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幽霊の石の話

2015.02.27 (Fri)
小学校のときのことだけどね。学校から400mくらい離れた山沿いに、        
けっこうこんもりした森があって、そこに神社があったんだ。
わりと新し目の社殿だったけど、それもそのはず、
空襲で焼けてしまって、立て直されたのは戦後のことなんだ。
境内からやや離れたところには、戦没者慰霊塔ってのもあった。
そっからさらに山のほうへ入っていくと、腐葉土に半ば埋もれかけた石があってね。
これは人工的なもんで、黒っぽい、四角い形をしてたけど、
表面に出てるのはその面の一部だけだった。
そこに手形がいくつもついてるんだよ。
そこらで遊ぶ子どもの間では、幽霊の石って言われてたんだ。
いや、石に手形が浮き出てるってわけじゃなく、手のひらの形に彫られてた。

小学校には代々言い伝えがあって、その石を踏んづけると祟られるって内容だった。
この「昔から伝えられてる」って部分が、子どもには効くんだよ。
誰かが思いつきで言い出したデタラメじゃなくて、
いかにも本当にあることみたいに思えるじゃない。
だからあんまり近づくやつはいなかったよ。
でもまあ、そこは子どもだからこそね、
祟られるって言われてることをやってみたくなるときもあるんだな。
6年の夏休み前だったと思うけど、学校帰りにその森に寄って遊んでた。
クワガタが見つかるときがあるんだよ。
だから男だけ4人くらいでそこへ行って、大きな木を見て回った。
まあね、クワガタは夜行性だから、昼間だと簡単にはつかまらないんだけどね。

30分以上さがしたけど、やっぱり収穫はなし。みなつまらなくなって、
自然とその石があるほうに足を向けた。
まわりを取り囲んで、「これ踏むと祟られるって話知ってるよな」
誰かが言い出した。「そんなの嘘だよ」ってすぐに反応があって、
「でも、卒業した去年の6年生もその話してたぜ」
「でもよ、祟られるって言ったって、学校で死んだりした生徒なんていないじゃん」
「昔はいたらしいぜ」「昔っていつのことだよ?」
「俺らが入学するずっと前」「証拠はあるのかよ?」
こんなことを口々に言い合ったんだ。でね、予想どおりというか、
一人が「じゃあ、みなで踏んづけてみようぜ」って言い出した。
「ちょっとならいいだろ」「祟りなんて信じてるやつはびびりだよな」

それで、全員でまわりを囲んだ状態から、
いっせいので一歩だけ踏んでみようってなった。
俺は嫌だったけどな。どっちかというと幽霊の話とか好きじゃなかったし。
でも、そういう成り行きになった以上、やらないとしばらくからかわれることになる。
今にして思えば、他のやつらもそんな感じだったんじゃないかな。
「いっせいの」全員でかけ声を出して、全員が片足でぴとっと踏みつけた。
やらないやつはいなかったよ。でね・・・まあ当然というか、何事も起こらなかった。
「なんだ、たいしたことねえじゃね」
中に調子にのったやつがいて、「ちょっとどうなってるか見てみようぜ」
そう言って、ズックの足で石の上の腐葉土をのけ始めた。
そしたらどんどん土が詰まった手形が出てくるんだ。

きれいに並んだ形で手の形に彫った跡が、見えるとこだけで10個近く出てきた。
手形はみな小さくて、俺らと同じ小学生のものって感じだったな。
「これ、なんかの作品じゃないか」「彫刻みたいなものだな」
それ以上何も起きなかったから、飽きてきて森を出、
そっからわかれわかれになって家に帰ったんだよ。
その日の夕食のとき、親父に石の話をしてみた。
親父もずっと子どもの頃からこの地域に住んでて、同じ小学校を出てるんだ。
「神社の森の慰霊塔の奥に幽霊の石ってあるの知ってる?」
親父はちょっととまどったような顔をしたが、やがてニヤッと笑い、
「ああ、知ってる、知ってる。踏めば祟られるっていう手形のついた石のことだろ」
「昔からあったのか?」 「ああ、俺が小学校のときからあったし、その話も広まってた」

