記憶について

2015.02.09 (Mon)
のっけから不躾な質問をしますが、あなたの記憶力は完璧でしょうかw
・・・これはなにも、半分ボケかけてるんじゃないかとか、
そういう意味ではありません。
あなたが持っていると考えている幼少時や青春時代、さらにはごく最近の記憶が、
現実に起きたこととどれほど一致しているのか、という話です。

記憶は想起されるときに再構成されますが、
このとき、虚偽情報が混じり込んでしまうことがあります。
多くは無意識による操作です。記憶は、時間がたつほど薄れて曖昧になっていきます。
そして脳は曖昧な部分を、最近経験した、
似たような記憶で補ってしまう傾向があるのです。これは心理学ですが、
認知心理学者で記憶研究の大家、エリザベス・ロフタス博士の、
有名な「ショッピングモールの迷子」という実験があります。

概要を紹介しますと、
被験者に対して親か年長の兄弟がいくつか幼少時の出来事を語ります。
本人がよくおぼえている場合も、あいまいな記憶しかない場合もあります。
さらに続けて、「ショッピングモールで迷子になったときのことを覚えてる?
 あのときはたいへんだったのよ」などと嘘の話をします。
すると、被験者は当然ながら最初は思い出せないのですが、
「お前より少し年上の男の子が見つけて店員に知らせてくれたの」
「店内の暖房が効きすぎて、冬なのに汗をたくさんかいていたわ」
などと細部をつけ加えていくと、「そういえばそういうことがあった」
と思ってしまう人が多くいるのです。ある実験結果では、
24人中の6人、被験者の1/4が偽の記憶を埋め込まれてしまった、となっています。

さらには「男の子は泣いている私にかんしゃくを起こしてひっぱたこうとした」
などのように自分でどんどん偽の記憶を広げていこうとする人までいます。
最後、実験の種明かしをされると、
被験者は「信じられない」という反応を示します。なぜなら、この偽の記憶は、
細部に自分の別の新しい記憶を使用しているために生き生きとしており、
強い感情とともに思い出すことができるからです。
偽の記憶は、意図的な誘導によって、
簡単に造り出されてしまう場合があるんですね。

自分(bigbossman)の最古のまとまった記憶をたどれば、
幼稚園時代の3歳くらいのとき、
同級の子に石をぶつけられ、額から流血して泣きながら歩き回り、
医者に連れて行かれて縫合するときに、
暴れて診察室に血が飛び散ったというのがあります。
そのときの傷跡は残っているので、偽の記憶ではないのですが、
もしかしたら、後に親の話などを聞いて
つけ加えられている部分があるのかもしれません。

上記の例はずっと以前の記憶についての話でしたが、
ではごく最近の記憶はどうでしょうか。これも面白い心理学実験があります。
これは法廷証拠とするために、記憶の信用性に関して行われたもののようです。
広い部屋に多くの学生を集め、パーティを実施しています。
そこへ廊下から口論を続けながら、男2人、女2人の学生が入ってきます。

これはその場の全員が知っている人たちです。
男性の一人は手にバナナを持ってピストルのように振り回します。
その場にいた教授がこっそり癇癪玉を鳴らし「撃たれた」と叫びます。
入ってきた4人は全員逃げますが、その間30秒ほどの出来事です。

この後すぐに目撃者たちの証言を集めますと、29人の証人のうち、
4人の登場人物が部屋の中に入ってきたことを記憶してたのは3人だけでした。
全員知ってる学生だったが、誰であったかを全員見分けた者は1人もなし。
さらに29人中8人が、演技に参加していなかった人物のみならず、
その場にいなかった人物までも「見た」と証言しました。
ババナのことや教授の叫び、破裂音の回数などの細部においては、
誤った証言が多々みられたのです。

みなさんはこの結果をどう思われますでしょうか。
古い記憶が改変されたものであることは理解できます。
単に忘れてしまった部分を補うため、または自分の精神を安定させるために、
都合のよい形に変わっている可能性はかなりあるでしょう。
ところが、ごく最近の記憶でさえこのように誤りの多いものであったとすれば、
実際、何を信じたらよいかわからなくなってしまいます。

さて、ここまで書いて、賢明な読者のみなさんは何の話かおわかりでしょう。
幽霊の目撃談についてです。まず目撃証言に対しては、
それが意図的な虚偽であるか、実際のことであるかを確かめる必要がありますが、
幽霊を目撃したと話すことは犯罪ではないので、
嘘発見器にかけるというわけにもいきません。

ですから本当に見たと仮定して考えたとしても、次に、
正しい記憶か誤っている記憶かという問題が出てきます。
特に幽霊を見たなどというのはパニック時の記憶ですので、
上のパーティー実験のように、細部が(あるいは根幹部分も)
おかしくなっている可能性を考えてみる必要性がありそうです。

これらを根本的に防ぐことはできないのですが、
われわれは記憶のメカニズムについての知識を持ち、
虚偽記憶、記憶の改変というのは普通に起こりえるのだということを、
知っておいたほうがいいかもしれません。われわれは不確かにものを見て、
さらにその記憶を長期的に改変させているのです。

かといって自分の記憶を証言者を捜してきて、つきつめて正す必要もないでしょう。
思い出が美しいものになるのは、時間の経過による忘却と改変によりますが、
これは人間に与えられた(遺伝的にプログラミングされた)
一つの大切な機能であると思うからです。






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コメント
初めまして^^
いつも拝読させて頂いております。
そしてご訪問ありがとうございます。

今回の記憶についてもですけれど、興味深いテーマですね。
私の場合は、記憶の定着そのものが、
怪しくなってきましたが・・・(・・;)

文章の多いブログは、刺激にもなりますし、
とても勉強になります。

時折、伺わせて頂ければと思いますので、
これからも、よろしくお願い致します。


ポテチG♯ | 2015.02.10 00:43 | 編集
コメントありがとうございます
記憶を信じているからこそ今の自分があるという側面もあるわけで
そのあたり人間が在るということは難しいです
今後ともよろしお願いします
bigbossman | 2015.02.10 01:16 | 編集
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