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材木置き場の話

2015.02.22 (Sun)
子どもの頃、関西のある県の問屋街に住んでたんだ。
そこでいくつか不思議なことを体験したんで、その話をするけど、
あんまり怖いのはないから、そのつもりで。

隙間 

俺の小学校の同級生がその材木問屋の息子でね、跡取りじゃなく、年の離れた次男。
材木置き場は広くて、小学校のグランドよりもしかしたら面積は大きかったかもしれない。
そこいっぱいに木が積んであるんだ。木はいろんな種類があって・・・
ああ、これは杉とか桐とかそういうことじゃなく、
枝を払われてまだ皮がついてる丸太、それからきれいに皮をはいだもの、
それから角材になってるやつ、そういうののことだ。
子どものは木の品種はわからないよ。
で、そいつと遊ぶとき、ときたまその材木置き場に行ったんだよ。
もちろん売り物だから、木に登って遊ぶのは禁じられてた。
崩れてくるかもしれないし、キバリが刺さる。キバリは木針って書いて、
要するに木のトゲのことだよ。

これが刺さると毛抜きを使ったり、それでもとれないと、
縫い針でほじくり出したりしなくちゃならないから、厄介だった。
当時はゲーム機なんてなかったからね、
入り組んだ材木置き場の中を走り回って遊ぶだけでも、けっこう楽しかったよ。
でね、その同級生から一つ注意されてたことがあるんだ。
「木とき木を積み上げた隙間を覗いちゃダメだ」って。「何で?」って聞いたら、
「隙間が別の木にぶつかって、行き止まりになってるとこ、そういうのはいいけど、
 ずっと素通しで向こうが見えるようなのは、そこに変なものが見えることがあるから」
大きな隙間や、四方を囲まれてないのはなんでもないらしかった。
うーん、小学校6年のときだったからね、素直には信じなかったよ。
「じゃあお前、見たことがあるのか?」「あるよ」 「どんなやつ?」

「鉢巻きを締めたオッサンだった。こんくらいの隙間から、
 ずっと材木が奇跡的に重ならないとこがあって、かなり離れた通路が見えたんだよ。
 望遠鏡みたいな感じで面白くて、顔をあてて覗いてたらオッサンの顔が急に出てきた」
「それ生きた普通のオッサンじゃねえのか」
「そう思うだろ。俺は、怒られるかもと思って頭を外そうとしたんだが、
 どういうわけか体が動かなかったんだ。そうしてるうち、
 向こうのむっつりしたオッサンの顔が、だんだん溶け出したんだよ。
 お寺の太いロウソクが溶けるみたいに、ダラダラ流れ落ちながら」
「怖いな」 「ああ、逃げられないし、目も閉じられなかったよ。
 だから最後まで見てるしかなかった」
「で、どうなったんだ?」

「オッサンの顔はだんだん細くなっていって、それまで離れて向き合ってても
 目が合ってなかった感じだったのが、こっちを見てにやーっと笑い、
 ドロッと溶けて消えたんだ」 「うわ、それで?」
「小さい頃だったから、泣きながら家に戻ってしゃべったら、母親が親父に言って、
 親父が俺をその隙間のとこまで連れてって、自分で確認すると、
 角材の切れっ端を持ってきてそこに詰めたんだよ。
 だから、今でもあちこち探すと、けっこう詰め物されてる場所があるんだ」
「で、何かまずいことがあったか」 「何もないけど、これからは見るなよって言われた」
そう言われると、確かにあちこち木材を積んだ隙間に、青いシートが見えたり、
木切れが不自然に詰められてるとこがあったんだ
だからね、そういうとこがあっても、見ないようにしてた。怖がりだからね。



あとね、御神木ってあるよね。神社の杜に生えてる大木だよ。
クヌギ、ナラ、スギ、ナギとかいろんな種類があるらしいけど、
そういうのはたいがい樹齢何百年にもなってる。それが枯死したり、神社の移転とか、
いろんな事情で伐られる場合があるんだな。
そういうのも材木問屋に運ばれてくる。一本で数百万ってのもあるらしい。
ほら、山師って言葉があるだろ。今は詐欺師みたいな使い方をされるけど、
実際はギャンブラーみたいな意味だったんだ。
山一つ買って、銘木の大樹があれば大儲けだし、逆になかったら大損ってこと。
御神木の場合は、大切に扱われてて当たり外れはないから。
でね、そういう木が運ばれてきたときには神職を呼んでお祓いをする。
その現場に何回も立ち合ったことがあるよ。

そんときはスギの木だったな。枝は払われ、皮のついた丸木状態でいくつかに切られて
トラックに載ってた。その前でお祓いをするんだ。
もちろん俺らは子どもだから、正式に立ち合ったってわけじゃなく、
その友だちと遠くから離れて見てたんだよ。
神主さんが何度も礼をしてから、あの御幣っていうのかな、
白いギザギザのやつを持って台に上がり、トラックの上の木に向かって祝詞を唱える。
まあ、それだけのことなんだが、後で紅白餅がもらえるからね。
でね、神主さんがトラックの荷台に上がって、
柄杓で壺の水をかけ始めたとき、急に木の一部から火が出たんだよ。
火柱って言葉があるけど、まさにそんな感じ。
真上に細い火の棒がぐーんと伸びて、数mの高さにまでなった。

神主さんは慌てることなく、数歩下がって柄杓を置き、御幣を持ち直して、
何度も振りかざして祝詞をあげたんだよ。
そしたら火柱は、噴水の水が落ちるみたいにすぼまっていって、
消える間際「おあーっ」って大きな声が響き渡ったんだ。
女の声だったよ。悲鳴に近かったな。
でね、それからまたいろんな儀式をして、小1時間くらいかけてお祓いが終わったんだ。
それが済むと木が下ろされて、職人さんたちが手斧で、
さっき火が上がったところを刻んでた。
やがて「あった、出てきた」って声がして、和紙に包んだものを神主さん渡し、
神主さんはそれを持って帰っってたよ。え、何だったかって?
あれだよ、五寸釘。丑の刻参りで使われたやつだな。







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