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2015.03.19 (Thu)
始まりはネットの某掲示板からなんだ。霊視スレってのがあるんだよ。
そこには何人か常駐してコテつけてる霊視鑑定士ってのがいてな。
ああ、コテってのは固定ハンドルという意味で、
掲示板上で使う仮の名みたいなもんだ。そこに相談者がやってきて、
「埼玉県、女、32歳、最近疲れやすく夢見が悪いので見てください」とか書き込む。
するとその時間にスレにいた鑑定士が回答をするって形になってるんだ。
いや、いや、信じちゃいなかったよ。
霊視なんてもんがあるはずはないし、相談者のほうも、
それを知ってて、お遊びで適当なことを書いてるんだろうって。
なんでそう思うかっていうと、何度か相談をしたことがあるんだ。
いや、スレを盛り上げるためのお遊びだよ。

だから男なのに女って書くし、住んでる県もデタラメ。
相談内容もその場で適当に考えた嘘だよ。・・・そんなんだから、
鑑定は当然当たらないし、それどころかこっちの嘘も見抜けやしない。
でもな、当たってないとか、こっちが嘘書いたってバラすのは反則だ。
そんなことしたら、せっかくの遊び場が壊れてしまって続かないからな。
でな、こないだも女のふりをして、「週末の夜になると金縛りにあうようになり、
 病院に行きましたが検査しても何でもないと言われました」って相談を書いたんだ。
したら、「しゃむ」っていうコテの鑑定士が出てきて、
「鳥が憑きかけています。怨みを買った人に心あたりがあれば謝罪をおすすめします」
こんな回答をもらったんだよ。それ見て「あー何か気味悪いな」とは思ったけど、
どうせ適当だろうと気にはしなかったんだよ。

その「しゃむ」ってコテは、いつも常駐してる鑑定士のじゃないし、
俺の相談に答えた1回だけで、それ以後はスレに出てこなかったし。
どっかの通りすがりのやつが、デタラメに答えたんだろうと思った。
怨み? うーん、それは俺は金融業なんで、心あたりはないことはないっていうか、
仕事の関係だからあったとしてもどの話なのかわからない。
私生活じゃあ全くなかったね。それから3日くらい何も起きなくて、
そのことはもう忘れかけてたんだが、日中、外回りに出たときに、
一息つこうと駅前の噴水のベンチに腰かけて、缶コーヒーを飲んだんだ。
したら、母親に連れられた5歳くらいの男の子が脇を通りかかったとき、
俺のほうを指さして、「ねえ、ねえ、あの人の頭に黒い鳥がとまってる」
って言ったんだ。思わず頭をさわったが、鳥なんているわけはない。

母親は俺のほうを見、それから子どもの顔を見て、
「そんなこと言っちゃダメでしょ」みたいにたしなめ、手を引っぱって過ぎて行った。
・・・こんときも、まあね、子どもの話だし、気にすることもなかったけどな。
ところその夜、マンションに戻って、発泡酒飲んで寝ようとしたとき、
頭のここ、後頭部の右側の一点に鋭い痛みを感じたんだ。
普通の頭痛とかとちょっと違ってた。
一か所だけ、指先くらいの部分がそれこそキリでもねじ込まれるように痛んだんだ。
持ってたテレビのリモコンを放り出してしまうくらいの痛みだった。
最初は傷だと思ったくらいだったが、さわっても血は出てない。
それからベッドの前でしゃがみ込んで動けないほどの痛みが続いたんだ。
治まったのが約1時間後。

治ってみると嘘みたいな感じで、浴室で鏡を見ても、頭を洗ってもなんともなかった。
だから、もう1回くるようなら医者に行こうと思って、その日は寝た。
翌日だよ。そんときは仕事で戸別訪問した住宅街を歩いてた。
したら路地奥のゴミ置き場前の地面にカラスがいて、
俺が通りかかるとこっち見て大声で鳴いた。
カラスが人間に向かって鳴くなんて珍しいな、と思ってたら、
急に飛び上がって、俺のほうに向かってきた・・・んだが、
思わず頭をすくめた俺の前で、弾かれたように地面に落ちたんだ。
しばらくもがくような動きをしてたが、体勢を立て直して別方向に飛んで行った。
「変なことがあるもんだなあ」と思いながら仕事を終えて部屋に戻ったら、
前日とほぼ同じ時間に頭痛が始まった。

