キューピー3

2014.12.02 (Tue)
キューピー1

ある港っスね。そこにあるバーで働いてるんです。2ヶ月くらい前かなあ。
店は最後の客が帰るまでやってるんスけど、だいたい深夜1時過ぎますね。
もちろん電車もバスもないからチャリで帰ってたんス。
車?いやとてもそんな余裕はないっス。中古で安いのは買えるっしょうが、維持費が・・・
でね、いつも倉庫街を通って帰るんス。月がさえざえとした晩でしたよ。
ある倉庫の前にトラックが停まって、正門が開いてたんス。
10t車で門から中に入れなかったのか、そこで後ろ扉開けて荷を降ろしてたんス。
日中でも人気のないところで、珍しいこともあるもんだなと見てたんスが、
作業員の姿が異様で・・・防護服着てたんスよ。
ほら、原発作業の現場で着用するようなやつ。3人でトラックから降ろしてたのが、
マネキンだったんですよ。

いや、本物の人じゃないス。緩衝材のビニールにくるまれてましたけど、
それくらい見ればわかるス。
それに、荷台に乗ってるほうの作業員が方足つかんで軽々と持ち上げてたっスから。
ゆっくりね、その脇をチャリで通り抜けようとしたっス。
そんときに、ちょうど持ってたマネキンのビニールの中から、
何か小さいもんが転がり落ちてトラックの下に入ってったんスよ。
作業員らは気づかなかったみたいっスね。
小さなもんだったし、緩衝材がこすれてギュワギュワ音を立ててましたから。
俺が横を通ったときに、トラック側にいる作業員2人がこっち見たんスが、
顔がガスマスクみたいになってて不気味だったスよ。
でね、翌日っス。店は6時から始まるんスが、
準備があるんで4時には来るようにしてるんス。

そんときにね、夕べのことを思い出して倉庫の側を通ったんス。
そしたら、側溝の縁に小さなキューピー人形が引っかかってたんスよ。
10cmくらいの裸にパンツをはいたふつうのキューピー人形っス。
チャリから降りて拾って手にとると、材質が変わってる感じがしたっス。
ただのビニールじゃなく、押してもへこまないんス。ガラスっぽい感触でした。
肉色でしたけど、日にかざすとキラキラしてたしね。
そのままポケットに入れましたよ。
いや別に子どももいないし、ほしかったわけもないんスが、なんとなく。
たぶん前夜のことが気になってたんだと思うっス。
けどね、それからおかしなことは何もなくって、
キューピーは部屋の机の引き出しに放りこんだまま忘れてたんスよ・・・

キューピー2

始めまして、今さっき出てきた方の店にときどき行くんです。週1くらいかな。
グループで行くことが多かったんですが、一人のときもありました。
港にあるといっても、10分も歩けば繁華街ですから。
その夜・・・1ヶ月ほど前ですね。同僚と飲んだ帰りなんですが、飲み足りなくて。
バーへ行く倉庫街の道をふらふら歩いてたんです。
そしたら、「ちょっと、ちょっと、お願いがあります」
って女の人の声が聞こえたんです、すぐ近くから。あたりを見回すと、
ある中規模倉庫の門の鉄柵に、背の低い女の人が顔を押しつけてまして、
こっちに呼びかけてたんです。異様に背の低い人でね・・・140cmなかったかも。
でも、子どもじゃなく大人の顔をしてましたよ。
そうですね、30代になったばっかりくらいかな。いや、よくはわかりませんけど。

鉄柵の細い隙間に顔を思いっきり押しつけてたんで、肉がはみ出してたんです。
不気味でしたねえ。来てる物?暗くてよく見えなかったですが、
裸とか奇抜なもんじゃなかったと思います。でね、私が「どうしましたか?」と聞くと、
隙間から指を出してクイクイ動かして招くようにしました。
近寄っていくと、何か叫びまして・・・ そうですね「んありえ」みたいに聞こえました。
ぽーんと鉄柵の上を越して何かが落ちてきました。
何だ?と思って拾い上げると、キューピー人形だったんです。
さっきのバーテンの方が拾ったのと同じです。
膚色をしてるけど、固くってつるつるして・・・
後で街灯にかざしてみたとき、細かい光の粒がキラキラ光ったんです。
ガラス繊維とかいうものじゃないでしょうか。

