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沼 2

2015.03.21 (Sat)
去年の5月の連休のときの話です。2人の友達と一緒に釣りに行ったんです。
3人とも中学校に入学して柔道部に入ったばっかりで、
先輩がたが他県に遠征に行くってことで、
1年生は連続して3日休みになったんですね。
その3日目、いいかげんゲームにも飽きて、外に遊びに出ようって話になって。
釣竿はオモチャ屋で数百円の雑魚しか釣れない竹竿と仕掛けを買いました。
餌は糸ミミズ。本当は子供だけで釣りに行くのはダメみたいだったんですけど、
誰も気にしませんでした。場所は、友達のうち椎名ってやつが、
小学生の頃、父親に連れられて学区の外れにある三日月沼に行って、
たくさんフナが釣れたことがあるから、そこにしようって。
昼過ぎ1時頃から、自転車になんとか竿を積んで、椎名の案内で出かけました。

新興住宅地の中の川沿いの道を40分ほど走りました。
その間、椎名は「おっかしいなあ」と言いながら、
ずっと河川敷のほうを探していましたが、その沼を見つけられなかったんです。
俺が「別にそこの川に下りて釣ったっていいじゃん」って言ったら、
「でもよ、そこの川、底までコンクリになってるから、魚がいそうもない。
 それにあの沼だとでかい魚が釣れるんだよ」あきらめきれない声で答えました。
そのうち住宅地が途切れて、ちょっとした丘に突きあたりました。
「ここ登って、上から探してみようぜ」 「けっこう高くね」
「柔道のトレーニングになるじゃん」ってことで、
石段の下に自転車を置いて上って行きました。
高さは50mくらいもあったでしょうか。

上は芝生になっていて、休屋とベンチがあるだけでした。反対側を見下ろすと、
林が広がっていて、その中を広い道路が通っていました。
で、その先に、大きく落ち窪んだ地形が見えました。
沼なんだろうと思いましたが、
かなりの深さで、下に水があるかはわかりませんでした。
「あれだろうな」 「距離は1kmもないんじゃないか」
「とりあえず、あの広い道路に出ようぜ」こんな会話をし、
下に降りて自転車に乗り、丘のふもとをぐるっと回っていきました。
そしたらやっぱり、反対側に幅広の道路があったんですが、
車がまったく通ってませんでした。「これ、工事中なんじゃないか」
「別に通行止めとかしてないから、いいんじゃねーの」

両側が松林の広い道路をスピードを出して走っていくと、
一度曲がっただけで道路が切られたように途切れ、
その先は高い鉄の柵になってました。あの鉄条網っていうんですか、
トゲのついた針金が巻かれた、2m以上もある鉄柵がずっと両側に続いてたんです。
どうやら丘の上から見た窪みをぐるっと取り巻いているようでした。
道路の正面部分には大きな錠のついた扉があり、
その上部に「雨水調整池」と書かれた白いボードがくくりつけられていました。
「これどういう意味だ?」 「洪水になりそうなときに川の水を流すんじゃないか」
「でも川から離れてるじゃん」 「ちょっと入れそうもないな。あきらめるか」
「横の道、上りになってるから、沼がどうなってるか見えるかも」
「ここまで来たんだし、行ってみるか」

途切れた道路の両横に、舗装されてない細い道があって、
上ってるほうへ行くと、鉄柵の中の窪みがのぞけそうでした。
かなり急で、3人とも変速つきの自転車だったんですがキツかったです。
息を切らしながら進んでいくと、
高くなるにつれて窪みがのぞけるようになってきました。
学校のグランドを4つ足したくらいに地面が大きくえぐれてて、
底のほうに水があるのがわかりました。で、その水が緑色をしてたんです。
蛍光グリーンっていうのかな。底のほうから光ってるような薄い緑色。
水がたまってる部分はグランド一面くらいの広さがありました。
「うえー、なんだよあの色」 「あれじゃあ魚なんていないよな。
 何かの廃液とかかな」水辺には工事の作業小屋みたいなのが建ってました。

「これ釣り無理だから戻ろうぜ。川の上流のほうへ行こう」
俺らが帰りかけたとき、小屋から人が10人以上出てきました。
遠くてよくわかりませんでしたが、同じ作業服を着てるように見えました。
その人たちは水辺にある機械に寄って行き、するとゴンゴンゴンという音とともに、
機械が動き始めました。沼の緑の水面がバチャバチャ跳ね始めました。
「何だろあれ」 「もう少し見ていこう」
ズズズズと水面が波打って、小屋のある岸に近づいてくるように見えたんです。
「あれ、網を引いてるんじゃないか」 「だな、中に何か入ってる」
水面から大きな魚のような影が跳び上がり、それはほとんど人くらいの大きさでした。
「スゲエ」 網が上がってくると、作業員たちは膝まで水に入って、
2人で一匹、頭が大きくしっぽが細い、ナマズのような魚をすくいあげ始めました。

