徐福の墓

2015.01.05 (Mon)
今晩は。中学1年生です。学校名は言わなくてもいいんですよね。そうですか、はい。
去年の夏休みに「徐福の墓」というところへ友だちと2人で行ったときの話をします。
徐福はご存じですよね。少し調べてきましたので、いちおう説明すると、
徐市(じょふつ)ともいわれる秦の時代の方士で、始皇帝に仕えてた人です。
東の海に蓬莱山という島があり、そこにある不死の薬を取って来ると言って、
子ども3千人と多くの技術者、作物のタネなどを持って、
当時の巨大船で船出したんです。・・・この人が流れ着いた場所というのが
日本各地にあって、僕の住んでる地域にも伝承があるんです。
うーん、地元ではあんまり真面目に信じられていない感じがします。
だって、中国から船出したのなら九州か日本海側に着くと思うじゃないですか。
だけど僕らのとこは太平洋側だし、それもけっこう北ですから。

だから史跡あつかいにはなってたみたいですけど、
そんなに厳重に保存されてるわけでもないんです。ただの高さ2mくらいの土盛りですよ。
横に白いペンキを塗った看板が立ってて「徐福の墓」って書いてます。
ここは田んぼ中に島のようになってあるんですが、まわりがクヌギの林で、
ときどきクワガタが捕れたりするんです。あとっそっからUFOが見える、
なんて噂もあったみたいです。別の中学校の学区でけっこう距離があったんですが、
話を聞いてて、北見って友だちといっしょに行ってみないかってことになったんです。
ええ、初めてでしたが、道はわかりやすくて、ある県道をずっと行けば右側にあるんです。
そうですね、距離は自転車で40分くらいかかりました。
午後1時に出たんですが、失敗したなと思いました。すごく暑かったんです。
平日でしたから車はあまりなかったですが、道路にゆらゆら陽炎が立ってました。

2人とも水筒を持ってきてましたので、途中で休んで飲んでたら、
スーッとロードレーサーに乗った人が近づいてきて止まったんです。
すごい筋肉の男の人で、自転車競技の選手だったかもしれません。
その人は「僕たち、どこへ行くの?」と聞いてきたので、
「徐福の墓です」って答えました。するとその人はゴーグルを上げて、
「うーん、そうか。・・・あそこは虫が捕れるからね。でも、気をつけたほうがいいよ。
 不思議なことが起こるって評判もあるから」
「不思議って、どんなことですか? UFO?」
「それは人によって違うみたいだし、ケガしたりするわけでもないんだけど・・・
 俺も昔、双子の弟がね」
「弟がどうしたんですか?」

「・・うん、いや。あれからずいぶん立ってるから、今はそんなことないかもしれない」
その人は少し言葉を濁した感じでした。これは今だからそう思うんで、
そのときは感じませんでしたけど。その人は、
「この先にけっこう長いトンネルがあるんだけど、
 そこを通るときは2人離れないほうがいいよ。出口は横風があるからスピード落としてね」
こう言い残して走り去って行ったんです。
僕と北見は顔を見合わせました。何を言ってるのか意味がつかめなかったんです。
十分休んでまた自転車に乗りました。2kmくらい走ると、
言われたとおりトンネルが見えてきました。特に名前はついてなかったと思いますよ。
けっこう長くて、中は薄暗かったです。
今はあんまり見なくなった、ナトリウム灯っていうのかな、黄色い照明で。

でも、歩道はガードレールより高いフェンスで車道と隔てられてて、
危険なことはなかったんです。
「さっきの人、何か変なこと言ってたよな」
「でも、このトンネル長くないし、涼しいよな」
こんなことを話ながらゆっくりと抜けました。2分はかからなかったんじゃないかな。
それで、明るい出口のとこまで来て、特にゆっくりと出たんです。
そしたら横から言われたとおり突風が吹いて、僕はバランスを崩して転んじゃったんです。
いえ、横の草むらに手をついたんでケガはなかったですが、
北見が止まろうともせずに、そっから急にスピードを上げて僕を置いてっちゃったんです。
「おい、待てよ!」って言っても聞かずに。
やっと自転車を起こしてまたがったときには数百m離れてしまってました。
追いつこうとしたんですが、北見はすごく速くて見る見る遠ざかってしまいました。

