピーポー」ってのを知ってるか? こりゃ都市伝説っていうんかな。
頭のおかしいやつがいて、そいつの家族が困ってる。暴れるとかでだろう。
そういう患者を強制的に収容しにくるのがイエローピーポー。
救急車なんだが、色が白じゃなくて黄色い。それが家の前まで来て、
白衣を着た屈強なやつらが出てきて患者を無理矢理に乗せて病院に連れてっちまう。
こういうのを昔、本で読んだ。もちろん伝説っていうくらいだから、
本当じゃねえんだろ。実際、黄色い救急車なんて見たことがあるってやつはいねえし。
ああいや、ありきたりの都市伝説を語りに来たわけじゃねえ。
そんなんで金もらおうとは思ってねえよ。ただ、それに似た話なんだ。

ええ、先週の金曜だな。明日は現場が休みってことで、仲間の部屋でしたたか飲んだ。
焼酎だよ。最初はお湯割りにしてたが、途中からストレートで。
俺の悪い癖でね、飲むときはべろんべろんになるまで飲んじまうんだ。
だからよ、その日も途中から記憶がねえのよ。
後で仲間に聞いたら、泊まっていけってのを断ってチャリで帰ったらしい。
そのあたりは全く覚えてねえんだけどな。仲間の家は駅裏で、城址公園の近くなんだ。
こんなこと言えば場所がわかっちまうかな。ま、別にかまうことはないか。
城そのものはとうにないんだが石垣が残ってて、ぐるり半周とりまいてる。
そのお堀の脇をチャリで帰ってたと思うんだ、ほとんど意識がないまま。
で、お堀には鉄の手すりがあるんだが、それを越えて水に落っこっちまった。
チャリは道に残したまま俺だけ。

11月だからな。冷たさで一瞬で正気に戻った。戻ったが立てない。
そこはお堀の端のまだ浅い部分で、深さは50cmもなかったはずだが、
酔ってて立つことができなかったんだ。水も飲んでたし頭が痛かった。
落ちたときにぶつけたんだろう。
顔が出てて息はつけたから、ケツをずって動いてお堀の淵のコンクリにもたれかかった。
そっから手すりの下側を握って立ち上がろうとしたんだ。
でも下がぬるぬるして上手くいかない。時間は夜中の2時過ぎだと思う。
そこは石垣の裏っ側のほうで、そんな時間だから通行人もいねえ。
それでも冷たくてしかたねえから何とか立ち上がったんだよ。
チャリが道に倒れているのが見えた。道まで登ろうとしたが無理だった。
俺のはまってる水の中から手すりの最上部まで2m近くあるんだ。

困り果てていたら、車のエンジン音がした。
見上げると、でかい車が近づいてきたみたいだった。
救急車に見えたが、灯火をつけてねえし、サイレンも鳴らしてねえ。
それとよ、色が薄緑に見えたんだ。これは街灯の光があたってたせいかもしれねえが。
救急車はそうだなあ、30mほど離れた向こうで、
お堀の手すりすれすれに車体を寄せて停まったようだった。
「ああ、ありがてえ」と思ったよ。
いや、そんときは何故か俺を助けに来てくれたんだと考えたんだ。まだ酔ってたんだな。
ドアが開いた音がして、ひと言ふた言、言葉をかわすのが聞こえた。
それで「助けてくれ」と叫んだつもりだったが声が出ねえ。
堀に落ちたときに泥を飲んでたし、酒盛りでタバコをばんばん吸ってたし、
そのどっちかが原因だと思うんだがな。

向こうで白衣のやつが2人、手すりから身を乗り出して何か話し出した。
それがよ、2人ともガスマスクみたいなのをつけてたんだ。それとレスラーみてえな体格。
ぎょっとしたよ。2人は俺のいるほうには顔を向けず水面を見つめていたが、
なんとも異様な雰囲気で、手すりを叩いて音を出すのもやめた。
何をするのかと思って見てたら、手すりの一番下にロープが結わえてあったのをほどいて、
いったん後ろに下がってからそれを引っぱり始めたようだった。
すると10mほど向こうのお堀の水面でしぶきが上がった。
ロープの先が網になってたんだな。網はどんどん引っぱられて・・・
そしたら中で何かでかいもんが動いてたんだよ。
いや、はっきり見えたわけじゃない。月明かりと遠くの街灯の光だけだから。
緑だと思った。全身が濃い緑色の人型をしたもんが網の中にいたんだ。

それがあっという間に引きずられて手すりの下まできた。
2人のガスマスクも手すりまで近づいてて、息を合わせて網を持ち上げたんだよ。
そんとき中のやつが声をあげた。「クゥェーン」っていう子犬みてえな声。
膝を抱えるようにして網に入ったまま持ち上がっていったのは、
緑色の裸の子どもみたいなやつだった。それを2人はすげえ力で手すりを越えさせたんだ。
「クエ、クェエエ」って悲鳴が聞こえてたが、バタンと音がして、
その救急車はやっぱりサイレンも灯火もないまま走り去っていったんだ。
で、俺はといえば、その間ずっと息を潜めてたせいか体力が回復して、
どうにかこうにか道まで這い上がることができた。
濡れて寒かったしあちこち体が痛かったが、チャリに乗って部屋まで帰ったんだよ。
こんな話なんだが、俺が見たのはなんだったんだろう? 河童か? まさかなあ・・・








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