生き残るオカルト

2015.04.01 (Wed)
今日はエイプリルフールなので、それにやや関係のある話をします。
自分はUMA(未確認生物)フアンでもありますので、その方面です。
「サン・ディジェの翼竜」という名前を聞いたことがありますでしょうか。
サン・ディジェはフランス、パリ郊外の地名ですが、
1856年、ここで地下トンネル工事をしていたところ、
岩を砕いた際に、中からなんと翼竜が出てきたというのです。

これはそう大きなものではなく、ガチョウ程度だったようですが、
翼竜がはさまれていた岩にはぴったり翼竜の体の大きさのくぼみがあり、
そこに密閉されていたようでした。
これが化石であればわかりますが、出てきた翼竜は生きており、
しかし翼をふるわせて一声鳴くと、その場で死んでしまったのだそうです。

「イラストレーテッド・ロンドン・ニューズ」誌の挿絵


その翼は蝙蝠類のような皮膜で、クチバシの中には歯が並び、
鋭いかぎ爪があるという、当時想像された典型的な翼竜の形をしていました。
その翼竜の死体は近くの市に運ばれ、そこで行方不明になってしまいました。
(ちなみに、決定的な証拠品がいつのまにか消息不明になるというのは、
UMA界では定番中の定番です。中にはメン・イン・ブラックを思わせる、
政府機関を名乗る役人が現れて押収し、さらに口止めをしていった、
という場合もあります。)

まあ、心霊オカルトも同じようなもので、心霊写真が出てくる話で、
写真はどうなった?と聞くと、霊能者に勧められて削除してしまったとか、
お寺に持って行ってお焚きあげしてしまったと答えられるのが多いのと
構造は同一のようです。

これはさすがに信じられる話ではないですよね。
翼竜が生息していた時期は中生代であり、
最短でも6600万年前と言われています。
もしその時期に何かの理由で岩に閉じ込められ密封されてしまったとしても、
19世紀まで仮死状態でいるということはありえないでしょう。
氷漬け、あるいは琥珀のような樹液に閉じ込められていたのなら、
原形が残っている可能性もあるのかもしれませんが。

この話は同年の「イラストレーテッド・ロンドン・ニューズ」誌の、
2月9日付けの新聞記事ということになっています。
記事ではこの生物を、ラテン語学名風に、
「プテロダクティルス・アナス」という名前で紹介していますが、
「アナス」のほうには「愚か者、騙されたやつ」のような意味があり、
エイプリルフールではないにしても、
わかる人にはわかる形で書かれた冗談記事のようなもので、
当時このような形の記事は珍しいものではなかったようです。

さて、1856年といえば日本は江戸時代最末期、
黒船が来航して世情が騒がしい時期でした。
ほどなくして明治時代となり、瓦版のかわりに新聞が発行されましたが、
当時の新聞を見れば、狐狸などや妖怪、幽霊や鬼の目撃談などが
ごく普通に挿絵つきで掲載されており、
報道姿勢とかニュース倫理などという概念も発達していない時期でありました。
(下の画像は「報知新聞」で葬儀の場に友人の幽霊が現れたとするもの)

今でこそ新聞で報道されたとなれば、一定の信憑性があるように感じられますが、
はっきりいって当時は興味を引くものならなんでもありでした。
オカルトにおいても、『リング』の元ネタ説がある有名な「千里眼事件」
(念写事件)を、大学教授やマスコミが取り上げているなど、
まだ頭から疑ってかかられるという状況ではなかったのです。

1870年代報知新聞の幽霊記事


ですから、そういう古い時代に世間で評判になった、
あるいは新聞や雑誌に取り上げられた事象はたくさんあります。
では、その中で現代にも生き残って語られる話とはどういうものなのでしょうか。
これは様々なパターンがあるのですが、
一つにはその話を利用したいという勢力がいる場合です。
「サン・ディジェの翼竜」であれば、これを使って自分らの説を広めたい。
どういう勢力かというと、翼竜を含む恐竜などは、
実は人類と同時期に生存していたと説く人々です。

この人たちは、旧約聖書の『創世記』の、神は6日間かけて世界を創造したという話
「創造論」を実際にあったことと考えています。
アメリカでは州によってダーウィンの進化論への態度はまちまちであり、
進化論を教えるならば同じ時間だけ創造論も教えるべきである、
という論議まで起きています。
(進化論を信じていると答えた米国人は40%、
44~47%の人が創造説を支持しているという統計もあります)

創造論博物館というのがケンタッキー州にあり、
ここでは人類と恐竜が共存するジオラマなどが展示されているようです。
神がすべての生物を一どきに創造し、恐竜と人間は(カンブリア生物なども)
共存していたが、恐竜が先に絶滅した。
地質学やC14での化石年代などは信じるに足りない、
というのが彼らの主張なのです。

「インテリジェント・デザイン論」というものもあります。
これは内容はほぼ創造論そのものなのですが、
公教育で特定宗教の神を出すことへの配慮から、創造主の名をぼかしつつも、
知性ある存在による地球生命のデザインを示唆しているわけです。

さて、上記した「サン・ディジェの翼竜」の話は、
日本ではサイエンスエンターテイナーを自称する、
飛鳥昭雄氏の著書で取り上げられていますが、
氏は創造論の立場をとる「末日聖徒イエス・キリスト教会(モルモン教)」の信者であり、
著書では教義を反映した内容が述べられているとの指摘があります。この他にも、
恐竜と人類の足跡が同時期につけられている遺物などの話もあったと思います。

心霊オカルトでもそうです。
欧米の心霊主義時代には、たくさんの霊媒師が現れて交霊会を行いましたが、
それらの事例が一部のスピリチュアル団体では、
心霊主義の歴史の一コマとして取り上げられている場合もあります。
この心霊主義の時代というのはまさに、
上で紹介した報知新聞の幽霊記事の時期と重なります。
当時の時代背景を考えれば、簡単に鵜呑みしてしまうことは危険だと思われますね。

アリゾナのサンダーバード









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