前の家

2015.01.11 (Sun)
うちで前に住んでた家の話をします。そこは建て売り団地の一軒家だったんですが、
新築じゃなかったんです。とは言っても築5年くらいで新しかったですけどね。
そこでいろいろ不思議なことがあったんです。
うーん、今から考えると、ローンが払えなくなって、
追い出された人が前の住人だったんじゃないかと思いますが、
当時はそんなこと考えもしませんでした。
まだ、小学生だったし、親も言わなかったですから。
家族は両親と姉です。姉は高校生でした。もう結婚しましたけどね。
僕は今は父親が建てた別の家に住んでます。
いや、不思議なことがあったせいというわけでもないんじゃないかな。
少なくとも僕も姉ちゃんも、あんまり気にしてないっていうか、むしろ面白がってました。

天井裏

2階は2部屋で、僕と姉ちゃんの部屋だったんです、隣り合わせの。
日曜の朝でしたね。6時頃、うるさくて目が覚めたんです。
天井裏で、トッ・・・しばらくしてまたトッと音がしたんですよ。
けっこう響く音で、天井板を蹴っては跳び上がり、また降りてきて蹴るみたいな。
何かが入り込んでるんじゃないかと思いました。
起き上がったときにドアから姉が顔を出して、
「ねえ、あの音、うるさいからなんとかならない?」って言ってきました。
なんでも僕に用を言いつける、うっとおしい姉だったんですよ。
まあ結婚していなくなって、最近はさびしいなって思うときもありますけど。
「鳥じゃないかな、けっこう大きなやつ」
それで、下から懐中電灯を持ってきて見てみることにしたんです。

両親には言いませんでした。まだ寝てましたし、起こすと怒られるかもと思って。
姉の部屋にしか押し入れがなかったんです。
僕の部屋は4畳でせまくて、クローゼットだけしか置いてなかったので。
だから姉の部屋に行って押し入れの上の段に上がりました。
で、天袋って言うんでしょうか、よくわからないけど、
隅に天井裏に入れる四角い板があったんです。押すと持ち上がりました。
小学生の身長でも問題なかったです。
姉も上がってきて板を持ち上げてくれたんで、頭を入れて照らして見ました。
その瞬間「えー」と叫んで、僕はひっくり返っちゃったんです。
何を見たと思いますか?
雛飾りですよ。それもたぶん僕の頭のまわり全部ぐるっと。

どれも七段飾りくらいの、人形がたくさん並んだ豪華なやつ。
僕は「あ、あ、あ、おひな様」としか言えませんでした。
姉が「うそー」と、落ちた懐中電灯を拾ってかわりに頭を入れましたが、
「・・・なんもないよ」って下を見て言いました。
「だって」とまた頭を入れると、ホントに何もなかったんです。
考えてみれば、天井裏だし七段飾りの雛壇が入る高さなんてあるはずもない。
姉は「んーだけどこの家、不思議なことがあるから、あんたが見たならそうかもね」
その頃にはトッ、トッという音はしなくなってました。
その後2人でかわるがわる天井裏を調べたんですが、
下には厚く埃が積もってて、そこに点々と何かが跳んだ跡が残ってました。
「七段飾りなんていーなー」と姉は言いました。2月の話です。

レモン

冬の話です。その日学校から帰ってくると、試験期間だった姉が早く帰ってきてて、
居間のこたつで勉強をしていました。普段はお化粧のことしか考えてないのに、
珍しく真面目な顔をしていたんで、声をかけるのをやめ、
キッチンに行って冷蔵庫からジュースをとって自分の部屋に行こうと思ったんです。
冷蔵庫を開けたところで、居間から「きゃっ、また出た」という姉の叫びが聞こえました。
「○○、いるんでしょ。冷蔵庫からレモン切って持ってきて。早く早く」
けっこう切迫した声だったので、言われたとおりにレモンを半分に切って持ってったんです。
そしたら、コタツの上にソフトボールくらいの白い球が浮かんでたんです。
「こっち、こっち」と姉が言うので、側に行くと、
そのボールには大きな目がついてました。人の目よりずっと大きくて一つだけ。
「うわー、何これ」と思いました。

