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町興し

2015.04.18 (Sat)
私が住んでるのは○○町という田舎の町です。周囲の市町村と仲がよくなくて、
平成の町村大合併のときにぽつんと取り残されました。
もちろんひどい過疎なんですが、町長さんが新しくなって、
町興しを始めました。それが、テーマはUFOなんです。
古洲模山といって、山地の町側に500mたらずの山があります。
そこは登山路が整備されてて、上のほうが芝生の広場になってるんです。
そこでは昔から、UFOの目撃事例があったんです。
UFOという言葉も当然なかった、江戸時代からですね。
古い地誌に挿絵とともに、不可思議な物体がこの山の上を飛んでいくのを見た、
という話が載ってます。それで「UFOの里○○」
というキャンペーンを立ち上げたんです。

ええ、バカバカしいと思われるでしょう。そんなので観光収入が増えるとか、
工場誘致ができるなんて考えられないですし、過疎がとまるはずもない・・・
まあ、多くの町民がそう考えていたんですが、
それでも何もしないよりはマシだろうというくらいの話です。
具体的にやったことといえば、まずゆるキャラをつくりました。
「いぞうくん」という宇宙人を模したキャラクターです。
「いぞう」というのは古誌に出てくる、この地方特有の妖怪なんです。
これがアメリカ発の、グレイという宇宙人にどことなく似てるんです。
さすがに「グレイくん」というわけにはいきませんから。
それと地元で作っている清酒を「宇宙人」
という名前で出してもらうことになりました。

役場の観光振興課に「いぞうプロジェクト」というのができたんです。
そこに私がおつき合いしているN君という人が配属されまして、
なんと「いそうくん」の中の人をやることになったんです。
ええ、着ぐるみを身につけてアクションする係です。
N君は高校時代陸上競技をやってて、そのあたりが選ばれた理由だったようです。
この話を彼から聞かされたときは、ちょっと複雑でした。
というのは「いぞうくん」の姿形がかなり気味の悪いものだったからです。
全身が銀色で背丈は2m近くあります。
頭はハリボテで、N君はそれを自分の頭に乗せ、
着ぐるみの首にあいた穴から外を見るようになってるんです。でもN君は、
「このキャラをふなっしーに負けないくらい盛り上げるぞ」と、はりきってました。

着ぐるみを着たまま側転なども練習してて、ケガをしなければいいなと思いました。
3月の終わりころです。「いぞうくん」が出る初めてのイベントがあったんです。
古洲模山の花の見ごろに合わせて行われるのど自慢大会に、
「いぞうくん」も出演するんです。彼に誘われて見に行きました。
そうですね、のど自慢大会の出演者はみな地元の人でしたし、
「いぞうくん」が最初に出てバク転をしたときには少しだけ盛り上がったんですが、
全体としてウケているという感じはありませんでした。
酔っぱらった人から「かっこ悪いぞ」とか「キモイ」などという声が出ていました。
イベントは1時から始まって4時過ぎに終わったんです。
それから後片づけと御苦労さん会をやり、N君は町のバスで来ていたので、
私の車で家まで送ることになりました。

山頂広場を出たのが9時少し前くらいでした。後部座席に、
「いぞうくん」の着ぐるみや、イベントで使った延長コードなどを積んでました。
N君が「あした休みだから、もう一つ奥の山に行って夜景を見ないか」
って言い出したんです。奥の山は古洲模山より300mほど高く、
電波塔があるので、砂利道が続いているのは知っていました。
地元の小学校の遠足で行ったこともあります。
私の車はコンパクトカーでしたのでちょっと不安でしたが、
賛成して山の裏手の道に入りました。
そこの道は両側が林で、街灯もなく真っ暗でした。
大きな石でもあって車の底をぶつけたりしないかと気が気でなく、
慎重に運転していました。

