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からくり

2014.12.01 (Mon)
こんばんは。羽毛寝具の会社で営業をやっています。
まだ若い頃に、ある地方の町に出張をしまして、そのとき体験したことです。
宿は駅前の旅館でした。商人宿というんですか、
古くからの町には安く泊まれるところがあるんです。
もちろん温泉とかじゃなく沸かし湯です。素泊まりで3000円ほど。
宿は昔、遊郭をしていたところだと思います。
造りでわかるんですよ。1階の表に顔見せの格子がありましたし。
まだ鉱山が健在だった頃は、そうとうに栄えてた町だという話でした。
夕刻から赤ちょうちんで一杯やりまして、9時過ぎに宿に入りました。
2階の一間に通されると、すでに布団はひかれてありました。
まだ寝るには早い時間ですが、これ以上遅くなると宿が閉まってしまうんです。

ホテルと違ってそういうとこが不便ですね。テレビでも見ようかとしたら、
床の間の大きな大黒天の陰に、おもしろいものが置かれてありました。
くわしくはないのでよくわかりませんが、からくり人形というものではないかと思いました。
高さ30cmほど。木でできたキツネの顔の下は木組みの箱のようになっていて、
中にやはり木の歯車がいくつも組み込まれています。
動力はゼンマイのようで、後ろにネジを巻く穴がありました。
木は飴色に変色していて、大正期以前のものに見えましたね。
キツネの右手がバチを持っており、左手が高い位置にある。
小さな三味線を持っている形だったのが、楽器はなくなってしまったようです。
それと、箱の上にたぶん着物を着ていたのではないかとも思いました。
動くかどうか、歯車を親指で回してみたら、案の状バチを持った手が小刻みに動きました。

貴重なものなんだろうなとは思いながら、元の場所に置きました、
テレビはチャンネル数が少なく、面白い番組もなかったので、
風呂に入って寝ようと思いました。
風呂好きで長湯したんですが、自分の他に入ってくる人はなく、
もしかしたら客は自分1人だったのかもしれません、
明日の午前の列車で戻る予定だったんですが、
11時近くだったのでゆっくり時間がありました。
それで、ロビーにいた仲居さんに、この町で何か見所がないか訪ねてみたんです。
からくり人形の博物館があるそうでしたが、あいにく翌日は休館日にあたってました。
仲居さんは困った様子でしたので、「いや、いいんです」と言って部屋に戻ろうとしました。
そしたらぱっと顔を輝かせ、「朝に花嫁行列が通ります」と言ったんです。

町では結婚するカップルがいてもホテルで式をあげることが多くなって、
昔ながらの花嫁行列はついぞなかったが、旧家の一人息子が他の町から嫁取りすることになり、
昔のように賑々しく、長持行列をする予定になっているそうでした。
まあねえ、他人の結婚式ですからそんなに興味があるわけでもありませんでしたが、
見物してから駅に向かおうと思いました。
このときはね、自分も結婚をしたばかりで、まだ新婚といえる期間だったんです。
金がなかったので、式はつましいものでしたよ。
部屋に戻って電気を消し布団に入りました。
昼に歩き回って疲れたのと、晩飯代わりに飲んだ安酒のせいかもしれません。
すぐに寝入ってしまいました。そして夢を見たんです。夢だと思いましたよ。
この世に不可思議なことがあるとは、こんときは信じてなかったですから。

薄い布団の顔に近いところに重さを感じました。目を開けると・・・
夢の中で目を開けたってことです。そこにさっき見たキツネのからくりがのってました。
ちゃんと赤い着物を着て三味線も持って弾いていました。
ピンピンと輪ゴムをはじくような音が聞こえました。
キツネはぎくしゃくした動きで、自分の喉首までにじり寄ってくると、
真っ赤な口を開きました。そしてこう言ったんです。
「花嫁行列は見てもよいが、花嫁の顔はのぞいてはいけない」と。
まあ夢ですから、正確にこのとおり話したわけではないんですが、
意味ははっきり頭に伝わってきました。キツネはぐいと頭を持ち上げると、
コーンと一声鳴いて・・・これで夢は終わりですよ。気がつくと朝になっていました。

まだ早い時間でしたので布団の中でうつらうつらしていると、
仲居さんが床をあげにやってきました。テレビでニュースなどを見て、新聞を読み、
朝食は頼んでなかったので買い置きの餅菓子を食べていると、
ふと夢で見たことを思い出しました。
それで立って床の間を見にいったんですが、キツネのからくりは元の場所にありました。
おかしな夢を見たもんだなあと考えていたら、
仲居さんが部屋の外から、「花嫁行列が近くまできましたよ」と知らせてくれました。
それで、宿の下駄をつっかけて外に出ました。
その地域の長持唄が聞こえてきましたね。最初に先触れ、それと歌い手の老人、
その後に花嫁花婿、親族、長持類と続いてたんですが、
なんと新郎新婦はそれぞれ、曳かれた馬に乗ってたんですよ。

