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硫黄神社2

2014.12.27 (Sat)
2年前の話ですね。高3のときです。地方の私立にいたんです。
そこそこの進学校でしたよ。県では東大進学者数は1番。
といっても土台が田舎だから、多いというほどでもないんですけどね。
それで、3年生は冬休み中に勉強の合宿があったんです。
参加は任意でした。高校の母体は予備校も経営してるんです。
それとタイアップして、講師も高校の先生の他に予備校のほうからも来ます。
もちろん参加費は払います。けっこう高額だったはずですよ。
参加するのは毎年だいたい学年の3分の1くらい。100人を少し切る人数ですね。
期間は5泊6日。バス3台で月曜の朝に出発して、土曜日に帰ってくるんです。
5日間でどんくらいの成果があるかは疑問もあるんですが、
それに参加すると合格しやすいってジンクスは高校内ではありましたね。

2時間バスに乗って着いた先は、山あいの温泉宿です。木造で、だだっ広くて古い。
まあ当時は、ただボロなだけと思ってましたが、今から考えると、
建物の造りなんか、それなりの格式があったんでしょうね。
ほらジブリの「千と千尋の・・」って映画があったでしょう。
あれに出てくる従業員が住んでた建物、と言えば雰囲気がわかってもらえるでしょうか。
勉強はですね、1日5時間・・・それぞれ分かれて選択した教科をやります。
あと3時間が大広間で自学です。講師の先生が机の間をまわって、
わからない問題を教えてくれたりもします。
あとは部屋にもどって復習する・・・要するに1日中勉強漬けってことです。
旅館は渓流の側にあって、片側が山にぴったりくっついたような形の3階立て。
まわりはホントに山の中で、店どころか民家も見あたりませんでした。

だから外に出ることもなかったです。下手すれば遭難もありえたんじゃないかな。
部屋は4人部屋で、ベッドじゃなく布団でした。
旅館自体は、高校の母体がバブルの頃に手に入れたもので、
そんな場所だから売るあてもなくなって、
しかたなく自分らで活用してるってことみたいでした。元は自炊宿なんだと思います。
で、地下に温泉がありました。地下というか、1階に山側から入るんで、
その下の階ってことです。温泉の外を渓流が流れてました。
洗い場も湯船も板敷きで、プールみたいに広かったですよ。
300人風呂って従業員の人たちは言ってました。
誇張じゃなく、入る気ならその人数が入れたんじゃないかな。これは男湯の話です。
元々混浴だったほうを男湯にしたので、女湯はもっと小さいってことでした。

お湯は硫黄泉で白く濁ってて、自分の手も見えないくらいでした。
だから、みなでいっしょに入っても、あまり恥ずかしくないんですよ。
この温泉がすごく気持ちよかったんです。深めの湯船の中の段差に腰掛けてると、
ふーっと吸い込まれそうな気分になるんです。
それで、温泉を出るといつまでもぽかぽか暖かい。
ああ、うちの県では冬はほとんど雪は積もらないんです。でも気温はけっこう下がる。
そんな古い旅館だと寒かっただろうと思うでしょうが、
全館にパイプを通して熱湯を回してるんです。湯上がりは暑くて汗がだらだら流れましたよ。
あと、夜、ぐっすり眠れるんです。合宿が始まって最初の2日くらいは、
修学旅行のノリで同部屋のやつと11時の消灯後もしゃべったりしてましたが、
いつのまにかふっと意識が途切れるような感じで眠ってしまうんです。

そのときは勉強の疲れと温泉の効能のせいだと思ってました。
まさかあんなことがあるなんて考えもしませんでしたよ。
え、食事ですか?高校の学食に入ってる業者がいっしょにきてて、
全員分作ってくれてましたよ。そうですね。トンカツとかイカフライとか、
高校生の好きそうなカロリーの高いメニューが多く、おかわり自由だったんで、
文句言うやつはいませんでした。それが何か重要なんですか?
すみませんね、長くなってしまって。合宿と旅館の概要はこんなとこです。
3日目にちょっとおかしなことがありました。
同部屋のやつと8時過ぎに風呂に行きまして、いつものようにお湯に浸かってると、
腰のあたりがちくっとしたんです。いや、そんなに強い痛みではなかったです。
木の湯船に出てたトゲに引っかかった程度。

湯から上がって友だちに見てもらったら、
腰骨の上の皮膚に直径5mmほどの丸い跡がついてるって言われました。
その丸い中にぽつんと赤い点があるって。でも、すぐに痛みはなくなりましたし、
鏡で見ましたが、たいしたことないと思って、気にかけることはなかったんです。
でね、最初のうちは張り切って勉強してたんですが、
さすがに3日を過ぎるとげんなりしてきました。
・・・こっからはちょっと恥ずかしい話になります。
自分らの高校は男子が多くて、女子の倍くらいいました。
その合宿にも女子は20人くらい参加してたんです。それでね・・・笑わないでくださいよ。
4日目の晩に悪友と語らって、女湯をのぞけないかって考えたんです。
高校生ですしね、なんていうか溜まりっぱなしになるじゃないですか。
まあホントにできるとは思ってなかったです。ダメもとくらいの気持ちで。