「何だよ、あいつ」と思いながら、息が切れたのでゆっくり走ってると、
右横手にこんもりした林が見えてきました。徐福の墓です。
道路脇に北見の自転車が停まってたんで、あぜの中を歩いていったんだと思いました。
数分歩くと、少しだけ登りになっていて、木の切れ間に出ます。
その中央、半径5mくらいに盛り上がってるのが徐福の墓です。
手前の隅に、うつ伏せになって北見がいました。驚きました。
手で土盛りの部分をひっかいて穴を掘ってたんです。
それが、体の3分の2くらいが隠れるほどの穴だったんですよ。
いくら北見に離されたといっても、時間にすれば5分もないと思います。
それであんな穴が掘れるなんて・・・
「おい、何やってんだよお前!」こう言って駆け寄ったときです。
北見の体の上に土盛りの土がざっと崩れたんです。

「あ、バカ!」叫んで走ったと思いました・・・
でも、いつの間にか僕もうつ伏せに倒れてて、
前が暗くて見えない・・・頭に土がかぶさってたんですよ。
「うわー」大声を上げて立ち上がりました。土は乾いてぽろぽろして軽かったです。
横に北見がいて、やっぱり起ち上がりながら叫んでました。
僕が「お前、何で穴掘ってた? どうして一人で走ってったんだよ?」こう言ったら、
「一人で走ってったのはお前のほうじゃないか。穴掘ってたのもお前」
話がかみ合わないんです。それで、乾いた白土をはたいてから、
少し離れたとこに座って話をしたんです。
北見が言うには、「トンネルの出口のところで俺が転んだだろ、そしたらお前、
 振り向きもしないでそのまま行っちゃったじゃないか、すごいスピードで」

・・・こんな具合で、僕が経験したのとまったく逆になってたんです。
ね、変な話でしょう。僕も同じことを北見に説明しましたが、
どうして2人とも土まみれになっちゃったかはよくわかりませんでした。
それでもう一度、土盛りのほうに行ってみました。
確かに掘ってたとこが崩れた跡が残ってましたよ。
「もしかして、ここに宝とかあるんじゃないか」北見がそう言って、
足で土を散らし始めました。そしたら林の中から人が出てきたんです。
・・・ここも、後で親に話したときになかなか信じてもらえなかったんですが、
黒いスーツの上下と、黒のサングラスの人でした。
それが、前に会ったロードレーサーの人とよく似ていると思ったんです。
すごい筋肉質なのが服の上からわかったし・・・

ただヘルメットはつけてなかったので、絶対そうだという自信もないんですが。
その人は「君たち、ここ遺跡だからイタズラしちゃダメだよ。帰りなさい」
こう、そんなに怒ってるようでもない調子で言いました。
僕と北見は顔を見合わせて、素直に帰ろうとしたんです。なんだか怖くなってきてたし。
そしたらその人は「素直でいいね。・・・徐福様は一人でいいと言ってるから、
 どっちかは行かなくてすむだろう」こんなことを一人言みたいに言ったんです。
これも意味はわからなかったです。停めてあった自転車まで走って、大急ぎで帰りました。
ああ、トンネルは通らなかったです。少し遠回りして。
北見とはその後、夏休みの間中遊びませんでした。
2人とも携帯とか持ってなかったし、家にも連絡がこなかったんです。
夏休みが終わって学校に出たら、北見が転校してしまってたんですよ。

いえ、北見の家はスーパーを経営してて、転勤とかありえないです。
夜逃げ・・・ですか?でも、スーパーはすごく流行ってたし、
僕の親も「変だね」って言ってましたよ。
スーパー自体は一日も休むことがなくて、経営者だけが代わったみたいでした。
先生に聞いても、「秘密にしてほしいと言われてる」と言って、
北見の新しい住所は教えてくれませんでした。あれ以来徐福の墓には行ってません。
なんだか工事があるみたいで、移転されるのかもしれません。
北見からはずっと連絡なしだったんですが・・・今年の元旦に年賀状が来たんです。
でも、それにも新しい住所は書いてなかったんです。裏面は、文章はなく、
赤い全面の写真でした。スキャンしてパソコンに入れてもらったので今拡大します。
えーこれです。人みたいなのが見えますし、ここがどこだかわかりますか?
徐福と何か関係があるんでしょうか?






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