新郎は30代前半というところでしょうか、
りりしい顔だちで照れている様子はありませんでした。
新婦のほうは馬に横座りになり、こちらに正面を向けていましたが、
綿帽子というんですか、あれを深く被っていて顔が見ませんでした。
また昨夜の夢を思い出しました。
でもね、顔を見たからどうなるわけでもなかろうとも思ったんです。
それでね、馬が宿の真ん前を通ったときに、下からのぞき込んだんですよ。
驚きました・・・ 新婦は恥ずかしそうに目をふせていましたが、
その顔が家にいるはずの自分の妻にそっくりだったんですよ。
髪を隠していたんですが、それだけに顔だちがはっきりします。
もううり二つ、双子としか思えないほどでした。

・・・それでも、他人のそら似ってあるもんですからね。
この世には自分にそっくりな人が3人いる、などという話も聞きますし。
このときはただ驚いただけでした。宿に支払いをして、駅に向かい電車に乗りました。
会社のある市までは、何度か乗り換えをして5時間ほどかかるんです。
で、やっと着いた駅から会社に電話をしたんです。普段はそんなことをしないんですが、
いくつか契約がまとまってましたから、誇らしい気持ちもあったんだと思います。
そしたら課長が出て、すぐに病院に行けって言われたんです。
妻が急病でさきほど担ぎ込まれたって。携帯電話などが出るずっと前の話ですからねえ。
会社では病院からの知らせをうけて、自分の宿に電話したんだそうですが、
もう駅に向かった後だったということです。

タクシーを呼んで病院に向かいましたが、妻は集中治療室に入っているとのことでした。
近所の方が何人か付き添っていてくださいました。
市営の総合病院の医師から、病気ではなく何かの急性中毒という説明を受けました。
今、胃洗浄をしているということでした。
気が気ではなく、やきもきして待合室にいたんですが、
看護婦に呼ばれて中に招き入れられました。
妻はたくさん点滴をつけたまま蒼白な顔で寝かせられていました。
担当の年輩の医師が、首を振りながら、
「手はつくしたんですが、毒素のまわりがはやくて・・・」こう言ったとき、
妻はむくりと上半身を起こし、あたりを大きく見開いた目で眺め回し、
自分の顔を見留めると、「なんで顔を見た!」一声叫んでばたりと倒れたんです。

それっきりでした・・・ 後で話を聞いたところでは、台所の漂白剤を一気飲みし、
もがきながら通りに出て、車に飛び込もうとしたのを近所の人に止められた。
時間はちょうど、自分があの花嫁行列の新婦の顔を見たあたりです・・・
まあこんな話ですよ。
もう30年も昔のことです。ええ、それ以来再婚はしてませんので、跡継ぎはなしです。
最近になって、ここの噂を聞きまして、
何が起きたのかを説明できる方がいるかと思って訪ねてきたんです。
その宿ですか・・・数年後に再訪しましたが、つぶれて駐車場になっていました。
あのときに行けなかったからくり博物館にも行ってみたんです。
そしたら、あのキツネのからくりがガラスケースに入れられてあったんですよ。
・・・三味線はなかったですが、花嫁衣装を着せられていました。






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コメント
bigbossmanさん、こんばんは!!^^

>(ry「なんで顔を見た!」
うぅ、ここの部分、コピペするだけでも怖いっす!!^^;

この出来事は偶然だったのか必然だったのか?私は、鶴の恩返しだったかでも、なんで見てしまうんだと思いますが、もしそれが自分だったら見てしまう気もするし、見ない気もします。m(__;m
くわがたお | 2014.12.02 00:37 | 編集
これは怖い……。
いったい何だったのか。後を引きますね。
椿 | 2014.12.02 14:06 | 編集
コメントありがとうございます
この話は「からくり」の他に「元遊郭ーキツネー花嫁」などがキーワードですが
全体がどう裏でつながってるかはよくわかりません
会談ルームの人たちならわかるんですかね
bigbossman | 2014.12.02 22:58 | 編集
コメントありがとうございます
謎解きもできないわけではないんですが
怪談は話のつじつまが合えば合うほど
創作臭くなるという宿命があって・・・
bigbossman | 2014.12.02 22:59 | 編集
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