幕屋

2013.07.16 (Tue)
小学校4年生の時だから、もうだいぶ前のことだな。
当時俺の町では小学校の合併があり、俺のいた小学校が建て増しされて、
別だった学校のやつらが移ってきたことがあった。
それで新しい友だちが数人できて、家に遊びにいったりしたけど、
そいつらの地区は同じ町内でも行ったことがない場所だったんで、
最初のうちはけっこう新鮮な体験だった。

5月だったと思うが、日曜日の午後にその地区で遊んで、
家に帰る途中でどしゃ降りの雨になった。
時間は、6時まで家に帰らないと怒られてたからたぶん5時過ぎくらい。
叩きつけるような大粒の雨で、どっかで雨宿りしようかと思ったけど、
まだコンビニもない頃で・・・そうしたら幕屋が目に入った。
幕屋というのは、俺らの町はお地蔵さん信仰が盛んで、町内の地区ごとにあって、
月当番を決めてお祀りする地蔵様のお堂のことだ。
たいがいは辻脇にあって、数本の杉の木もいっしょにある。
月当番の家では、火の始末やお供え物の片付けなんかをする。
今から思えば、2間に4間くらいの細長い建物で、
お地蔵さんが地区によって違うけど5~10体くらいある。
屋根はあったけど長辺の壁がなく、そこに赤い幕が下がってるから幕屋。

そこで雨宿りしようとして走り込んで幕をめくったとたん、あっと思った。
お地蔵さんがあるはずの木枠の中に、
ぎっしりオムツもしていない裸の赤ちゃんがひしめいていたんだ。
何十人という数で。
さらに不思議なのは、その中に、
赤ちゃんくらいの大きさで手足もあるんだけど、
色は真っ黒で、ふつう頭のある場所が象の鼻みたいになってる生き物?が、
5~6人?くらい混じっていたことだ。
俺が幕をめくったまま固まっていると、
てんでに泣いたり隣の子に抱きついたりしていた赤ちゃんたちが、
いっせいに静まって俺のほうを見たんだよ。
さらにその黒い生き物も象のような鼻の先を俺のほうに向けている。
なんとか後じさりしてひっこんだけど、
ウッそだろ~と思ってもう一回幕をちょっとだけずらしてみると、
中の赤ちゃんはみんな消えてて、お地蔵さんが七つくらいあった。

気味が悪かったんで、結局そこでは雨宿りはせずにずぶ濡れで帰った。
家で当時まだ健在だったジイサンにそのことを話しても、
どういうことなのかわからずじまいだったな。

『光の帝国』ルネ・マグリット






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