いざない

2015.02.24 (Tue)
*バカ話です

昨日な、朝一からパチンコ行ってたんだよ。ああ、俺は遊び人なんだ。
といっても、ヤクザとかじゃねえよ。ここ何年かずっとツキがあってな。
大きな声じゃ言えねえが、2年続けて宝くじの2等が当たったんだ。
1千万円を2回ってことだ。うーん、いや、変な信心とかしてねえよ。
神様とは縁とかないと思ってたんだが・・・ まあ聞いてくれ。
でな、宝くじ以外のギャンブルもずっとツキまくりで、競輪、パチンコ、麻雀。
大きく勝つわけじゃねえが、まず負けなし。つまり宝くじの金に手をつけなくても、
小遣い銭には困らなかったんだ。
ところが、その日は違って、朝からずっとかすりもしなかった。
台を替わると、俺の後にそこへ座ったやつが大当たりする。
絶対確実なはずのリーチでなぜか外れる・・・

で、3時頃までに10万近く負けたんだ。
別に金はあるから痛手じゃないんだが、
何となくツキが変わった気がして嫌な感じでよ。
とりあえず河岸を変える・・・別の店に行こうとしたわけよ。
したら、大勝ちして店員に台車押させてたオッサンに呼び止められた。
「ん、あんだ?」不機嫌にこう言ったら、オッサンは、
「あなたね、さっき台替わったとこへ座らせてもらって、これだけ勝ったんだ。
 だから礼というか、ちょっと教えるけど、今日ね、絶対神社に行っちゃいけないから」
訳わかんねえこと言うなあ、と思って無視して去ろうとした。
したら「宝くじなんか当たってるでしょ」これはちょっとびっくりした。
親戚とかにも話してないからね。

オッサンは「わたしは少し占いやってるんだが、あんた、変なのが背中に憑いて、
 あんたを神社に行かせたがってる。でもね、行くとたぶん良くないことが起きる。
 嘘だと思ってもいいけど、とにかく鳥居くぐっちゃダメだよ」
こんな風に続けたんだ。
「なんで宝くじとか言うんだよ。神社なんて元から何年も行ったことはねえよ」
「まあそうだろうけど、たぶん次々お誘いがくるから。でも乗っちゃいけないよ。
 今日が過ぎるまで、部屋に戻って籠もってたほうがいい」
こんなやりとりをしたんだ。それ以上詳しくは聞かなかったが、
おかしな話だなあ、と思いながら次の店に行って、さらに5万負けた。
1回の当たりもなし。こりゃひでえだろう。
さすがに今日はダメだと思ってメシ食いに外へ出た。

ラーメン屋のカウンターにいたら、次から次へと携帯に連絡が入るんだ。
最初は田舎の母親だった。出ると「あんたね、どっか近くの神社に行きなさい」って、
何年も顔合わせてないのに、いきなり言われたんだ。「なして?」と聞くと、
「昨日の夜、夢に手に裁縫のハサミを持ってる怖い女の人が出てきて、
 あんたの息子に神社にお参りさせなさいって、ハサミをカチカチ鳴らしながら、
 何度も言ったんだよ」
こんな内容で、俺は神社に行けばいいのか、行かないほうがいいのかわからなくなった。
でな、電話もメールも次々に来たんだ。
今の遊び仲間、昔の女、名前も忘れてた数年前のバイト先の上司、
顔見知りの筋者・・・そういうのから続々連絡が来て、みなが口裏合わせたように、
「神社へ行け、神社へ行け」って・・・

