妖精 3題

2014.11.30 (Sun)


高校のときだ。部活の帰りに変電所の近くを通った。
そこは柵の上部に有刺鉄線が巻かれてたんだけど、
なんか変な黒いものが転々とついてた。
「ん!」と思って見たら、大きな熊ん蜂だったんだ。
それが有刺鉄線のトゲに上向きに突き刺さってた。
5匹くらいあったはずだ。右のほうの数匹は乾いてて、さわるとぽろっと崩れそうだった。
「何だこれ?」子どものイタズラかと思ったが、それにしても気色悪い。
そしたら鳥が飛んできて、口に何か咥えてた。
「これ、もしかしてモズの速贄ってやつか?」そう思ったが、
咥えられてもがいてるのが蜂じゃなく、人に見えたんだよ。
モズは鉄柵の上に止まると、くいっと頭を動かしてトゲに獲物を引っかけた。

それがやっぱり裸の人に見えたんだ。3~4cmくらいかな。
背中にあるトンボの羽を上にして、腹がトゲに刺さって血が流れているように見えた。
そいつは「キイキイ」というような声で鳴き、
それから俺のほうに向けて両手を合わせたんだ。
「助けてくれ!」って言ってるみたいに見えたな。
けど高くてどうにもできなかった。モズは容赦なく両足を嘴で咥えて引っぱり、
そしたら小さい人の腹が割けて、ぶばっと液体が散った。
モズは下半身を一口で飲み込み、さらに頭のほうも食べてしまったんだ。
「え、え、え、え、え、」という感じで、自分の見たものが信じられなかった。
そのままモズは飛び去っていったよ。翌日からそこを通るときは注意して見てたが、
二度とそんなことはなかった。トカゲとかの見間違いかな。



小学校の5年生のときの話。4年生からクラス替えがあって、新しい友だちが増えた。
その中で依田君って子がいたんだ。
新しいクラスでは始めに1人1人自己紹介をするけど、
その子が「熱帯魚、アロワナを飼ってます」って言ったんで、「おっ!」と思った。
俺もその頃、熱帯魚を飼ってたんだよ。
ただし、高級魚じゃなくて1匹数百円のグッピー。
それでさえ電気代がかかるからって言って、母親はあんまりいい顔してなかった。
アロワナはもちろん、熱帯魚屋で見たことがあったけど、
身近に飼ってるやつなんていなかったから、ぜひ見せてもらいたいと思ったんだ。
で、休み時間にその子の席に話をしにいって、
そしたらその日に家に来ないかって誘われた。

同じ学区だからそう遠くはない場所だったけど、俺の家とは方角が反対。
だけど高台の変電所の近くにあるという話だったから、
簡単な地図を書いてもらったんだ。
で、家にランドセルを置いてチャリで出かけた。
高台の新興住宅地は何度か下から見上げたことがあるけど、
上ってみたらこれがけっこうな坂で息が切れたっけ。
変電所の鉄柵を曲がり、2本目の小路の3軒目が依田君の家で、
表札が出てたんですぐに見つけることができた。真新しく、かなり大きな家だった。
インターホンを押して「ごめんくださーい。○○小の高橋です、遊びに来ました」
そう言ったら、ややあって、「ああ、どうぞ開いてるから」
大人の男の声がしたんだけど、何だか不機嫌そうな感じだったんだ。

ドアを開けて中に入ると、まだ寒い4月だっていうのに、
ステテコとランニングシャツ姿ののオジサンが立ってた。
「こんにちはー、アロワナ見せてもらいにきました」もう一度あいさつしたら、
オジサンは不機嫌そうな声で、
「ああ、水槽は応接間にあるけど、息子は今ちょっとケガしててな・・・」
こう言って、首にかけたタオルで顔の大量の汗ぬぐったんだ。
オジサンは太ってるってほどでもなかったし、玄関先で暖房も入ってないのにだよ。
「ケガって、大丈夫ですか?」
「医者に行くほどでないから部屋で休んでる。今呼べば降りてくるだろ」
オジサンは階段の上に向かって「おーい、□□!友だちが来たぞ!」叫んだら、
「・・・今行くよ」って声がした。依田君の声だと思ったがなんかくぐもって聞こえた。