浴場は外に面して大きくはないガラス窓がありましたが、
外からのぞくのは無理だと思いました。
窓の外は渓流に続く斜面なんです。ヘタすれば転落してしまう。
でね、男湯と女湯は並んでるんですが、銭湯みたいに壁一枚で隔てられてるわけじゃなく、
のれんのかかった入り口と入り口の間に戸があって、
幅2mくらいのスペースがあるようだったんです。
3日目に風呂に入りにいったとき、何気なく引き戸をひいてみたら、
鍵がかかってなかったんです。そこに入ってみれば何かできるんじゃないかと・・・
ただ一番入る人が多い8時前後はさすがにためらわれました。
それで10時過ぎ、消灯前の時間をねらったんです。
その時間帯でも入りにいくやつはいましたから。

Kとしておきますか。そいつに計画を話し、10時過ぎに風呂に行きました。
誰もいなかったので、そっと引き戸を開けて中に入り素早く閉めました。
中は・・・暗くて、青い色をしてましたね。
意味がわからないでしょう。幅2mのスペースの真ん中に生け簀のようなのがあって、
そこに青色のライトが灯ってたんです。Kが壁をさぐってスイッチを見つけたらしく、
上の蛍光灯がつきました。やはり全体が木造りで、生け簀はコンクリでできてました。
左右の壁は太い木組みになってて、のぞけそうな部分はありませんでしたよ。
見つかって怒られないうちに出ようと思ったんですが、
気になって生け簀に近寄ってのぞいてみたんです。湯気のたつ白いお湯が入ってました。
ええ、温泉と同じ湯なんだと思います。生け簀の奥の縁に青いライトがついてて、
その下だけお湯が泡立ってたんですよ。

Kが「変だよな、これ。何に使ってるんだろ」と言いながら、
ライトの下に頭を出しました。
そしたら、湯の中からにゅーっと白いものが伸びてきたんです。
お湯とほぼ同じ色の触手みたいなやつでした。それが50c以上伸びてKの頬に触れると、
「痛てっ!」Kが小さく叫んで尻餅をつきました。「なんだよこれ、もう出よう」
Kはそう言って、手で顔を押さえながら入り口に向かいました。
幸い、そっから出たときも外にはだれもいませんでした。
Kが「どうなってる?」と言って手を離したので頬を見ると、
丸い形のくぼみ・・・シャーペンの後ろを押しつけたような感じに跡がついて、
中央が赤くなってたんです。そう、自分の腰についた跡と同じやつだと思いました。
Kは「もう痛くないけどかっこ悪いな」と言い、

「あれ、生き物を飼ってるんだろうか。イカみたいなうやつ?」と聞いてきたので、
「わかんないな。でもよ、温泉の湯って40度はあるよな。
 そんな中で生きてる生物っているか?」こう答えました。
でね、最後の晩に風呂に入ったとき、裸のやつらを観察してみたんです。
そしたら、俺と同じように腰の部分に丸い跡がついてるやつがかなりいました。
5人中の4人くらいの割合ですね。その中の一人に、
「腰に虫さされの跡みたいなのがあるけど、痛いとかかゆいとかないか?」
って聞いてみました。「いや、べつに」予想どおりの答えでしたよ。
6日目の午前の勉強が終わって、帰る前に小高いとこにある神社に全員でお参りしたんです。
鳥居には「硫黄神社」って額がありましたね。温泉の神様を祀ってるんだと思います。
まあ、これだけの話なんですが・・・合宿が終わった後、自分は体調を崩しました。

熱が出たんです。それと・・・Kが亡くなりました。帰ってきて2週間です。
聞いたことのない病名でしたよ。同じクラスではなかったので葬式には出てません。
他のやつらは、冬休み中だったんでどうだったかわからないですが、
休み明けはみな出てきてましたよ。
その後受験シーズンに入って、自分は運よく第一志望の大学に合格できました。
それと、自分でも変な話だと思うんですが、
俺が風呂で腰に丸い印がついてるのを見たやつらは、
全員第一志望の国立に合格してるんです。偶然なんでしょうけどね。
今は大学生活を満喫してますよ。おかしなこと?そうですねえ、特にはないですが・・・
ああ、一つだけ。ものすごい寒がりになっちゃったんです。
夏暑いのは平気ですが、冬場は暖房を30度近くまであげてないと寒くて・・・

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