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やじろべえ

2015.04.13 (Mon)
つい昨日あったことです。私はウエブデザインの会社に勤めていますが、
残業したんです。そんなに遅くなるつもりはありませんでした。
うちの会社は定時で帰る人がほとんどなんです。
だって仕事が残っていたとしても、家のパソコンからいつでもできるんです。
終わったのは8時過ぎころです。
オフィス内には私の他に誰もいませんでしたけど、
怖いとは思いませんでした。だって、ビル内の他の会社には、
まだまだたくさん人が残ってますし、入り口には終夜勤務の警備員さんがいますから。
バッグを持ちコートを着て、室内灯を消そうとしたところで、電話が鳴りました。
「はい、○○です」と受話器を取ったところ、
「窓の下を見なさい」一言だけ言って切れてしまったんです。

「ん?」と思いました。オフィスの窓は一方向にしかなく、
取った電話は入り口に近いほうだったので窓の外は見えません。
そうですね、今から考えると声は女だったような気がします。
女の人がわざと低いしわがれ声を出して、性別をわからなくしてる感じです。
ええ、番号表示機能はついてます。これも後で確かめたところ、
なんとオフィスのあるビルの一階にある公衆電話からだったんです。
早く帰りたかったのですが、窓に近づいて外を見ました。
そちら側には3階分ほど低い隣のビルがあって、そこの屋上がみえます。
私のオフィスが10階で、そのビルは8階建てなんです。
見下ろして「え!」と思いました。下に見えるビルの屋上のフェンス上に人がいたんです。
転落防止用の鉄製のフェンスです。幅は5cmもない・・・

上から見下ろした形だったんですが、すぐ女の人だってわかりました。
長い髪の毛の頭頂部と、裾の広がったこーとが見えたんです。
距離はけっこう離れてましたが、そのコートの色は私のものと同じでした。
髪型もよく似ていると思ったんですが・・・
それよりも、「警察に連絡しなくちゃ」と考えました。
その女の人は両手を大きく広げてバランスをとってましたが、
ぐらぐらして今にも落ちそうだったんです。
「まず、下の警備員室に連絡しよう」そう考えて、手近な電話まで行きました。
手を伸ばしたとき、コールが鳴ったんです。
反射的にとりました。すると、さっきのとたぶん同じ声で、
「やじろべえ」と言われたんです。

そのとたん、視界がぐにゃっとゆがむ感じがしました。
顔に小雨まじりの風が吹きつけてきて・・・
下に車のヘッドライトが連なる道路が小さく見えました。
どういうことかわかりますか? 私が隣のビルの屋上フェンスの上に立ってたんです。
ぐらぐらと体が左右に傾き、「ああ、落ちる」と思ったとき、
また電話が鳴ったんです。
私はビル内のさっきの受話器の下にしゃがみ込んでいました。
出ると、「怖かった? 今日の分はこれで終わり、だけどまだまだ続くよ」
そう言って切れてしまったんです。
窓の外、隣のビルの屋上フェンスにはもう人の姿はありませんでした。
どうしようか迷いましたが、警備員室に連絡をして見たことを話しました。

「いや、人が落ちたなんてことはないと思うよ。
 ・・・隣のビルにも連絡はしますけど・・・
 ただ、屋上に人が出てるとはただごとじゃないですよ。今はいないんでしょう?」
困惑した声が返ってきました。そう言われると、自分でも自信がなくなってきました。
3回電話がかかってきたことは確かに記録されてるんですが、
フェンス上に自分に似た女の人がいたこと、
その人と一瞬入れ替わったように感じたこと、これが実際にあったことなのか、
よくわからなくなったんです。照明を消し、施錠してオフィスを出、
エレベーターで降りて警備員室に顔を出しました。
「今、連絡をとって隣の屋上をいちおう調べてもらってるところだよ。
 結果は明日報告しますけど、気をつけて帰ってくださいね」

