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防御

2015.02.04 (Wed)
えーと10年ばかり前のことです。当時、わが家は、
親父が水商売系の仕事をしてまして。ああ、店長とかじゃなく経営ですね。
店をいくつか持ってたんです。あることがあって、今は全部やめちゃいましたけど。
で、東洋人の風水師みたいな人とつき合ってたんです。
華僑なのかなあ、そのあたりはよくわかりませんけど、たぶん中国系。
60年配の小柄な男性でしたよ。いつもチャイナ帽っていうんですか、
変な帽子をかぶってまして。あーほら、キン肉マンって知ってますか?
あれでラーメンマンがかぶってるやつ。辮髪ではなかったと思いますけど。
日本語はぺラペラでした。
春のことですね。親父が夕食後家族を集めまして、
いきなり「俺はある人間から呪いを受けている」って言い出したんです。

「逆恨みに近いものだが、相手がこっちに対して霊的な攻撃をしかけてきているから、
 ヤンさんにいろいろお教えをいただいた。
 相手の攻撃は半年くらい続くだろうが、こっちは専主防御する」
こんな話でした。わけがわかりませんよね。
要するに、いろいろ普段とは違った変わったこと家の中でするから、
黙って従えってことだったんです。
うーん自分はその頃高校生で、サッカーをやってまして家のことにはほとんど感心なし。
中学生だった妹もそうだと思いますよ。
親父がまた変なことを始めたが、勝手にやってこっちに迷惑をかけないでくれ。
まあそんな感じでした。あと家の家族は、母親と、当時まだ健在だった祖母ちゃんとです。
これから話をするのは、そんときにあったことなんです。

水槽

防御の一つめは、けっこう大きな水槽、だいたい60cm立方くらいのやつ、
これを玄関に置いたことです。うちの玄関は広くて、
大型の靴棚があったんですが、その上に。
そのおかげで、靴棚の戸の開け閉めがしにくくなりました。
水槽って重いんです。60cm立方で200kgにもなるんです。
水槽の中には赤い大きめの金魚が6匹入ってました。
始めから大きく育ったのを買ってきたんですね。これはほら、よく聞くでしょ。
玄関には水気のあるもの、赤いものを置くのがいいってこと。
俺ですか? いや、はっきり言ってそういうのまったく信じてなかったんです。
呪いを受けてる、って聞いて「嫌だな」と思いましたが、かといって、
「霊的な防御」なんてねえ。ところがです、しばらくして変なことがあったんですよ。

日曜日の夕方でした。そんときは、家に俺とばあちゃんしかいなかったんです。
俺も祖母ちゃんもれぞれ自分の部屋にいました。
そしたら玄関のほうで声が聞こえたんです。「入れて下さい、開けて下さい」って。
それが変な声で、洞窟の中で叫んでるようにくぐもってたんです。
「おかしいな」と思いました。うちはインターホンがついてて、
来客はそれを通して話すのが普通でしたから。
大きな声で、部屋まで聞こえたんで下りてみました。そしたら玄関の磨りガラスを通して、
異様に頭の大きな人の影が見えたんです。
頭は碁石形って言えばいいでしょうか、横長で普通の人の何倍もあったと思います。
まあでも、そんときは「光のあたり具合でそう見えるのかな」
くらいにしか思わなかったですが。

「あ、今開けます」そう言って玄関を開けたら、誰もいなかったんです。
「あれー、変だな」少し外に出てあたりを見渡したけど人の姿はどこにもなし。
気のせいってのもありえないと思ったけど、1回ドアを閉めました。
で、中に入ってみたら、やっぱり磨りガラスに扁平な頭の人影が映ってる。
「そこに水槽があるだろ、そのせいで中に入れない。せっかく戸を開けてもらったのに」
また、妙に反響する声が響いて、人影がふっと消えたんです。
出てみてもやはり人の姿はなし。うちは通りに面してるんで、
走ったとしても、そんなに早く姿を隠すのは不可能だと思いましたよ。
で、親父が帰ってきてからその話をしました。
すると親父は「それは相手の使い魔みたいなものだろ。そういうのは実体がないから、
 人の家には、家人にドアを開けて招かれなければ入れない。