「それで、祟りって実際にあるん?」
俺がこう聞いたら、親父はぷぷっという感じで吹き出したんだ。
そして笑いながら「ある、あるんだよ。もしかしてお前踏んだのか?」逆にこう聞いてきた。
怒られるかと思って俺が言葉を濁すと、「怒りゃしないからちゃんと言え」
「踏んだ」こう答えると、 親父はいよいよ面白がっている顔になり、
「そうか踏んだのか、じゃあ明日は学校休みだな。それと今日は早く寝たほうがいいぞ。
 遅くまで起きてると幽霊が来るかもしれないから」
俺は親父の様子を見て、祟りがあるのかないのかよくわからなくなった。
少しは怖い気持ちもあったし、それで言われたとおり早く寝たんだよ。
で、その晩夢を見た。すごく生々しい感じの夢で、俺は街中に立ってたんだが、
まわりの様子がすごい違和感があった。すごく昔っぽい感じがしたんだ。

空が暗く、煙が充満してるみたいだった。ドーンドーンという音がひっきりなしに続いて、
それに混じってサイレンの音が聞こえてきた。
低い黒雲の中にときおり閃光が走り、熱さを感じた。
「ここにいると危ない」って気持ちになり、走ったんだ。
知らない町の中のどこをどう走ったか覚えてないけど、学校のようなとこの前に出た。
俺らの小学校じゃなく、もっとずっと古い建物だったよ。
その校門のところにあの石が立ってた。あたりはもうかなり暗くなってて、
俺はふらふらと校門をくぐったんだよ。いくらか歩いたら、いきなり足首をつかまれた。
下を見ると、たくさんの手が暗い中から生えていて、
俺の脚やズボンをつかもうとしてたんだよ。「うわー」と叫んで目が覚めた。
起き上がろうとしたが、めまいがしてすぐにベッドに倒れてしまった。

誰かが俺の額に手をあてた。「ああ、やっぱり熱が出てるな」親父の声がした。
薄目を開けると、親父が出勤するときの格好で立ってて、
「午前中いっぱいは熱があるから。学校にはもう休みの連絡をしてある。
 医者に行く必要はないから、ちゃんと寝てるんだぞ」
俺はかろうじて「どうして熱が出るってわかったの」って聞いたら、
「帰ってきてから話してやる」こう言って出てったんだよ。
その後、母親がアイスノンなんかを出してくれて、俺は3時過ぎまで寝てたんだ。
そんときは夢は見なかった。で、目が覚めると熱はすっかり下がってたんだよ。
そのままベッドでマンガを読んでると、やがて親父が帰ってきた。
夕食になって、俺は腹が減ってたんで、何杯もおかわりした。
そのときにこんな話を親父から聞いたんだよ。

「あの石な。お前、夢で見たんじゃないかと思うが、
 昔のこの地区の小学校の校門になってたやつなんだ。俺の代じゃなく、もっと昔の。
 その小学校があったのが、今のあの神社がある手前のあたりなんだ。
 卒業制作って言うのか、6年生が自分の手形を型取りしたのを彫って、
 張り合わせたもんだ。そのときの残骸が、
 どういうわけか何十年もあそこに残ってるんだ。その小学校は空襲で焼けてしまった。
 運の悪いことに、学校の校庭が焼け出された人の避難場所になっててな、
 たくさんの人が亡くなったんだよ。
 これは死んだじいさん、俺の父親から聞いた話なんだが、市史にも載ってるぞ。
 それと、空襲のときの様子を夢で見ただろ。
 なんでわかるかっていうと、父さんもな、子どものときにあの石を踏んでるんだよ」

俺はただただあっけにとられて聞いてるだけだったな。
で、翌日すっかり直って学校に行ったら、なんと、あそこで石を踏んだやつらは、
全員が熱を出して俺と同じに学校を休んでたんだ。
で、話を合わせてみたら、全員がほとんど同じ夢を見てた。
暗い空と轟音の中を走って、昔の小学校に入ったとたんに足をつかまれる夢。
ああ、あの石はまだあるはずだ。何回か見に行ったことがあるんだよ。
手形はかなりかすれてしまっていたけどな。
あと、そんときに、地域の小学生の姿を見かけた。
あいつらも、あの石をいずれ踏むのかねえ。
まだ、祟りっていうか、効力が残ってるんだろうかって考えると・・・
もう一度踏んで確かめてみたい気もしたが、やめておいたよ。





 
 
 
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