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御神木の話

2015.02.14 (Sat)
10年ほど前かな。子どもの頃に住んでた地域の神社の御神木の話なんだ。
けっこうな田舎でね。都会と違って外で遊ぶ子どももけっこういたよ。自然も残ってたし。
5年生くらいだったと思うけど、夏休みに友だちと3人で沢でカニを捕ってたんだ。
大きな石をはがすと、下に隠れてるんだよ。
んーまあ、食うほど大きいやつじゃないけど。
でね、俺以外の2人がかりでかなり大きな石を起こした。
全部は持ち上げないで片側だけな。
そしたら、やつら2人で呆然として石の裏側を見てたんだよ。
「何かあるのか」って聞いたら、「ここに、神社に来いって書いてある」って言うんだ。
2人で口々に。そんな馬鹿なと思って、俺も見たら、書いてあるっていうか、
今すぐ神社に行かなくちゃ、って気になったんだ。

え? ああ、そりゃ字は書いちゃいないさ。
でも行かなくちゃと思ったってことだな。
で、バケツを持ったまま地域の氏神神社に行った。
社殿は大きいけど、普段は賑わってるようなとこじゃないよ。
初詣と例大祭のときくらいだな。境内は広いし、後ろは深い森になってるけど、
そこで遊ぶことはなかった。歩いてるとぽつぽつ雨が落ちてきた。
鳥居が見えてくると、子どもが10数人集まってたんだよ。
全部同じ小学校のやつらで4年以上の男だけ。6年生もいた。
学年1学級だから、みな知ってるんだよ。
6年生のうちの一人が「お前ら、なんでここ来た」
って聞いたから、「河原石の裏に、ここに来いって書いてあった」こう答えたんだ。

6年生は怪しむ様子もなく「そうか。俺はカブト虫にそう言われた」って。
見れば捕虫網と虫籠を持ってた。他のやつらも、
家の畑を手伝ってたらキュウリに言われたとか、
ゲームしてたら画面にそう出たとか、おかしなことを言い始めた。
今考えれば異常だけど、そんときは、変だという気はしなかったんだよ。
とにかく全員で鳥居をくぐった。6年生が先頭に立って社殿にお参りし、
持ってた小銭を、賽銭として投げるやつもいたよ。
で、それから裏の杜にまわった。雨が少し強くなってきた。
そんときに、このメンバーで去年の例祭のときにお神輿を担いだんだって気がついた。
もちろん来てないやつもいた。中学生になった去年の卒業生とかもね。
裏の杜には柵で囲まれた御神木があるんだよ。

楠の大木で、樹齢400年以上って言われてた。
どうもそっちから呼ばれてる気がしたんだ。
だけどのこ御神木はそんときは枯れかけてたんだよ。
新しい葉が出なくなって、幹も乾いた感じになってたな。
で、俺らが柵の回りに集まったとき、急に雨脚が激しくなった。
いつの間にか上空は黒雲に覆われてて、大粒の雨がびしびし打ちつけてきた。
空が光った。そしてすぐ轟音、雷が近くに来てるってわかった。
濡れるのはべつに平気だったけど、雷は怖かった。
どうしようかとあたりを見たら、6年生が両手を広げて「下がれ」の合図をした。
俺らが後ずさりして柵から離れたちょうどそのとき、
ドカーンという破裂音がして、目の前の御神木がぼうと光った。

それから上部が火を出しながら真っ二つに避けたんだよ。
落雷したんだ。でね、裂けた幹の真ん中から黒い煙が立ち上って、
それは渦巻きながら人のような形をとったんだよ。あれは武神だったな。
仁王様とかああいうやつ。すごく怒ってることがわかったんだ。
黒い煙はしばらく木の裂け目を漂って、それから薄くなっていった。
「おーい、そっから離れろ」って声が後ろから聞こえた。
振り向くと神主さんが走って来るところだった。
「なにやってる、危ないじゃないか」
幸いにというか火はもう燃えてなかった。雷もあの一発だけで、
あとは遠くでゴロゴロいうだけになり、空が明るくなってきた。
俺らは社務所に連れてかれ、タオルなんかを貸してもらった。

「何やってた」と聞かれたんで、6年生が代表して説明した。
呼ばれたような気がして、それぞればらばらに集まってきたこと。
御神木を見ていたら大雨がきて雷が落ちたこと。
黒い煙が渦巻きながら大きな神様の形になって消えたこと。
ものすごく怒ったき気持ちが伝わってきたこと、なんかをね。
それを聞いた神主さんは、うーんと考え込むような表情になったよ。
でね、この御神木はもうすぐ切り倒されることになってたんだ。
そのままにしておくと倒れる可能性もあって危険だってことで。
業者が伐って買い取ることに決まってたんだよ。
だけど落雷で価値が大きく落ちたし、俺らの話もあって、伐ったは伐ったけど、
売らずに、根っ子と根元の太い部分を使って、仏師に神像を彫らせたんだ。

神道のほうだと、神様の像とか普通は見ないよね。
神が宿るのは自然物とか鏡とかで、あんまり人型の像って祀らない。
だけど、そんときはすごく柔和な顔をした神様の像をつくらせて、
御神木のあった場所にお堂を建て、その中に安置したんだ。
これは今でもあるし、見にいけばいつでも見られるよ。
でね、この御神木の根っ子を掘るときに警察沙汰が起きたんだ。
幹の根元に、ドリルで開けたらしい穴がいくつも見つかったんだよ。
5mmくらいって話だったから、まず見逃してしまいそうなもんだけどね。
でね、詳しく調べたら、幹の中から除草剤の成分が見つかったんだよ。
嫌な話だろ。誰かがわざと御神木を枯らそうとしたってことだな。
何でかって?そりゃ伐採して売るためだろう。太い木だと一千万近くするらしいよ。

でも、そんなことをしたら神罰が下ると思うだろ。
こっからは詳しいことは言えないけど、その通り、あったんだよ。
微妙な内容になるので、ちょっとぼかして話させてもらうけど、
破傷風が流行ったんだ。人から人へ伝染はしないから流行ったっていうのも変だが、
ここらの地域一帯で患者が何人も出て、助からない人のほうが多かった。
衛生観念の発達した今の時代で考えられないだろ。
でね、それがみな前々から疑われてたやつらとその家族だったんだよ。
それはやっぱり何かあるんじゃないかと思うだろ。
あと、その破傷風が起きてた間、御神木の像のお堂が夜になると赤く光ってた、
って話があるんだ。近所のじいさんの目撃情報だと、
赤い光がお堂の屋根の上でチカチカ、チカチカって。な、怖いだろ。

まあね、寿命400年以上の御神木と言えば、人間の5人分も
長生きしてるわけだし、その間ずっと人々の祈りを受けている。
だからね、侮っちゃいけないんだ。ほら、最初のほうで話した
子どもの自分のことだって、考えてみれば不思議だよね。
なんで俺らを呼び集めたのか、そのあたりもわからない。
神社の例祭には中3まで参加してたけど、
子ども神輿しかないから、今はたまに帰ってきて見てるだけだ。
お堂にもお参りに行くよ。神像は、彫ったときはほぼ生木に近かったのが、
ロウソクで燻され、10年たっていい色合いになってね。
顔もすごい優しくて、見てるとほっと心が安まる感じがする。
でもね、本当は怖いってこともわかってるし。




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