顔をあげるともう女の人はいなくなってました。
・・・そりゃもちろん、鉄柵から中をのぞき込んで見ましたよ。
小さい体育館みたいな倉庫は上部の窓が真っ暗で、人気は全くない感じでした。
中の入り口も固く閉まってましたよ。キューピーはポケットに入れて店に行ったんです。
この話をしようと思ってたんですが、
入った早々、マスターの誕生日だってことでラム酒を奢られて、
私は知らなかったんで、お祝いを言ったりしてるうちに忘れちゃったんです。
その日は多人数の客がいてバカ騒ぎみたいになり、次の日は少々二日酔いでした。
キューピー人形はちゃんとコートに入ってましたよ。
家に戻って、パソコン用の机の下段に置いてそれっきり・・・
ああ、倉庫の場所も同じところだと思います。

キューピー3

俺も同じキューピーの話だよ。これがね、前の2人とも違って、
ちょっとありえないような内容なんだ。でもよ、俺がそんな嘘つく理由もねえし。
まあ聞いてくれ。2週間前のことだ。その夜11時頃かな。
繁華街の店を出て、まだ飲み足りない気がして歩いて前2人の言ってたバーに向かってた。
倉庫街を歩いてたんだ。いやあ、そりゃ酔ってた。
酔ってたけど幻覚を見るほどじゃなかったぞ。バーでもかなり飲んで歩いて帰ったんだし。
倉庫のコンクリの塀の上に煙がもうもうと上がってたんだよ。
それが嫌な感じの緑色の煙。焼却炉かなんかで何か焼いてるのかと思った。
火事とは考えなかったな。だって倉庫本体とは結構離れた場所だったし。
でな、その煙が、もやもやしてたのが急に一本のひもみたくなって、
俺のほうに向かってきたんだ。避けるヒマもなかったよ。

まるでレーザービームって感じ。でな、顔にパッカンという感じで何かがあたったんだ
痛かった。顔の真ん中を直撃だったから。スコという音がして下に何かが落ちた。
鼻を押さえながら拾ってみると、キューピー人形だったんだよ。
前のお2人さんが言ったのとたぶん同じ材質。軽いけど固いっていう。
幸いにして鼻血は出なかった。キューピーは片方の腕が折れててね。
折れ口は・・・石のメノウってあるだろ。宝石とかに加工されるやつ。
あの断面みたいに何重にも層があって光ってたよ。
それと、煙は跡形もなく消えてたんだ。塀の上にも何にもなし。
腹が立ったんで、腕も本体もいっしょに海に放り込んでやったよ。
バーに行ってすぐ、マスターにこのことを話した。そしたら、
「それは災難でしたね。海に捨てたのはよかったかもです。供養になります」
こんな風に言われて、ラム酒をおごってもらったんだ。

キューピーズ

最初に出てきたバーテンっス。話のまとめをおおせつかってまして。
でもね、まとめってもねえ。聞けばますます、わけわからなくなるだけじゃないスかね。
本当はマスターにここに来てもらえればよかったんでしょうけど、
「嫌だ」って言われまして。でも、ここで話すように勧めたのはマスターなんスよ。
えーと2番目の話のお客さん・・・田中さんが店に来てた4日前。エボラの話題になって、
防護服つながりで俺がキューピーの話を出したんス。
そしたら田中さんが、じつは俺も持ってるって言って・・・
そんときに、俺らの話を厳しい顔をして聞いてたマスターが俺に、
「明日店にそのキューピーを持ってこい」って言ったんス。
それから田中さんにも、これは丁重に、
「あなたがお持ちの人形も店に預からせていただけませんか。
 明晩持参していただければ、飲み代はおごりにしますから」って。

でね、翌日。俺が店に出るとマスターはもう来てたから、
まずキューピーを出して渡したんス。そしたら店の奥の金庫に持ってって、
「お前も見とけ」って言われたからついてったんス。
金庫は営業用のじゃなくって、その裏にあるでかいやつ。
ダイヤル式の番号合わせるやつっス。
「俺にもしものことがあったら、この店の権利はお前にやるから」って言われて、
番号まで教えられたんスよ。
金庫の重い扉を開けると・・・中にはね、キューピー人形がぎっちり。
立った形で何列にも並んで、中断にも下段にも満杯に。
100個以上はあったと思うっスよ。それと、金庫の奥や側面に神社の御札がびっしり。
後になって田中さんが持ってきたやつも、その中におさまったんスよ。






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