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雀荘 2題

2014.11.25 (Tue)
盲牌

若い頃のことなんですが、雀荘のメンバーをしてたことがあって、
そんときの話です。みなさん麻雀わかる方どれくらいおられます?
ああ、けっこう・・・じゃあ大丈夫ですね。
地方の大学に在学してたとき麻雀にはまって、
雀荘に入り浸りになっちゃったんです。
その結果、単位が取れず大学に6年もいることになりました。
そんなだから就職もなくて、
とりあえず行きつけの雀荘のメンバーになったんです。
このメンバーというのは従業員のことですが、普通の仕事と違うのは、
「代走、本走」ってのがあるんです。そこの雀荘は地方だから貸し卓・・・
4人セットで来て麻雀をするお客さんも多かったんですが、フリーがメインでした。

フリーってのは、麻雀したくなった人が1人でふらっと店に来て、
そういうお客さんが4人そろったら打つわけです。
ところが3人とかしか集まらないときもあって、
そのときは卓にメンバーが加わって打ちます。それが本走です。
代走ってのは、トイレに行くとかのお客さんの代わりに短時間入るだけ。
本走は技術が必要で、麻雀って賭けてやってますでしょう。
で、もし自分が負けた場合、支払いは自腹になるんです。
店が出してくれるわけじゃない。
それと場代、半荘1回いくらっていう料金ですが、これもあたり前にとられるんです。
だから麻雀がヘタだと、給料以上に負けが込んで1ヶ月ただ働きになる上、
借金までできてしまうこともあるんですよ。そんなだから、あんまり長続きしません。

8割くらいのやつが続けられなくなって辞めちゃいますね。それと客商売なんで、
お客さんに気持ちよく打ってもらうことも考えなくちゃなりません。
ただ勝つだけでもダメで、なかなか難しいんです。ああすみません、本題に入ります。
店の支配人は大学の先輩で学生時代から顔見知りでした。
もちろんオーナーじゃなく雇われです。
ある日、10時の営業開始時間近くになっても支配人が店に来なかったんです。
当時は携帯も普及してなくて、固定電話にかけたら不在。
どうしようか迷ったんですが、俺の一存で店を始めちゃったんです。
お客さんも来て待ってましたし。
お客さん2人と俺ともう1人のメンバーで打ち始めました。
でね、最初の半荘で、向かいに座ってるお客さんがツモったときです。

盲牌する人だったんですが・・・ああ、盲牌ってのは麻雀牌に彫られてる図柄を、
目で見ずに親指で触ってわかることです。そのとき「あ!」って顔をして、
そしたら牌を持ってる指の間から、卓にタタタッと赤い液体がこぼれたんです。
血に見えましたね。「なんだあ?」お客さんが驚いて牌をフェルトに落とし、
牌の腹が上を向いたんですが、これも確かに見たんです。
目玉がついてました。白いプラスチックに小さな血まみれの目玉が・・・
「えーっ!!」と言って4人とも立ち上がりましたから、
見たのは俺だけじゃないんです。
目玉の瞳が、キロキロとあたりを見回すように動いて・・・
そのとき電話がかかってきたんですよ。
警察からで、支配人が死んだっていう内容でした。

雀荘にスクーターで出勤する途中、
信号待ちしてるところをミニバンに追突され、救急車で病院に運ばれてたが、
たった今亡くなった・・・
すぐオーナーに連絡し、お客さんに訳を話して店は閉めることになりました。
それから病院に駆けつけたんですが、その前にもう一度卓を見ました。
ただ牌が落ちてるだけで、さっき見たと思った血は見あたりませんでした。
その牌、「一筒(イーピン)」だと思うでしょ。目玉に似てますからね。
ところがそうじゃなかったんです。「四萬」でしたよ。
支配人はかなり宙を飛んで頭から落ちたってことで、
病院では遺体は見せてもらえませんでした。
だから、支配人の目の部分がどうなってたかはわかりません。

