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タクシーの話

2015.03.13 (Fri)
事故予知

自分はけっこう仕事で旅行しますが、自分の車を使うことはあまりありません。
ほとんどが公共交通機関で、タクシーにも乗ります。
長距離かつ話好きそうな運転手さんだった場合は、
「なんか怖い話とか知ってますか?」などと聞くこともあるんですが、
それなりの怪談が聞ける割合は、10回に1回程度のものですね。
これもそんな中の一つです。
場所は岡山県です。駅に着いたときはバスのない時間でしたので、
目的地までタクシーで行くしかなく、乗り場でたまたま当たったのが個人タクシー。
自分のボストンバッグを見て、「ご旅行ですか」って話しかけてきた、
初老の運転手さんとあれこれ話した後、
「ところで、なんか怖い話とか知ってますか」そうい聞いてみたんです。

ま、驚いたんだと思いますけど、運転手さんは少し黙ってから、
「そうね、幽霊のお客さんを乗せて、いつのまにか消えてたなんてことはないですね。
 あの、シートがぐっしょり濡れてたとかいう話。
 なんというかね、うまく説明できないんだけど、
 幽霊の出方として、そういうのはすごく派手だと思うんですよね。
 私はこの世に、不思議なことはあるけど、
 そういう目立つ、派手派手しい形では起きないって感じます」
「じゃあ、どんな形で」
「うーん例えばね。ある国道を通ってたとして、
 事故がその先で起きてるって、わかるときがあるんです」
「へえ」思わず身を乗り出しました。

「これは条件が合えば、まず外れることはなくわかりますよ。
 どんな条件かというのは今言いますけど、
 自分でも不思議だなーって思います。これに気がついたのは、
 タクシー会社に入社して2年目くらいからです」
 「それ、どうやってわかるんですか」
「それがね、きゅっと視界がせまくなる感じがするんですよ。
 うまく言えないんだけど、
 フロントガラスから見える前の景色が小さくなるっていうか。
 そうね、望遠鏡を反対側から覗くと物が小さく見えるでしょ。
 あそこまで極端じゃないけど、ま、雰囲気としては近いですね」
「うーん、目に何か起きるんでしょうか」

「いや、目だけじゃなくてね。今はオートマですけど、
 昔、マニュアルだった頃には、自分の動作の一つ一つがゆっくりに感じられるんです。
 実際に、ゆっくりなわけはないですよ。
 毎日同じことを何回となく繰り返してるんですから。
 ああ、またスローモーションのモードに入ってるな、って思います。
 でね、そうなったときは、とにかくあたりに気を配り、
 慎重に慎重に運転するんです。スピードも落とし気味にして。
 それで、10分も行くと前に事故車やパトカーが見えてきて・・・」
「どんなときにもなるんですか」
「いえ、真っ直ぐな道の先で事故が起きたときだけです。
 つまり事故が起きた瞬間にその道を通ってるってことですね」
 
 それと軽い接触程度ではならないみたいですね。必ずどっちかの車は大破してる」
「うーん、他の運転手さんもそういうことを感じたりしてるもんでしょうか」
「いやいや、どうやら私だけみたいですよ。
 昔の仲間でそういう話をするやつはいませんでしたね。
 飲み会なんかがあれば、奇妙な体験をしたやつは話しますけど、
 そういう話題が出たことはなかったね」
「不思議ですし、何かの役に立ちそうですよね。
 これは、亡くなったり怪我した人の気が、
 道路を通して伝わってくるってことなんでしょうか」
「私も初めはそう思ってたけど、今は違うんじゃないかって考えてます。
 どちらかというと、壊れた車の気なんじゃないかなあって」

幽霊車

これは別のときに聞いた話で、場所は四国です。
「幽霊の話? いや、ないわけじゃないけど。別に話してもいいけどね。
 あの幽霊とか言われてるものって実体はないんだと思うよ」
「どうしてですか」
「だってねえ、車も幽霊になるんだよ。でも、車って生き物じゃないでしょ」
「まあ、そうですね」
「見たことがあるのは2回だけだよ。1回は深夜の国道の陸橋の上でね。
 そこは1車線なんだけど、中央分離帯があって、
 対向車線にはみ出せないようになってるとこ。
 夜だし辺鄙な場所だから、他の車がいるのに気がつかないわけはないんだよ。
 ところがそこ通ってて、はっとしたら真正面から突進してくる車があったんだよ」

「逆走ってことですか」
「そう、でかいパジェロだったはず。車種もはっきりわかったし、
 本物の車と寸分違わない。それどころか、
 こっちのライトが向こうのガラスに映ってるのも見えたくらい。
 そんときの距離は100mなかったね。橋の上だから横に逃げ場はない。
 うわーって思いながらブレーキを踏んだ。もちろん間に合わなくて、
 ぶつかったと思った瞬間。そのパジェロが消えたっていうか、通り抜けてったっていうか」
「それは怖いですよね」「ああ、もう寿命が縮んだよ」 「運転してる人の姿も見ましたか?」
「うん、それがさっき言った通り、こっちのライトがあたってはっきり見えなかった。
 ただね、向こうのミラーのとこに,
お守りのようなのがぶら下がってたことは覚えてる。そこだけ見えたんだよ」

「あと1回ってのは?」
 「うん、こんときはね、ちょっとヤバそうな風体の2人組のお客さんを、
 港まで乗せたときなんだ。港湾道路から外れて、埠頭まで行ってくれって言われた。
 深夜だったんで、怪しいと思うだろ」 「ドラマみたいですね」
「だから、埠頭の倉庫前で、その人を下して料金もらったときはほっとしたもんだ。
 チップまでくれたんだよ。で、戻ろうとしてると、
 道でもない船着き場のところを白い車が猛スピードで走ってきたんだ。
 あっという間のことで、車種もわからなかったよ。車は減速なしで海に飛び込んだ」
 「それで?」 「当然、車を停めて下りてみたんだけど、
 不思議なことにそこの海には変化がないんだよ。
 そういえば音もしなかったし、波しぶきがあがったのも見えなかった。

 それによ、車ってそんな急に沈んでしまうもんじゃないだろ。
 あちこちに空気が入ってるから、ゆっくりゆっくり沈んでく。
 今は水没時に窓を割るハンマーとかも売ってるだろ。
 泳げる人なら脱出できるくらいなんだ」
 「震災の津波の後に、そういう話も出てましたよね」
「だからね、幻の車を見たんだろうって。ただね、見たのは私だけじゃなくて、
 さっき下りた2人組も、岸壁の突端まで出て、私と同じ海面を見てたんだよ。
 ああ、あの2人にも見えたんだろうって。
 なんか雰囲気が悪いんで、呼び止められる前に、早々に車に乗り込んで帰ってきた。
 もちろん警察には連絡したよ。後で事情聴取もあって時間をとられた。
 けど、やっぱり飛び込んだ車はなかったんだよ。そんときにはね」
 
 
 
 

 
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