 だから危ないとこだったんだが、水槽があるおかげで何もできなかったんだな。
 ヤンさんの言ったとおりだよ」
でね、その後すぐに水槽の水替えをしました。それ、俺の担当の仕事になってたんです。
いや、生き物はあんまり好きじゃないんだけど、親父から小遣いをもらえたから。
そしたら、中はいつもきれいにしてるはずなのに、
水槽の水をホースでバケツに水を入れると、髪の毛みたいなのがたくさん混じってたんです。
正確には髪の毛じゃなく、海藻のモズクをまっすぐに伸ばした感じのやつ。
ああ味悪いなと思って、水は全部外の側溝に捨てました。
あとね、水槽の隅で大型の金魚が一匹死んでました。
普通は死ぬと浮き上がってくるんですが、そうじゃなく手で握り潰されたようになって。
金魚は親父が翌日新しいのを買ってきて足しました。

炭俵

防御の2つ目は、家の敷地の四隅に炭俵を埋めたことです。
家の敷地は広くて高い塀を巡らしてましたが、その四隅ってことです。
正確に東西南北の方角とは合ってなかったはずですよ。
ほら、炭には浄化作用があるって言いますでしょう。
それと、古代の神社跡なんかを発掘すれば、水晶や炭が出てくるって聞きました。
霊的な守りってのは、ずっと昔から日本でもあったってことなんでしょうね。
で、その炭を埋めるときには、ヤンさんが来て一家で立ちあったんです。
俺もシャベルで穴を掘るのを手伝いました。
ヤンさんが何やら呪文を唱えてから、中国風の護符を貼った炭俵を、
1mくらいの深さに埋めて土をかけ、その上に常緑樹の苗を植えたんです。
榊ともまた違った植物だと思いましたよ。

でね、1ヶ月おきに掘り出して新しく埋め直すんです。
いや、全部じゃなくて、苗木が上手く育たないところだけ。
一種のセンサーの役目を果たしているんだと思いましたね。
たまーに様子を見て歩いてましたが、裏の向かって右側の隅に植えたやつだけ、
ひねこびたような形になって葉が黄色く、今にも枯れそうな様子になってました。
1ヶ月後にヤンさんが来て、そのときは俺と親父とヤンさん、
男だけで掘り返したんです。何か嫌なもんが出てくるって予想があったみたいでしたよ。
だから母親や妹には見せないように。
ほとんど伸びてない苗木を抜いて、シャベルを入れたとたん、
スゴイ嫌な臭いがしたんですよ。生ゴミの腐った感じでしたが。
それだけじゃなく薬品臭のようなのもありました。

炭俵の周りは、青と灰色の粘り気のある液体が溜まってて、
そん中に白い小さいものがいくつか見えました。カエルくらいのもんですね。
ヤンさんが、カナバサミを使ってそれらをつまみ出したんですが、
きれいな骨格標本みたいにななってました。
どうやら歯で炭俵に食いついてたみたいで、引っぱると頭がもげたんです。
黒い紙の上に、ヤンさんが拾い上げたのを並べると、
骨格はさまざまな種類がありましたが、どれもこの世の生き物とは違ってました。
肢が8本あったり、小さな頭蓋骨にトゲがたくさん出てたりね。
全部で15匹くらいあったはずです。いや、気持ち悪かったですよ。
鈎をかけて俵を引っぱり上げ、新しいのを入れ、
また念入りに呪文を唱えたんです。

その後に植えた苗木は順調に育ちましたが、今度は別の場所のやつが・・・
こういう具合にして、しばらくあちこちの炭俵をとっかえひっかえしてたんです。
面倒でしたが、あの変な骨を見ちゃうと信じざるをえませんでした。
骨も炭俵も、ヤンさんが持っていきましたよ。
ええ、親父の言ってたとおり、半年くらいこういうことが続きました。
もちろん今は治まってて、家の四隅には、あまり他では見ない常緑樹が大きく育ってます。
呪いを仕掛けた相手ですか?うーんそれは、どうなったかはわかりませんね。
親父もヤンさんも詳しいことは言いませんでしたから。
でも普通、呪い返しを食った場合は・・・ この後ね、たいへんなことがあって、
親父はヤンさんとの付き合いを断ち、水商売の経営もやめてしまったんですが、
そんときの話は、また機会があれば改めて。




 

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