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コップ

2014.12.11 (Thu)
ここ10日ばかりの出来事だよ。始まりは今月の始め。
俺のアパートに5人ばかり工員の仲間が来て酒を飲んだんだ。
つまみも酒もコンビニから買ってきたやつだったし、
安アパートで壁も薄いからいつもはそんなに騒いだりはしねえんだよ。
ところがその日は、翌日休みだったせいもあってかなり遅くまで飲んだ。
でな、俺は翌日の昼頃に起きて、ものの片付けをしたんだ。
したら、ポテチの空、焼酎の瓶、灰皿とかの中にガラスコップが一個あったんだよ。
ふだんはガラスのコップなんて使わないんだ。
お茶とかはペットボトルから直飲みするし、人が来たときには紙コップを使う。
洗い物は少ないほうがいいからな。
でも、とくに気にも留めず冷蔵庫の上に置いといたんだよ。

そのまま忘れてたんだが、数日後、
いつも歯磨きに使ってる樹脂製のコップを落として割ってしまったんだ。
ほとんど水の入ってないのを床に落としただけなのに見事に真っ二つ。
まあな、100均で買ったもんだからしかたねえと思ってゴミに捨てて、
代わりを探したら、冷蔵庫の上にそのガラスコップがあったんだ。
ごくごく普通の、何の特徴もねえ無地のコップだよ。
ちょっと容量が少ないけど、これでもいいやって使い始めたんだよ。
そしたらその夜、寝る前に歯を磨いてて口をゆすいだら、
はき出した水が真っ赤になってた。
口の中に痛みはなかったし、特に歯が悪いということもなかったから、
ちょっとあせって、口開けて鏡をのぞいてみた。

見えるかぎりでは特に血が出てるところもなかったし、
もう一度ゆすいでみたら何でもなかったんだ。
今になって考えればこんときから始まったんだろうが、そんなのわかんないよな。
何度かうがいをして、コップは歯ブラシを立てて流しの隅に置いといた。
次男の朝は早出でね、5時前に起きて朝飯食うひまなんてなし。
顔洗って歯だけ磨こうとしたら、コップが横倒しになっててね、
歯ブラシが見あたらない。流しに落ちてたんだが、それがボキボキに折れてたんだ。
全部で5~6ヶ所、歯ブラシの柄が内側に折れて芋虫が丸まったようになってた。
しかも、先のブラシのところが赤黒く染まってたんだよ。
血の塊がこびりついて乾いたみたいな感じ。いやまあ、それは俺の血かもしれないよ。
前夜に血が出たときに気づかなかったのかも。

でもよ、歯ブラシが折れてるのは説明できねえだろ。そんな固いもんじゃないだろうが、
一番折れてる部分の間隔が短いとこは、1cmくらいしかなかったんだ。
ペンチでもなきゃ無理だよ。それにもちろん、
誰がこんなことをしたのかが不思議だった。
昨日の夜から部屋に入ったやつはいねえし、
まさか俺が自分で寝てる間にやったのか・・・
そんときは時間がなかったんで、歯ブラシを捨てて現場に出かけたんだよ。
で、早く出た分、3時過ぎには終わって、コンビニで新しい歯ブラシを買って帰った。
俺は冬でもストーブを使わないんだよ。ここらはそう寒くはならないんで、
電気コタツだけで過ごしてる。部屋に入るなり、その上に赤いもんがあるのに気づいた。
真ん中にコップがのってて、赤い液体が1/3くらい入ってたんだ。
これはさすがにぞっとしたよ。

持ち上げて臭いを嗅いでみたが、トマトジュースとかじゃないのはわかった。
かすかに生臭かったんだよ。これもまさか血・・・
そう思うと怖くなって、窓を開けてコップごと放り投げたんだよ。
割れた音はしなかったな。枯れ草の中に落ちて見えなくなったよ。
外はちょっとした空き地で、その向こうは私鉄の線路になってる。
ああ? そりゃうるさいよ。その分家賃が安いからしかたねえ。
でね、ここまでのところでも、これが心霊現象だとは思わなかった。
もともと幽霊とか信じてなかったからな。それより、誰かが俺の部屋の合い鍵を持ってて、
俺が留守のときに嫌がらせをしてるんじゃないかと思ったんだ。
そのほうが現実的だろ。・・・てかなあ、こんな30過ぎの独身男に、
ストーカーするやつなんていねえだろ、ってのもまた現実的なんだけども。

大家がアパートの裏の一軒家に住んでるんで、事情を話しに行った。
したら、俺のことで尋ねてきたやつもいないし、
鍵は入居者が代わる度に新しくしてるって言われた。
その部屋は俺の前は知ってる工員の先輩が住んでいて、今もピンピンしてるし、
そんな変なイタズラするような人じゃない。
その先輩の前のことも聞いたよ。8年前まで外国人のホステスが入ってたってことだった。
今どうしてるとか、管理人は知らなかったな。
「もしまた何かあったら、警察に連絡したほうがいいかもしれませんよ」
こう忠告を受けたが、歯ブラシくらいのことでそれもなあ・・・って思った。
部屋にいるのが気味悪かったから、その足でパチンコに出かけて終わりまで粘ったんだ。
ああ?少し勝ったよ。それが何か関係あるのか?

