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チキンレース

2015.01.31 (Sat)
今年の夏のことですね。不可解な現象がありました。
場所は地元で心霊スポットと言われてる、放棄されたパチンコ屋です。
えー何年くらいそこにあるのかなあ。少なくとも俺が子供時分にはあったし、
幽霊の噂も出てたと思います。聞いたことがありますから。
でね、何から話せばいいのか・・・
きっかけは別の心霊スポットでのことなんです。これは郊外にある廃農家。
そこに4人で行ったんです。中学3年のときの同級生で、今でも遊び仲間なんですよ。
男ばっかりです。そこはレアなスポットで、ほとんど人が侵入した形跡はなし。
場所も山の中腹にあって、集落の他の家からは離れてて、不気味なとこでしたよ。
いつものように、懐中電灯を持って侵入し写真を撮ったんですが、
囲炉裏を切った部屋に入ったとき、突然4人の中の誰かが大声で叫んで、
それをきっかけに皆が走って逃げ出しちゃったんです。俺らにしては珍しいことですよ。

西脇ってやつの車まで逃げ戻ってから、
その西脇と篠田ってやつがケンカになっちゃったんです。
きっかけはくだらないことで、篠田が西脇に、
「お前が変な叫びを上げるから皆が逃げ出しちゃっただろ」って言って、
西脇が「俺が叫ぶ?バカ言うな、お前がやったのを人のせいにすんなよ」
こう返したんで、そりゃケンカになります。2人で「お前が臆病だ」
「お前のほうこそ臆病だ」って言い始めて、収拾がつかなくなりました。
で、2人ともカンカンで、西脇が「お前は車に乗せない」って篠田に言って、
篠田は「別にいらねえよ」って、止めるのも聞かず歩いて帰っちゃったんです。
うーん、最初に叫んだやつですか? ちょっとわかんないですね。
俺は霊現象なんて一切信じてませんから、俺らのうちの誰かなのは間違いないでしょうが。

ということがあって、それから2週間以上、西脇と篠田で連絡をとってないようだったから、
俺ともう一人の木村ってやつとで相談して、仲直りさせるように考えたんです。
でね、木村が「チキンレースを2人でやらせたらどうだろ」って言い出したんです。
ええ、チキンレースはチキンゲームとも言って、チキンは鶏だけど、
臆病者って意味もありますよね。車やバイクなんかで、
ヨーイドンで崖や障害物に向かって突っ込む。それで早くブレーキをかけたほうがチキン、
臆病者になって負けってことになります。
ま、くだらないゲームですが、事故って死んだ人の話も聞いたことがありますよ。
「しかしバイクとかでの臆病ってのと、心霊はまたちがうだろ。
 それに、西脇は車持ってるが、篠田はバイクの免許だってねえ。無理じゃん」
そう言ったら、「そうじゃなく心霊関係でチキンーレースやるんだよ」って。

詳しく話を聞いたら、こんな計画でした。最初に出てきたパチンコ屋の廃墟ね。
そこには4人で前に1回行ったことがあるんですが、
表からも裏口からも入れるようになってるんです。
「だからよ、西脇が表、篠田が裏、まあどっちでもいいけど。
 同時に入ってきて、店の中央で落ち合うようにするんだ。それを俺らが見てて、
 どっちの様子がブルってたか判定するってのはどうだ」
「うーん、しかし俺らが中にいるのがわかるんなら怖がらないだろ」
「あ、そうか。じゃ、あいつら懐中電灯なしでやらせたらどうだ。
 あそこはあちこちガラスが割れてて、外灯の光が入り込んできてるから、
 なしでも大丈夫だろ。俺らからも見えるし」
「転んだりしたらキケンそうっだけどな。それにあいつらやるって言うかな」