『一筒』




で、支配人が亡くなって、その代わりを俺が務めることになったんです。
雀荘のメンバーはバイトのつもりで、一生の仕事にするはずじゃなかったんですが、
そうも言ってられなくなっちゃったんです。
でね、最初のうちは緊張して、毎日早く来て店内を整えてたんです。
もちろん卓はすべて自動卓なんですが、
動きを確認する前にていねいに牌を拭き清めてました。
自動卓の牌って2組使うんですが、店が終わると抜いて木枠に入れておくんです。
それを出してきて、牌の背と裏を何度もから拭きするんです。
それがその日、拭いてる最中に枠ごと床に落としちゃったんですよ。
「あっヤッベ、散らばる」と思ったんですが、そうはなりませんでした。
・・・麻雀牌をしまうときは、表裏全部を同じ向きに揃えておくんです。

ところが木枠ごと拾い上げてみたら、
ところどころが裏返って、くねった蛇みたいな模様になってたんです。
蛇っていうか龍ですね。4本の手足もあるように見えましたから。
これってありえないことですよ。
牌はびっしり詰まってて動かないようになってるわけですから。
まあそんときは、不思議なこともあるもんだな。
拾い集めずに済んでラッキーって考えたくらいでした。
でね、その日、異様に役満が出たんです。
最もできやすい「大三元」や「四暗刻」だけじゃなく、
「緑一色」やら「大四喜」「清老頭」まで。
俺は麻雀始めてから長いんですが、「清老頭」を見たのはこれっきりでしたよ。

その店は役満ご祝儀ありで、
あがった人に現金払いしなくちゃならなかったんです。
でもあんまり多くてメンバーのやつらが気の毒だったんで、
店の経費で出してやりました。
合計で52回役満が出たんですよ。12という卓数にしては異常な数です。
役満があった場合は、あがった人の名前とともに役を紙に書いて、
しばらく張りだしてましたから、数を覚えてるんです。
店はいちおう風営法で午前0時までって決まりになってるんですが、
金土あたりは徹マンする人も多くて、たいがい朝までやってるんです。
その3時頃でした。「ロン、九連宝灯!!」という大声が聞こえました。
「ああ、まただ。それも大役満」って思いました。

「九連宝灯」ってのはすごく難しいんですよ。
本式には萬子でなくっちゃならないんです。店では筒子、索子でもOKでしたが、
見ると萬子の純正でした。でね、この役って縁起が悪いって言われてるんです。
ま、ジンクスみたいなもんですかね。
めったに出ない役なんで、完成させるとすべての運を使い果たしてしまうって・・・
えーと漫画家で、字は違いますが「九連宝塔」ってペンネームの人が、
早世したりしてるんです。あと有名な阿佐田徹也の「麻雀放浪記」って小説でも、
この役をあがった直後に亡くなる人が出てくる。
卓に近寄ってって祝福しようとしました。
そんとき足下がぐらぐら揺れたんです。かなり大きい地震だと思いました。
店は雑居ビルの11階でしたから揺れが大きいんです。

卓からばらばら麻雀牌がこぼれ落ち、お客さんのほとんどが立ち上がりました。
でね、そんときに窓の外を長い影が走ったんですよ。
黒いシルエットで数mの太さ・・・これも確かに見ました。
一瞬、皿ほどもある大きな目玉がギロッとこっちをにらんだんです。
・・・地震は数分で収まりましたが、牌は散らばるわ、茶碗は割れるわ、
自動卓は牌詰まりを起こすわで、後始末がたいへんでしたよ。
雀荘ってのも地震に弱い商売の一つなんですよね。
その後すごい雷雨になって、その日はわりと早く終わったんですよ。
あとでメンバーやお茶くみの女の子に聞いてみましたが、
窓の外の龍を見たのは俺だけみたいでした。え、九連宝灯のお客さんですか?
その後もぴんぴんしてて、今でもよく見えられますよ。

『麻雀牌』
牌手入れ1




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コメント
興味深かったです。

賭博が好きな人はジンクスを気にするので
オカルトを信じたり興味を持ったりするのだと思います。

目玉が出たとか龍が出たとか
ナンセンスの様ですが

確立統計論を分かった上で
賭博を楽しむ私には
この話はパンチ力がありました。
大弓 | 2014.11.25 07:20 | 編集
コメントありがとうございます
麻雀は昔ずいぶんやりまして、雀荘に寝泊まりしてたこともあります
あれは不思議なもので、精神がさえている日は
次に一発ツモするとかわかったりするんですよね
今は競馬だけです
bigbossman | 2014.11.25 22:07 | 編集
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