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叔父さんの話

2015.03.09 (Mon)

俺の叔父さんの話です。亡くなった母の弟なんですが、霊能があるんです。
もちろんプロの霊能者ってことじゃなくて、仕事はヘリの操縦士です。
といっても、自分で空を飛ぶわけじゃなく、リモコンヘリです。
ほら、農薬を散布したり、カメラを積んで空中撮影したりするやつです。
母は4年前に病気で亡くなったんですが、それ以後もちょくちょく遊びに来て、
奇妙なものを持ってきてくれたり、不思議な話を聞かせてくれたりします。

逆木

叔父さんが、山へ仕事で行ってて、その帰りに家に寄りました。
「ほら、いいもの見つけたから、おみやげ」こう言ってくれたのが、
何の変哲もない15cmほどの木の枝でした。
木の皮がむけ、つるっと白く表面が光ってて、
生木と枯枝の中間って感じで軽かったです。「これ、何ですか?」って聞くと、
「ただの小枝みたいだけど、けっこう珍しいもんだ。
 猿が首を吊った枝の先のほうをちょっと折って持ってきた」
「えー、猿が首を吊るって、そんなことあるんですか?」
「嘘だよ」・・・まあ、こんなノリの人です。
「でも、珍しいのは本当さ。よく神社のご神木になる種類の木なんだけど、
 これは大木の脇の地面から一枝だけ上下逆さまに生えててね。珍しいし実際役に立つ」

「どんなふうにですか?」
「うん、いろんなことに使えるけど、例えば酒の味を良くするとか。
 日本酒、家に置いてる?」こう聞かれたんで、
「ふだん、俺も父も日本酒は飲まないんですが、料理酒ならあります」
「じゃあ、それでいいから、コップも2つ持ってきて」
透明プラスチック入りの安い料理酒を持ってくると、叔父さんはコップに注いで、
「まず最初に味見してみなよ」
もちろん料理酒ですから、美味いということはなかったです。
そしたら、木の枝をマドラーがわりにして、30秒くらいかきまぜ、
「これでいいだろ。飲んでみなよ、だまされたと思って」
そしたら、ほんとうにおいしくなってたんですよ。

一口含んだだけで違いがわかりました。
「うわ、これスゴイですね。売り出したら大儲けなんじゃないですか」
「いや、売り出すほどないし、それにこういうのって、
 あれこれ分析されるとよくないんだ」
「あれに似てますよね。ほら、車のガソリンタンクに入れると燃費がよくなる金属とか」
「あーでも、それは磁石とかだろうし、インチキも多いだろ。これとは違うよ」
「何の酒にでも効くんですか?」
「試したことはないけど、醸造酒だけじゃないかな。日本酒や洋酒ならワイン。
 焼酎とかウイスキーはほとんど効果ないんじゃないか」
こんなやりとりをしまして。
その小枝は3か月ほど家にあって、ずっと効果が続いてました。

親父は焼酎党だったんですが、日本酒を飲むようになりまして。
安い紙パックのお酒でも、かきまぜると匂いからして違ってきました。
いえ、今はないんです。あるとき、マンションのベランダの窓を開けてたら、
カラスとは違う小さい黒い鳥が入ってきて、
テーブルの上にあったのを咥えて持ってっちゃったんです。
うーん、たぶんこの小枝をねらってたんだと思いますよ。
楊枝立てに、スプーンや小さいフルーツのフォークと一緒にさしてたのが、
さっと、これだけを咥えていきましたからね。
さあねえ、巣でも作るのに使うんでしょうか。
叔父さんが来たときにそのことを話したら、
「ああ、その鳥も知ってるんだな。あの枝がいいもんだってこと」こう笑ってましたよ。

蛇石

うちの親父がJRを退職して、けっこうな額の退職金を手にし、
悠々自適の生活を始めました。まだ年金の支給が60歳からだった頃です。
暇をもてあまして、盆栽とか集め始めたんですが、
さらに石を買ってくるようになったんです。置物の石です。
川石に模様が浮き出たやつとか、水晶の結晶がくっついたやつとか、
そういうのを床の間に並べて磨いたりしてました。
その中に蛇石ってのもあったんです。
専門的なことはわからないんですが、緑色の石に白く蛇の形が浮き出したやつ。
蛇は、見ると目鼻や口もありましたから、
たぶん天然の模様を人工的に加工したものなんじゃないかと思います。
けっこう高かったはずです。

叔父さんがある日曜に来て、親父といっしょにそれらの石を見てたんです。
親父は自慢気でしたが、叔父さんは、
「石はねえ、イワナガ姫って知ってるかなあ。古事記に出てくる長寿の神様なんだけど、
 中には寿命に関係あるものがあるんですよ。
 たいがいは大丈夫だとは思いますが」
こんなふうに言って、蛇石を見ると、
「うーん、これ日本のものじゃないですね。輸入品かなあ。
 あんまりいいものじゃないんで、戻せたら戻したほうがいいです」
親父は気に入ってたので不満そうでしたね。そしたら叔父さんが、
「じゃあ、よくないっていう証拠を見せますよ。○○君電気消して」
俺に部屋の電燈を消させて、自分は窓のカーテンを引いたんです。

秋の午後のことでしたけど、部屋の中が薄暗くなりました。
叔父さんは蛇石を台座ごとテーブルに載せ、
その前に座って目を閉じました。そしてしばらく集中したあと、
口をすぼめてぽっと息を吐いたんです。
そしたら、口から薄く七色に輝く塊が出てきました。
それは湯気みたいな感じで、握りこぶしくらいでしたが、
虹の色だってことはわかりましたよ。シャボン玉みたいに蛇石の上に漂っていき、
まわりを衛星みたいに回ってたんですが、蛇の口のところにくると、
すっと消えたんです。まるで蛇が口を開けて飲み込んだみたいでしたが、
実際は石の蛇なんで、そう見えただけだと思います。
叔父さんはそれを感じたのか、目を開いて立ち上がり電気をつけました。

「今の見ましたか?」そう聞いて、父が、
「見た、見た、どうなってるんだ?」
「うん、ちょっとだけ生気を出してみたんです。そうね、寿命にすれば3日分くらい。
 ああ、でもすぐ回復するのでご心配なく。
 この蛇、それ食べちゃったでしょう。やっぱし置いとくのは危険ですね。
 普通の人は少しずつ寿命を取られちゃう。その分、石はつやつやになって」
親父はびっくりしましてね、さっそく返品しようとしましたが、
取引した会社と連宅がつかなかったんです。
電話で叔父さんに相談したら、「転売するのはダメだよね。壊せば一番いいだろうけど、
 それは手間がかかる。県内の一番大きい神社に奉納するのがいいんじゃないかな。
 宮司さんが年配の人なら、そういうのは慣れてるから」こんなアドバイスでした。

関連記事 『叔父さんの話2』

『蛇石』






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