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緑の土の話(上)

2015.04.14 (Tue)
小学校6年生のときのこと。もうずいぶんな昔になる。
ゲーム機もマンガもあったけど、虫捕りとか、外で遊ぶのが好きでね。
でね、その日も工場地帯にある小川で魚をすくってたんだ。
魚って言っても、タナゴとかドジョウ、ヤゴ類しかいなかったけども。
確か同学年の仲間3人とで、春から夏にかけての休みの日だったと記憶してる。
1時間ほども遊んでただろうか。
新田ってやつ、これはそんとき一緒にいたわけじゃないけど、同学年の。
そいつが土手を走ってきて、私らの姿を見ると「大発見した」って叫んだんだよ。
いいかげん飽きてきたところだったので、
何か面白いことだろうと思って上がっていった。そしたら、
ものすごく興奮した口調で、「死んだ虫が生き返る土を発見した」って言うんだ。

そいつの後についていったのが、工場のすぐ裏手の斜面だった。
ときたまブルが入って土を削ってるところで、
俺らは危険だというので立ち入りを禁じられてた。
鉄の柵があったが越えることができた。何の工場だったのかねえ。
今はないんだよ。この話の出来事から3年くらいして閉鎖されたはずだ。
あとで家族にも聞いたんだが、化学薬品関係としかわからなかったね。
新田は、「その斜面の下に積み上げられてる丸木にコクワガタがいた。
 それを捕ってたが木の皮をはがせばいくらでも出てきて、
 すぐプラケースいっぱいになった。メスを捨てることにして、
 斜面の土から出てる岩に思いっきり叩きつけた。
 そしたら、頭が割れたり中身の白いのがはみ出たりし転がり落ちてくる。

 それが下の幅1mほどの堰に落ちて浮かぶ。
 そのまま死んでしまうやつがほとんどだったが、堰から這い上がってきて、
 斜面の一番下の緑っぽい色をした地層?まで来たやつは、
 急に元気になって、どんなに壊れてるやつも羽根を開いて飛んでいくんだ」
こんな話をしたんだ。「えーでもよ、それは生き返るっていうか、
 その土に薬品かなんかが浸み込んでて、
 それで一時元気がよくなったように見えるんじゃないか。
 アンモニアつけられたような感じで」こう言い返したら、
「ほら」という感じで新田があごをしゃくった。
・・・その方向の斜面上に、頭が完全になくなったクワガタがいて、
それなのに動いてたんだ。

「それ、俺がわざと頭を石ですりつぶしたやつだ。生きてるはずないよな。
 人間でいえば脳がないんだから。だけどどうだ」
それはマジで胴体だけだったが、なくなった頭を振り立てるようにして、
獅子舞みたいに激しく動いてたんだ。
「頭をなくしてから、その緑の土に一回埋めて掘り出したんだよ」
不意に頭のないクワガタが飛び立った。
それは俺らの立っている中を飛び回り、あわててしゃがんで避けたよ。
だって気味悪いだろう。そいつは狂ったように何度も旋回すると、
どっかに飛んでってしまった。
「うーん確かになあ、生き返ったかどうかはともかく、
 そこの土は何かの力を持ってるのかもしれねえな。変な色だし」

土は今から考えれば地層で、幅20cmほどでずっと横に伸びてたんだ。
色は暗い感じの緑で、少し光ってる気もした。
近寄って指をさしこんでみたやつが、「これヤベえよ、ピリピリする」
って叫んだんだ。それで俺が、「さわんな。ただの土じゃなく、
 工場から漏れた廃液が浸み込んでるのかもしんねえ」そう言い、
「その指、堰の水で洗え、ぜったい舐めたりするなよ」とつけ加えた。
そいつは堰の縁にかがみこんで指を洗いながら、
「なあ、俺らが捕った魚も生き返るだろうか。・・・試してみないか」
って言ったんだよ。それを聞いて、その場にいたやつはみなスゲエと思った。
わくわくする実験だって感じたんだよ。
だって魚って水の中の生き物だろ。

それがいったん弱ったり死んだりしたのが、
その土をつけたら空気中で元気になったりしたら、大発見じゃね。
「試してみようぜ」ってことになり、持ってたバケツの中から、
いちばん大きいタナゴを選び出した。
水がぬるんでもう弱ってる感じだったが、下の土に浅く埋め、
その頭の部分をズックの踵で踏んづけた。
・・・残酷だと思うかもしれねえが、当時の子どもってそんなもんだったよ。
それを5分も放置してから掘り出したら、もうぴくりとも動かない。
頭はつぶれて、完全に死んでるようにしか見えなかった。
俺がその胴のほうを持って、頭を先にして緑の土の部分に入れようとした。
ところがけっこうな硬さがあって埋まっていかない。

落ちてた木の枝を拾って掘り返し、魚を入れて土をかけた。
そしたら、はみ出てた尾がビンと強く動いたんだよ。みなが「!」と思ったとき、
上のほうから「こらお前ら、何やってる!」という大人の怒声がした。
見上げると、ヘルメットと作業着の大人が2人立ってて、俺らを見ながら、
「おい、学校に言いつけるぞ。ここは工場の敷地だし、
 もし土が崩れてなんかあったりしたら、こっちの責任になるんだ。
 出ていけ。早く!」こう言われるとどうもならない。自分らが悪いんだし、
その場で怒られるんならまだしも、学校に言われると親を呼ばれてしまうからな。
それでしかたなく帰ったんだよ。俺らの背中で、「2度と来ちゃダメだぞ!」
って声がしてた。で、2年ほどそこへは行かなかったんだよ。
ちょっと休憩、少し休んだら続き話すから。

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