11時半過ぎに部屋に戻り、買ってきたコンビニ弁当を食った。
それから風呂に入り、コーヒーカップを代用して歯を磨いて寝た。
コタツの上には、テイッシュ、灰皿とか見慣れた物しかなかったはずなんだ。
布団を敷くときにっ隅に寄せるんで、そんときに確認したんだよ。
どんくらい寝たのかな、何か声が聞こえたんだよ。
「ちゅわ、ちゅわ、ちゅい、ちゅい」みたいな感じで意味はまったくわからなかったが、、
間違いなく人がしゃべってる声だよ。外国語、それも東洋系のやつじゃないかな。
寝ぼけて「うるせえなあ、何だよ」・・・そこでここまでの出来事を思い出し、
一気に目が覚めた。一連のイタズラをしてたやつが部屋にいるんだと思ったんだ。
だとしたら身の危険まである。バネ仕掛けのように立ち上がって電気のヒモをひいた。
明るくなったとき、コタツの上にコップがあるのに気がついた。

何かが入ってた。真っ赤・・・じゃないし、液体でもないみたいだった。
動いてたし、そっから声が聞こえてたんだ。
一見してピンク色のマグロの切り身だと思ったが、
上からのぞき込んで何だかわかった。人の舌だったんだよ。
それがコップの中を内からなめ回すようにして四方に舌先を這わせてたんだ。
舌の切り口?そこまではわかんなかった。
俺は「わーっ」と大声を上げ、携帯と財布だけ持って上着を引っかけて外へ出たんだ。
近くでやってる店はなかったから、わざわざ駅前まで行って終夜営業のサウナに入った。
でね、知り合いでネットの霊媒師ってのをやってるやつがいることに気がついたんだ。
時間は午前4時で、さすがに起きてるとは思えなかったから、
翌朝の6時半まで待って、連絡してみたんだよ。

幸いにすぐ出て、事情を話したら来てくれるってことになった。
やっぱ持つべきもんは友だちだよな。
で、サウナにそいつがトレーナーにダウンという姿で現れた。もう明るくなってた。
恰好だけ見ればだれも霊媒師だとは思わなねえだろうよ。
そいつといっしょにアパートに戻り、俺は怖くて部屋に入れなかったから
そいつだけ入って行って、コップを持って出てきたんだ。あの例のコップだよ。
そいつは「舌はなかったけど、これはヤバイ3段階くらいまできてる」
そう言ったが、どの程度のことなのかはよくわかんなかった。
そいつは立ったままダウンのポケットから洋酒の小瓶を取り出してコップに注いだ。
でね、ひとくち口に含んでなにやら目をつぶって頷いてたが、
「よし、ちょっと歩くぞ」と言ってアパートの階段を下りた。

俺もついてったら、外の空き地で酒をぶっと吐き出し、俺に「会社に遅れる連絡しとけよ」
そのまま線路沿いの枯れ草の小道を歩き始めた。
でね、一駅過ぎて、二駅目の中間あたりまで・・・40分近く歩いたな。
小さな踏切が見えてきたとき「ああ、これだ」と言って、遮断機の横を指さした。
したらそこに、色あせた花束が置かれてたんだよ。
やつは俺に「ここらで、立ちションとかしなかったか?花束蹴散らすとか?」
と聞いたんで「こんなとこ来たこともねえよ」って答えたら、
「じゃあ、部屋の関係なんだろうな」そう言って、
手に持ってたコップに洋酒を小瓶が空になるまで継いで、花束の前にそっと置いたんだよ。
最後にこう言われたんだ。「これで当面はおさまるだろうけど、根治には至ってない。
 自分の師昇格の人のとこに行ったほうがいいな。俺は友だちだからタダでいいけど、
 そっちは金はかかるぞ」ってね。






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コメント
今回のは特にぞくっとしました。
朔 | 2014.12.12 22:50 | 編集
コメントありがとうございます
この話はどちらかというと日常にくっついた感じの怪異が起きます
そういうのは上手く書ければ怖くなるんですが

bigbossman | 2014.12.13 21:59 | 編集
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