降りてきたのは確かに依田君だったが、片足で段をぴょんぴょん跳ねてたんだ。
「どうしたん?」「階段でつまずいた。親指をぶつけただけだけど」
「それ痛いんだよな」こんな会話をしながら、中2階になってる応接間に案内された。
で、中に180cmの大型水槽があったんだ。
俺の家ではとうてい置いておく場所がない豪華なものだった。
泳いでたのは「金龍」といわれる、鱗が金色のやつ。
値段は今数十万クラス。悠々と泳ぐアロワナに見とれていると、
「今、餌をやってみせるから」依田君はひょこひょこ出てった。
そしてプラケースを持ってきたんだ。あのカブトムシとかを飼う、緑のフタのついたやつ。
中に土が敷かれてるのが見えた。「ミルワーム?コオロギ?」って聞いた。
アロワナの餌は小さい金魚が多いけど、昆虫類を食べさせることもあるのは知ってた。

「こいつ贅沢で、これしか食べないんだよ」依田君はそう言って、
プラケースのフタを開けると・・・中に10人くらい小さな人がいたんだ。
4cmくらいかな、裸で、背中にトンボみたいな羽が生えてるのが途中でむしられてた。
そいつらは片側に身を寄せたが、依田君はかまわず1人をつまみあげ、
親指と人差し指ではさんで頭をつぶしたんだよ。
「こいつら泳ぎも上手いから。アロワナが食べやすいようにこうするんだ」
ぽーんと水槽に放り込むと、落ちたあたりに赤い色が広がった。
落ちた小さな人は血をまき散らしながらジタバタ手足を動かしたが、
アロワナがすーっと寄ってきて、一口でぱくりと食べられたんだ。
「○○君もやってみる?」そう言って依田君がプラケースを俺に向けた。
そしたら中の人たちがひざまずいて、祈るように両手を合わせたんだよ。

怖くなって「いいよ、今見たから」後ずさりしながらそう言った。
「そうか」依田君は1人の足を持ってつまみあげ、
振るようにしてプラケースの縁に頭を打ちつけた。タンという音がしたのを覚えてる。
それをまた水槽に放り込んだ。俺は「もう帰るよ」そう言って部屋を出て、
「おじゃましましたー」チャリに乗りって逃げるようにして帰ったんだよ。
このあたりの記憶はちょっとあいまいだけどな。
気味悪いものを見て混乱してたんだと思う。このことは親には言わなかったよ。
信じてもらえそうになかったから。次の日の朝、学校に行ったら、依田君が寄ってきて、
「何で昨日こなかったの?待ってたのに」って言われた。足も引きずってなかったんだ。
その日は帰りいっしょに依田君の家に行った。昨日と同じ場所なんだが、
微妙に雰囲気が違う気がした。応接間も同じだったんだけど、
水槽にいたのは「紅龍」で、餌もふつうのコオロギだったんだ。

虫籠

たぶん前の人たちと同じ場所での話なんじゃないかと思います。
ただ私のはもっとずっと前のことで、高台に変電所はありましたけど、
まだ宅地化されてなかった頃の話なんです。その頃、そのあたりは自然の豊かな別荘地で、
私も両親といっしょに小学校の夏休み中、滞在してたんです。
1人で近くの川に遊びに行った帰り、夕方だったと思うんですが、
まだ小学校前くらいの女の子が変電所のほうからやってきました。
町主催の花火大会のときに見たことがあって、
やはり少し離れたところにある別荘に遊びに来てた子です。
片手に竹ひごで作った虫籠を持ってたので、
「何採ったの?」ってすれ違うときに聞いたんです。
女の子はちょっととまどったような顔をしましたが、虫籠をこっちにあげて見せました。

そしたら、中に人がいたんです。もちろん虫籠に入るくらいの大きさで、
背中に生えた透明なトンボの羽をせわしなく動かしてた気がします。
女の人でしたね。私はぎょっとしながら「・・・それ、何?」と聞いたら、
女の子は「おかあさん」って答えたんですよ。
すると籠の中の人がキイキイした声でしゃべったんです。
「知らない人と口をきいてはだめ。燃やすよ、燃やすよ」こう言ったと思いました。
女の子はバツの悪そうな顔になって、自分の別荘のほうへ駆けていってしまいました。
まあ見間違いだと考えるようにしましたよ。暑い日でしたからねえ。
その夜です、女の子のいた別荘が火事になってね。
かわいそうなことに父親ともども焼死してしまったんです。
母親はいたのかどうかもわかりません。亡くなったのは2人だけと新聞に出てました。








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