そしたら、もう少しで林を抜け山の稜線に出るというところで、
急にエンストしてしまったんです。私の車はATだし、そんなことは初めてでした。
何度キーを入れても、キュルルルと音がするだけです。
「バッテリーあがりみたいだけど、走ってる最中にそんなことあるわけないし。
 ちょっと運転代わるか」 「えーでも、お酒飲んだでしょう」
「別に走るわけじゃないし」でも、N君がやってもエンジンはかからなかったんです。
「これちょっとダメだな。発電機とかかなあ」N君はそう言って、
社外に出ました。私も出ようとしたら、
「寒いから中にいろよ。それとカード出して、JAFに連絡できるよう準備してて」
ボンネットが上がって、N君は懐中電灯で照らしながら中を見ていましたが、
「ダメ、全然わからないや」こう窓の外から声をかけてきました。

いよいよJAFに連絡するしかないか、こんな山の中で何してたんだと思われると、
ちょっと恥ずかしい、そう考えながら携帯を出したときです。
横の林の中がぼうっと緑に光ったんです。
すごく人工的な感じのする光でした。N君も気がついたみたいで、
ボンネットを閉めてそっちを見ました。
そしたら、林の中から緑に光る人型のものが出てきたんです。
体の表面はつるつるしていて、目は大きく、瞳がありませんでした。
全体が黒目のようなアーモンド形の瞳・・・
そうです。それは「いぞうくん」の着ぐるみによく似ていたんです。
でも、着ぐるみではないことはわかりました。
生物と言っていいかわかりませんが、生きて動いているものでした。

ただ「いぞうくん」と決定的に違うのは、頭の人間なら耳がある部分に、
アンテナのような奇妙な形のツノが生えていたんです。
「うわわ、何だよこいつ」N君はそう叫んで、それの来たほうと反対のドアを開け、
私の手をつかんで車外に引っぱりだしました。
それは、私たちが逃げ出すのには全く関心を払う様子はありませんでした。
30mほど走って逃げ、そこでいったん立ち止まって様子を覗いました。
それは車のドアに両手をあて、そしたら車がやわらかいものでもあるかのように、
ずぶずぶ手が中に沈んでいったんです。
そして「いぞうくん」の着ぐるみを引っぱりだしました。
それは吊り下げるようにして着ぐるみを広げ、上から下までながめているようでしたが、
地面に落とし、首を振ってから出てきた林へと戻って行ったんです。

林の中を緑の光が遠ざかっていくのがわかりました。
「・・・もう行ったんじゃないか」N君がそう言って、
ふるえている私を車まで引っぱっていき、乗り込んだら、
何事もなかったかのようにエンジンがかかったんです。
それから一目散に民家のあるところまで車を飛ばしました。
まあこんな話なんです。ええ、もちろん警察に話しました。
捜索があったみたいですが、何も発見できなかったそうです。
・・・「いぞうくん」は、N君の提案で全身銀色だったのを緑に変え、
頭の両側にツノをつけることになったんです。
そうしたからといって人気が出る様子はないんですが、
なんとなくしっくりしたというか、実際にいるもののような感じにはなりましたよ。





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コメント
 南国土佐なら人斬り以蔵ですが、宇宙人ですか。
 きっと宇宙船が故障して遭難してしまったのではないかと。仲間が恋しくて出てき来てみたはいいけれど、違ってガッカリしているように思いました。思えば可哀そうな宇宙人。見知らぬ辺鄙な惑星で帰る当てもなく仲間が迎えに来てくれるのを江戸時代から命を繋ぎながらただひたすらに待っている。悲しすぎる。あうあう。
miss.key | 2015.04.19 11:13 | 編集
コメントありがとうございます
これもいまいちよくわからない(自分で書いたんですが)話ですが
自分の星に帰れなくなった宇宙人が山の中に潜んでいる感じですね
太古に墜落した宇宙船の残骸が埋もれている・・・
なんて話は自分はすごくロマンを感じます
bigbossman | 2015.04.20 02:15 | 編集
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