外は霧のような雨が降ってましたが、
傘を開かなくてもほとんど濡れることはなかったです。風は強くはありませんでした。
駅までは、歩いて5分ほどしかかかりません。
さっきからのことを考えながら歩いていると、「ああ、ちょっと」と呼び止められました。
見ると、薬局のアーケードの下の易者さんでした。
この人とは顔見知りで、前にも何度か見てもらったことがあります。
本業はその薬局の主人なんですよ。易学を趣味としていて、
それが高じて、夜に店を閉めた後に易者をやってるんです。
そんなだから、見料もものすごく安いんです。
「はい?」「いまさっき、何かあったでしょう」
「わかりますか」 「ええ、すごくよくない感じがします」

それで立ち止まって話を聞いてもらったんです。
易者さんは、私の言ったことを聞いて「うーん」と下を向いて考え込んでいましたが、
「ちょっと、背中見せてもらっていいですか」こう言いました。
「さっきね、声をかけさせてもらったのは、
 あなたの背中にすごくよくない気がくっついている感じがしたもので。
 これは占いとは違うんですけど」私がコートの背中を向けると、
「何もないですよね・・・でも・・・」そう言って後ろからコートの襟を立てました。
「あっ! これです。見つけました」
易者さんのほうに向き直ると、指先に白い紙片のようなものをくっつけていました。
「これ、やじろべえに見えますよね」
確かに、紙を3cmくらいに切って作った、両手を広げてる形の人・・・

「襟の中に入ってましたよ。ご自分で入れたわけじゃないんでしょう」
「はい、もちろん」「コートはどこに置いていましたか」
「オフィス内の女子更衣室です」 「そこは女の人は誰でも入れる?」
「それはそうです。ロッカーも鍵はかけてませんでしたし」
「うーん、こんなこと言っちゃあれだけど、これは呪いだと思いますよ。
 誰かがあなたを恨んでやっていることじゃないかな。心あたりありますか?
 わたしにはどうにもできないけど、そういうことに対処できる人を知ってます」
そう言って、名刺を渡してよこしたんです。
それには、霊能者?らしい名前と、連絡先が書かれてありました。
「あと、この紙片はわたしにあずからせてください。少し調べてみます。
 何かわかることがあるかもしれない。明日の晩もここで店を出してますから。

「それからですね、身の回りのものはロッカーなどに入れないほうがいいです。
 明日は出社したら、何もかも自分の机の下にでも」
そんなことがあって、今朝は言われたとおりに更衣室を使わなかったんです。
窓の外を確認すると、昨夜のフェンスの横に白いものがはりついているように見えました。
それは私のコートの襟の下から出てきたのよりだいぶ大きいんですが、
同じ形をしていると思いました。そのとき、
フェンス上に立っていた感触がよみがえってきて、ゾーッと怖くなったんです。
今日は特におかしなことはなく定時で退社しました。
薬局の前を通ったら、シャッターが閉まり、易者さんは出ていませんでした。
昨夜はああ言ってたのに。どうすればいいんでしょうか?
この名刺の人に連絡をとったほうがいいですか?

Yukiko lethal dive 2



 
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コメント
 名刺の人に連絡をしたほうがいいと思います・・・が、語り手さん以上に易者さんの安否が気にかかる私。
 こういうお助けキャラに害が及ぶ展開は、「反則技」だと個人的には思います。「耳なし芳一」の和尚さんや、寺生まれのTさんや、コブラ(?)が返り討ちに遭うようなものなので・・・しかし、同時に好きな手法でもありますw
| 2015.04.14 21:50 | 編集
コメントありがとうございます
易者さんは単に休んだだけだといいんですけど
「パラノーマル・アクティビティ」という映画で
悪魔関係の専門家を紹介されていながら
登場人物がいつまでも連絡しないで
観客をいらいらさせるという手法がありましたね

bigbossman | 2015.04.14 22:51 | 編集
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