「相手から持ちかけたことにして話そうぜ。西脇には、
 篠田がこんな話してたって言うんだ。意地張ってるだろうからやるんじゃないか」
「後でバレるだろ」「別にいいじゃね」
「ああ、そりゃやりそうだな。だけどよ、真面目に俺らが判定するのか?」
「そうじゃなくて。これは仲直りさせるためなんだから、後で俺らが、
 どっちも同じくらいビビってブルってたって言えばいいんじゃねえか」
「うーん、くだらないけど、ほっとくよりはいいか」
こんな話になって、木村と俺でそれぞれに連絡したんです。
2人とも「やる」って言ったんで、次の土曜、別々にパチンコ屋の表と裏に来て、
11時になったら同時に入る。パチンコ台のある1階の自動販売機の前まで来て、
そこで出会って握手をするって段取りになりました。

で、俺らはパチンコ台の列の陰に隠れて見てるんです。
土曜日になって、細かい雨が降ってましたけど、暑さがやわらいでいいくらいでした。
俺が篠田、木村が西脇についてパチンコ屋まできました。
でね、最初に俺らが入って落ち合い、2人が来る様子が見えやすいとこに隠れたんです。
11時になりました。だいたい2人が同じ距離を歩くように、
表の西脇は景品所のほうから入らせたんです。そのうち11時になりました。
でね、そこに来るまで走っても2分以上はかかるはずだったんですが、
すぐ篠田の姿が見えたんです。それがね、手に何か持ってて、
暗くて見えづらかったんですが、大きな尖ったガラスのかけらのように見えたんです。
「お、篠田早ええな。武器なんか拾ってきてビビりまくりじゃねえか」
こう小声で話しました。

でもね、歩き方は堂々としてたし、顔も怖がってる様子は見えませんでした。
10秒もたたず、反対側を回って西脇が出てきましたが、やつも手に何か持ってました。
細長い鉄の棒・・・パチンコ屋の店員が玉詰まりを直すための道具じゃないかと思いました。
「あーこっちも武器持ってる」「いつも懐中電灯持ってるから、手持ちぶさたなんか」
でね、2人はつかつかという感じで歩み寄って・・・握手するはずだったんですが・・・
いきなり西脇が鉄の棒で篠田の横っ面を殴りました。
ガクと篠田の頭が揺れましたが、体の体勢は崩れず、
持ってたガラス片を西脇の腹に突き立てたように見えました。
そのまま2人はもつれて倒れ、「おいバカ、よせ!」俺らは飛び出したんです。
そしたら、また一人裏口からやってくるやつがいる。それが篠田だった。
「えっ!?」タタッと足音がして、もう一人の西脇も顔を出したんです。

「え?え?」俺と木村が驚いて床を見ると、重なって倒れたやつらの姿がなかった。
懐中電灯で照らしてみても、厚くホコリが積もって、人が転んだ様子なんてなかった。
「何だよ、さっきちらっと人の姿が見えた気がしたけど」篠田が言い、
「それ・・・お前らだよ」俺が答えた。
まあね、こんなことがあったんですよ。おかしな話でしょ。
最初に武器持ってやってきた2人は俺らの幻覚かもしれないけど、
篠田も見てるっていうし。正直わけわからなかったです。
心霊スポットはあちこち行きましたけど、こういう体験はもちろん初めてですよ。
ええ、そうですね。結果的には西脇と篠田は仲直りしましたから、
当初の目的は達せられたんですけどもね。
でね、何が起きたのか少し考えてみたんですよ。

心霊スポットで変なものを見るのは、もしかしたら、幽霊がいるんじゃなくって、
行ったやつが何かを自分らで作り出してる場合が多いんじゃないかって。
それが幻覚なのか、それとも超能力の類なのかわかりませんけどね。
あのときだって、西脇も篠田も、
怖いというよりビビった姿を見せまいとして緊張してたでしょうし、
俺らもやつらが姿を現すのを暗い中で注視してた。
そんな心理状態が、何かを生み出して見せた・・・こういう仮説はどうでしょうか。
まあ、素人考えですからね。違ってるかもしれません。
ただほら、心霊スポットっていろんな噂があるじゃないですか。浮浪者が死んでたとか、
経営者が首を吊ったとか・・・そういうのを頭に置いていくと、自分らが作り出したものを、
実際に見てしまうことがあるのかもしれませんよね。







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