ぬるぬるしてつかみにくそうでしたが、魚は水から出るとすぐにくたっとなって、
暴れたりはしなかったんです。魚は次々に小屋に運ばれていきました。
「ここ、養殖場かなんかなのかな」 見たこともない光景に夢中になっていると、
不意に後ろから「君たち、ここで何してるの」って声をかけられ、
ビクンとして振り向きました。警官が立ってて市原って友達の肩に手を置いてたんです。
「ここね、危険だから早く帰りなさい」警官はマスクをしていて、
そのせいかもしれないけど、金属をこするような声でした。
「はい、すみません」 「釣りにきて、いい場所さがしてたんです」
「釣りだって?」警官はそれを聞くと笑うような声を出しました。
そのとき、見間違いかもしれませんが、白いマスクの布が、
沼と同じ緑色に染まったように見えたんですよ。

自転車で坂を降りながら後ろを振り返ると、警官がずっとこっちを見ていました。
ポツ、ポツ雨が落ちてきて、だんだん激しくなり、
もう釣りどころじゃないと思いました。全速力で自転車をこいで住宅地まで戻り、
コンビニに入りました。店員さんがタオルを貸してくれました。
10分ほどそこにいると小降りになってきたので、
飲み物とか買ってお礼を言って出ました。雨はほとんど止んでましたが、
もう釣りをする気にはなりませんでした。
その途中で、市原が「あの沼の魚、あれオタマジャクシだった」って言い出したので、
「バカ言うな、あんなデカいオタマいるわけないだろ」
「でもよ、何匹か足があったと思った」 
「んなわけない、どんなカエルになるんだよ」こんな話をしました。

家のほうまで来ると、市原が「俺、寒気がする」って言って、
一人で帰って行ったので、そのまま解散になりました。
俺は家に戻って、まだ頭が濡れてたんでバスタオルで拭くと、
白いタオルが、うすーくですが緑色になったんです。
それから部屋のパソコンのグーグルアースで、さっきの沼の場所を調べたんですが、
広い道路までは見つかったんですが、その先の沼のあるはずのところが、
白く塗りつぶされてて見られなかったんです。
夕食のとき、家族に沼の話を出したんですが、だれも知ってませんでした。
夜になって携帯にメールがきたので、見てみると市原からでした。
「緑の小便が出た 俺、オタマジャクシになる」とだけあったので、
驚いて返信したんですが不通でした。家の電話からかけても、ずっと呼び出し中。

そのうち椎名から携帯に電話が来て、
話したら市原から俺と同じ内容のメールが届いたってことでした。
その日は夜中まで連絡をしようとしたんですが、つながらなかったんです。
翌日、部活に行くと、監督から市原が入院したということを聞かされました。
ずっと遠くの大きな市の病院で、見舞いに行くこともできませんでした。
ええ、はい、まだ入院中なんです。あれからずっと。
学校が始まってあの沼の話をしても、
誰も知ってるやつはいなかったです。先生がたも。
それで、夏休みにもう一度、椎名といっしょに行ってみたんです。
あの広い道路はありましたよ。でも、その先は埋め立てられてしまったのか、
赤土が盛られてブルドーザーが入ってました。

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コメント
緑色の大きな池って、何なんでしょうね。
とても不気味です。あと警官も怪しいです。
市原君、入院しちゃったんですね。
恐怖がじわじわと迫ってくるような気がしました。
さやか | 2015.03.22 16:30 | 編集
コメントありがとうございます
前の話『沼1』だと、どうやらそこはUFOが墜ちた
という噂のある場所のようです
bigbossman | 2015.03.23 00:30 | 編集
おはようございます。
昨日、私のところにコメントくださったのですね。
全然知らない人からだと思い、不気味な感じがしたので、あなたのコメントを削除してしまいました。
ごめんなさい。申し訳ないです。
さやか | 2015.03.23 10:02 | 編集
メールも送ったんですがパソコン替えたばかりなので
届かなかったかもしれません
申し訳ないんですが、ブロ友、相互リンク、twitter
はやってないんです m(,_,)m
bigbossman | 2015.03.23 15:31 | 編集
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