同じ個所で「んーんー」ってうなり声が出るほど痛い。
この痛みは俺じゃなきゃわかんねえよ。なにしろ苦し紛れに自分の右手を、
がっぷり肉がそげるまで噛んでたのに、
頭のほうが痛くて気がつきもしなかったんだ。
痛みは前の日同様小1時間で治まったが、
床のじゅうたんが手から出た血でぐしょぐしょに汚れてた。
それで、頭のほうは嵐が過ぎたみたいにピッとも痛くない。
まあ手のほうは包帯巻いたら血は止まったんで、
その傷も合わせて翌日医者に行ったんだよ。手のほうは数針縫っただけで、
頭のほうはその場でできる検査をいろいろ受けたが原因は不明。
CTスキャンを予約することになって、その日は痛み止めをもらって帰ったんだ。

過去2日とも、痛みが始まったのは夜の10時ころだったから、
その時間になるのが怖くてしかたなかったよ。
でな・・・やっぱり痛みはきた。医者にもらった薬に期待をかけてたんだが、全く効かない。
何かを噛んだりしないよう、タオルを咥えて、
体を丸めて必死で耐えようとした。でも何回も発作みたいにして立ち上がって・・・
そんときに居間のサッシに自分の姿が映って見えた。
したら頭の上に鳥・・・かなり大きい黒い鳥が後ろ向きにとまって、
俺の後頭部をつついてるように見えたんだ。
一瞬のことだったし、地獄の苦しみの中でのことだから、
自分でもホントに見たのかは怪しいけどな。・・・1時間が過ぎ、痛みは嘘みたいに消え、
さっき鳥を見たなあと考えて、あの掲示板のことを思い出したんだ。

ずっと見てなかったスレを開いたら、「しゃむ」って鑑定士から、
俺あての伝言があったんだよ。「今すぐ、郷里の墓にいきなさい」って。
続けて仕事休むのも何だったんだが、このままじゃ死んじまうと思って翌日、
朝早くに発って郷里に戻った。両親ともずっと前に死んじまってて、2人が入ってる墓だ。
2年に1度くらい、盆に墓参りするくらいしかしてなかった。
先祖代々の墓じゃあねえんだよ。俺の両親だけ入ってる山の斜面の小さな墓。
親父とおふくろは駆け落ちだったから、親戚からどっちも縁切りされてたんだ。
死んでからも許されなくて、山の斜面のわずかな土地をもらって建てた。
下に車を停めて石段を登ってくと、囲いもなにもないのっぺりした墓石が見えてきた・・・
が、後ろのほうに何か黒いもんがあった。鳥だよ。カラスじゃない。
九官鳥ってやつじゃないかと思ったんだが、真っ黒い鳥。

それが逆さまになって吊るされてたんだ。墓石の上部に釘を打ち込み、
そっから釣糸で足を縛って頭を下にして吊るされた鳥。
でな、最初は生きてたんじゃないかと思うんだよ。
暴れたように羽根があたりに散ってたし、片方の足は折れてた。
クチバシも痛んでて、ちょうど頭の辺の墓石にひっかき傷がいくつもできてたんだ。
気味悪かったが釘から外すと、新鮮というか昨日今日に死んだような感じだった。
腐ってもいなかったってこと。それを車のトランクに入れ、近くのホームセンターに走った。
釘抜きを買うためだよ。そんで戻って、苦労して釘を抜いたが、
その部分の墓石がぼこっと欠けてしまった。でな、部屋に戻って10時を待った・・・
痛みはこなかったよ。それ以後、頭はなんともなしだ。掲示板のスレには、
「しゃむ」あてに礼を書き込んどいたが、音沙汰なしだったね。






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