姉はあんまり怖がるふうもなく、「どうだ」と言いながら、
僕が手渡したレモンをぎゅっと両手でしぼって、その目にかけたんです。
すると目のまぶたが落ちて、ボール全体がふらふらと揺れながら、
部屋の隅まで漂って消えたんですよ。「姉ちゃん、今の何?」って聞いたら、
「さーね、妖怪かな?」平然とした感じでした。
「怖くないの?」「前に同じやつ、キッチンでも見たことがあるよ」
と言いました。「いつ?」 「3ヶ月くらい前」
「そのときはどうしたの?」 「ちょうどあったからタバスコかけてやった」
「辛いやつ?」 「そう、さっきより苦しんでたよ」
この変なボールは、引っ越すまで姉はもう3回見たそうです。
「弱っちいやつ」と言ってました。僕が見たのはあと1回だけです。

ダンボール
 
これは夏のことですね。学校のグランドでスポ少のサッカーをやってから、
6時頃に帰ってきたんです。するとキッチンで。
まな板に向かって何かを切ってる姉の姿がありました。
「母さんいないの?」って声をかけたら、
「今日、町会の寄り合いに出て遅くなるって。わたしが夕飯作るから」
こう答えたんで、「カレーにしてよ」と言いました。
そしたら「カレーだって?」と聞き返されたんですが、
その声がぐにょんとゆがんで聞こえたんです。
ほら、よくテレビの心霊番組なんかでテープを遅回しした音ってあるじゃないですか。
あれみたいな感じでした。
「あ、これは姉ちゃんじゃなく、なんかやばいやつかも」と思いました。

姉がくるりとこっちを向いたんですが、予想どおりというか、
体の前面が平べったくて、絵にかいたものみたいでした。
頭はカツラみたいな髪はありましたけど、顔も平たくて、
そこに「へのへのもへじ」がかいてあったんです。
こっちに近づいてきたんで逃げ出しましたが、逃げるときに片足に蹴りを入れました。
玄関から外に出ると、ちょうど姉が自転車で帰ってきたところだったので、
「姉ちゃん、ホンモノ?」と聞きました。
「なにバカなこと言ってるのよ?」それで事情を話し、2人で家に入ってみました。
玄関でそれそれ一本ずつ傘を持って。家の中には誰もおらず、
台所にたたんだダンボール箱が落ちてました。冷蔵庫が入ってた大きいやつです。
で、それの一面にマジックで「へのへのもへじ」がかかれてたんです。

6年後

姉が結婚することになって、それと同時に、
単身赴任が続いてた父が独立して会社を興すことが決まって、
この家から引っ越すことになったんです。
当面は都内で賃貸マンション生活ということでした。
引っ越しは業者に頼んで、見届けが終わってから父のミニバンで出発したんですが、
「いよいよお別れだな」って思って、家のほうをふり返ったんです。
そしたら2階の廊下・・・僕と姉の部屋があったところですが、
その2つの窓いっぱいに大きな目があったんです。一つ目でした。

「姉ちゃん、アレ」そう言って指さしたら、「何かいるの?」と姉が聞きました。
「でかい目玉」と答えると、「私にはもう見えない」
姉はそう言いながらも、懐かしそうな顔をして窓に向かって手を振ったんです。
僕もいっしょに手を振りましたよ。巨大な目がパチクリをしました。
「なんだお前たち、あの家にお別れしてるのか」父が言いましたっけ。

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コメント
かなり怖いのに、お姉さんと語り手くんがのんびりしてて、何だかほのぼのした不思議なお話ですね。
こういうのもいいなあと思いました(*^。^*)
椿 | 2015.01.12 10:15 | 編集
こういうほのぼの系好きです。
じつはとんでもなくコワイお話なのでしょうが(^^)
朔 | 2015.01.12 17:41 | 編集
コメントありがとうございます
たまにこういうのも書かないと読んでいただく方も
たいへんじゃないかと思いまして
bigbossman | 2015.01.13 00:21 | 編集
コメントありがとうございます
なんというか、いろんなテイストのものを
書こうと思ってます
bigbossman | 2015.01.13 00:22 | 編集
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