嘘だと思うか? 別に俺は謝礼がほしくて、ここへ話をしに来たわけじゃねえぞ。
さっき言ったように金はあるんだ。・・・そうか、じゃ続ける。
でな、「何で俺が神社へ行かなくちゃいけないんだ?」って度ごとに聞いたら、
現在つながりの薄いやつは「何となくそう思った」って言葉を濁すし、
つきあいの濃いやつは、母親と同じように「怖い女が夢に出てきて・・」
って言うんだよ。「どんな女だよ?」って問い詰めると、
「顔は覚えてないが、とにかく怖かった。手に和バサミを持ってた」
こう、内容が共通してたんだよ。なあ、不可思議な話だろ。
ただまあ、俺としても、宝くじを始めとして、ここ最近ずっとのツキは異常だと思ってた。
だからよ、神さんが俺に遊んで暮らさせたいってんなら、
どっかに礼を言いにいくべきかなって、薄々考えてなくもなかったんだ。

近くの駅前の公園でずっと電話を聞いてたんだが、
とにかく連絡がひっきりなしに来るんで、いったん携帯の電源を切った。
10時近くになってたな。どうしようか迷ったが、
最初の店で会ったオッサンの話も気になるんで、
とにかく部屋に帰ってあと2時間をやりすごし、
明日になったらどっかの占い師に相談でもしようと考えたんだよ。
それ次第で、お参りに行くなら行くって決めようって。
でな、俺の部屋はそっから歩いて15分くらいなんだ。
表通りを行けば、神社があったような気がしたんで、住宅街の裏道へ入って、
ぶらぶら歩いてたんだよ。でな、人気のない公園の横を通ってるとき、
植え込みの前に女が足を投げ出して座ってたんだ。

うーん、服装はジーンズにダウンだったのを覚えてるけど、
顔の記憶がない。ただな、母親や知り合いが言ってた女はこれだ!
って直感的にわかったんだよ。ああ、怖かったんだ。
俺が来た道を戻ろうと後ずさりしかけたとき、急に女が立ち上がった。
したら、右手に和バサミを持ってた。で、すごい勢いで近づいてきたんだよ。
あれは走るってんじゃなかったな。
足はほとんど動いてなくてアスファルトの上を滑るようにして・・・
もしかしたら、リニアモーターカーみたく、宙に浮いてたかもしれない。
ハサミを前に突き出して、「神社へ来なさい~」ってかん高い声を出して・・・
避けるヒマがなかったんだ。
だから、俺はとっさに公園の生垣へ飛び込んだんだよ。

生垣はそんなに深くなかったけど、植え込みが横に続いてて、
俺は立ち上がらず、無我夢中でその間を這って逃げた。
「神社へ~ 神社へ~」って声が聞こえてたよ。這い進んでると、
金網にあたって行き止まった。で、そこで息を潜めて隠れてたんだよ。
「神社へ~ 神社へ~」って声はだんだん遠くなっていったんで、
これは俺から離れてるんじゃないかと思った。でもよ、完全に聞こえなくなってからも、
20分以上はそこに潜んでたんだ。
それから、そろそろと頭を上げてあたりを見た。暗くてよくわからなかったが、
女の姿はないと思った。それでも用心して、金網に沿ってしゃがんだまま進んでった。
したら公園の反対側、人通りの多い方へ向かってるようだった。
でな、高い竹垣があって、その向こうを車が通ってるのが見えた。

ああ、これなら大丈夫だろうと思って、その下をくぐり、通りに出ようとしたんだよ。
その瞬間、頭の中で「カキーン」という金属音がした。
鉄の階段の手すりを、鉄の棒で叩いたような音だ。それに続いて、
「当た~り~」という女の声が後ろからした。「えっ!?」と思って振り向いたら、
今くぐった竹垣の腰より下のあたりにアレがあったんだよ。
ほら、アレだよアレ。「小便するな」の注意の看板に鳥居がついたやつ。
しかもその下には、どういう意味か知らねえが、和バサミの絵までついてたんだ。
「あ、あ、これってもしかして鳥居をくぐったことになるのか?」
そう考えたがよくわからなかった。で、今日もパチンコに行ったがズタボロに負け。
それでよ、ここの話を聞いて来てみたんだ。なあ、いったい何があったんだろ?
これから何が起きるんだろ?







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