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つけこまれる

2015.04.20 (Mon)
去年の話だ、クリスマス直前。そのとき俺は専門学校の仲間といっしょに、
パン工場でケーキ造りのバイトしてたんだよ。
ベルトコンベアのラインに乗ってくるケーキに、サンタ人形とかのせてく仕事。
これがなんつーか、頭はヒマなんだけど、
ずっと手は動かし続けなくちゃならないんで、精神的に疲れるんだよ。
それを3日間やったら、イライラが最高潮に達してね。
他のやつらもそうだったと思うよ。そんな中で起きたことなんだ。
ケーキ自体は徹夜で造られ続けるんだけど、3日目のバイトが終わったのが、
シフトの関係で午後の9時過ぎ。工場は郊外にあって、
車で来たやつに2人同乗して街に戻ってったんだが、
途中ファミレスに寄って何か食ってこうってことになった。

バイト料は日払いで金は持ってたし。
で、仲間内にSっていう心霊系の話が好きなやつがいて、
こういうファミレスとかに来たときはきまってイタズラをする。
ほら、よく幽霊話で、3人で店に入ったのになぜか水のコップを出された、
ってのがあるだろ。あの逆をやろうとしたわけ。
どういうことかわかるかな。つまり、俺ら3人が4人掛けのテーブルに座って、
店員が水を3人分持ってきたら、「え、一人分足りないですよ。こいつの分」
とかって空のイスを指さすとかするんだよ。
悪趣味だろ。でもよ、深夜とかに入れば、
ヒマな店員に、面白い冗談だって喜ばれることもあるんだよ。
まあ軽いイタズラ以上の意図はなかったんだよ。

そこのファミレスは古いタイプだし、場所が郊外なのと、
夕食の時間を過ぎてたことでほとんど人がいなかった。
俺らは入ってって、外が見える窓の近くの奥に座った。
で、わざわざ空いてる席のイスもさげておいたんだ。
やがて店員がやってきて、見るからにバイトという女の子だった。
3人分のコップを置いて、事務的に、「注文がお決まりになりましたら、
 呼び鈴を押してください」そう言って立ち去りかけたときに、
Sが「あのー、水一個足りなんですけど。こいつのやつ」
いつもの調子でそう言った。ふり向いた女の子はけげんそうな顔をしてたけど、
「あっ、失礼しました。ただいまお持ちします」
あわててカウンターのほうに戻っていった。

「・・・あんまウケなかったな」
「真面目な子なんだろうな。水持ってくると思うか?」
「持ってくるんじゃね。水なんてただだし、
 いうこと聞いてりゃトラブルになんないから」
「反応がいまいちツマンなかったよな。あんまり怪談とか読まない子じゃね」
「もし水持ってきたら、どうする? こいつの分も注文するか?」
「まさか」こんな会話をしてたら、さっきの子がトレイに水一人分と、
それからなぜか小さいテイッシュの箱をのせて持ってきた。
して、空の席にコップを置くと、「どうぞお使い下さい」
そう言ってテイッシュの箱もいっしょにのせたんだ。俺らがきょとんとして、
「それ何?」って聞いたら、「こちらのお客様、泥だらけですし、

 お顔に血がついて・・・テイッシュが必要かと・・・」
こう言ったんだよ。まさかね、こう切り返されるとは思わなかったから、
俺らはかなりウケた。「いやー、こいつが見えるのか。実はこいつ3か月前に、
 バイクで田んぼに落ちて死んでるんだよ。
 だけどいくら言い聞かせてもそれがわかんないみたいで、
 いつもこうやって俺らの後をついてくるんだよ」
「あんたすげえよ、霊能者でも見えないって人もいたのに」
俺らの声が高くなったんで、店員の子は唇に指をあてて「しーっ」というポーズをし、
「私、幽霊の本けっこう読むんです。これって面白いアイデアですよね。
 でも、あんまりそういうことをすると、
 霊を呼び寄せてしまうって聞いたことがあります。つけこまれるっていうか」

「えー信じてるの? 幽霊なんていないよ」
「私はいると思います。霊はほとんどの人には見えないので、
 自分に関心を持ってくれる人につきまとうって言いますよ。
 特に心が空白になってるときが危ないって話です」
「ふーん」こんな話になって、それから俺らは各自注文して、
1時間くらいそのファミレスで過ごしてから帰ったんだよ。
翌日はクリスマスイブの前日で、これでバイトも終わりの4日目、
いよいよ追い込みで、シフトは夜9時から朝の6時まで。
これは眠気との戦いになる。4時間仕事して休憩をはさんでまた4時間って形。
Sが少し遅れてやってきて、なんだか調子が悪そうだったんだ。
「お前、顔色悪いんじゃないか」

「昨夜から肩がずーんと重い感じがしてほとんど寝てないんだ」
「ヘマすんなよ。買い取りになるぞ」
この買い取りというのは、流れ作業の途中でミスって、
ケーキを下に落としたりした場合は、
その分をバイト料から引かれるってこと。
原価だから安いけど、それでも時給の半分はいっちゃうね。
いちおう仲間内でSのことを気づかって、一番楽な作業に回した。
ウエハースの家をのせるのが楽なんだよ。ただ置くだけだから。
Sはうつらうつらしながらも、前半の作業はなんとかこなしたが、
休憩時間に工場の食堂で紙コップのコーヒーを飲んでる時に、
「作業中に、誰か俺の背中引っぱってるやつがいるだろ」って言い出したんだ。

「んなはずねえだろ。隣のラインとの間に棚があるし、ケーキが次々くるから、
 場所の移動なんてだきないだろう」
「うーん、そうだよな。そうなんだけど・・・」
でね、仕事の後半、あと残り2時間ってあたりだったな。
そのくらいのときが一番つらいんだよ。
とにかく意識を殺して、頭を空っぽにして耐えるだけ・・・
あっ、これってファミレスの子が言ってた「心が空白」ってことなんかな。
本職が生クリームを盛ったケーキが次々に流れてきて、目の前は白一色。
隣で仕事してたSが目をつむりだしたんで、俺が注意しようとしたとき、
「何だよ、やめろよさっきから。引っぱるな!」
そう叫んで体をねじり、後ろにひじ打ちをするような動作をしたんだ。

「おい! 誰もいないぞ」俺がそう言ったとき、
確かに見たんだよ。コンベアのSの目の前にあったケーキがぼこっとへこむのを。
それも5本の指を広げた手の形に。
その直後、Sが昏倒してそのへこんだケーキに顔をつっこんだ。
だから手型のついたケーキは残ってないんだよ。これはちょっと残念。
霊のいる証拠になったのになあ。それはともかく、
顔をクリームまみれにして床に倒れたいSの意識は回復せず、
救急車を呼ぶ騒ぎになったんだよ。病院では、単純作業の繰り返しによる催眠状態、
それと疲労って診断だったんだが、あれ以来ずっと入院が続いてる。
それも精神科のほうに転院して。・・・まあ、こんな話。
つけこまれるってのは確かにあるみたいだ。注意したほうがいいよ。

これ全部ケーキです ハロウィンケーキは日本では流行らないんじゃないかな










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コメント
付け込まれるのも怖いんですが。
ハロウィンケーキがインパクトありすぎでした。
アメリカ人の感覚分からん(^_^;)
椿 | 2015.04.21 17:19 | 編集
コメントありがとうございます
さすがにこれは食べるのに躊躇しますね
趣味が悪いです
bigbossman | 2015.04.22 23:07 | 編集
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